第3章 3月(1)
「星杜学園1年 波原小春 168㎝ 60㎏。 けっこう大食い!」の続編なので、当小説内で直接的にはわからない人物関係・背景・エピソードも出てきますが、ご容赦下さい。
ホワイトデーには、小春の身に何が起こるのでしょうか?
果たして、友哉と桐生の思いの行方は?
いよいよラストも近付いてきました~。最後までお楽しみ下さい^^。
新学期が始まってからの時間の流れはとても早かった。学年末考査があったり、予餞会があったり(予餞会では、完成した映画が披露されたが、その話しは今回は触れない。どこかで触れる機会があるかもしれないけれど)、卒業式があったり、学園全体が気忙しくて落ち着かない日々が過ぎてゆく。
映画撮影にずっと関わってきていた元生徒会長の早見坂も無事に卒業し、ただ藍原さんは少し寂しそうにも見えるけれど、人生には出会いと別れはつきもので。
お昼休みに教室を抜けて図書室で密かにタティングレースなるものに励んでいた友哉は、チョコ王子に選出されたせいなのか、私にバレたせいなのかはハッキリしないけれど、再び教室で3人一緒にお昼休みを過ごすようになり、お弁当を食べ終わった後は人目もはばからずにタティングレースに取り組んでいる。
しかも桐生なんて何を考えているんだか、『小春』『小春』とこれみよがしに私の名前を呼んでは絡んでくるもんだから、私はさらに余計な圧力を女子生徒から受けることになり、迷惑だったらありゃしない。
(映画の設定上では仕方なく絡んでいたけどさ……)
いろんな意味で、毎日が本当に疲れることの連続だった。ようやくクラスに白い制服姿の2人が存在することに慣れてきた頃、気が付けばホワイトデーも迫っている。ホワイトデーが近付いてくるに従い、女子生徒たちのソワソワ感が増しているように感じるのは、思い過ごしなんだろうか。
そして、いよいよホワイトデー当日がやってくる。朝から学園内の熱気が上昇している。――特に女子生徒たち。
けれど、クッキー投票などがあったわけでもなく、とくにホワイトデーに向けて何かがあったという事もない。でもホワイトデーは、チョコをくれた女子に対して、貰った男子がクッキーのお返しをする日なわけで、クッキー投票なんておかしな事を考えてしまうのは、私くらいかもしれないが。
朝。何やら友哉もとても緊張していた。めずらしく普段は冷静沈着な桐生も、気持ちが少し上ずっているように感じられる。そして友哉と桐生の間には、とてつもない壁ができていた。
「ねぇ、麻莉子……、友哉と桐生、どう思う? 何か様子が変じゃない?」
私は、こっそり麻莉子に耳打ちする。
「う~ん、でもこればっかりはぁ~、しょうがないんじゃないかなぁ~」
麻莉子が何かを知っているのは、間違いないだろう。
「しょうがないって?」
残念ながら私にはピンとこない。
「でもぉ、どうせ今日で決着がつくことだしぃ~」
「決着?」
麻莉子の瞳がいたずらっぽく輝いている。
「小春ちゃんさぁ~、あんまり興味なさそうだったしぃ、麻莉子もあえて小春ちゃんには教えなかったんだけどぉ」
麻莉子の意味ありげな発言に、瞬間嫌な予感が全身を走る。
「えっとぉ、ホワイトデーがどういう日なのかはぁ、小春ちゃんだって知ってるでしょぉ~?」
「うん、いくらあたしでも、それくらいは知ってるよ」
「なぁんと星杜学園のホワイトデーはぁ、女の子がシンデレラになれる夢のイベントなんだよぅ」
ここでシンデレラなんて単語を聞くことになろうとは夢にも思わなかったけれど、それがどういった内容なのかは想像がつかない。
「シンデレラ?」
「あのねぇ~、シンデレラになる資格がある女子生徒はぁ、たったの5人しかいないのよぅ~。しかも、その5人もねぇ、シンデレラになれる条件を満たさない人はダメなのぅ」
「……ふぅん?」
よく理解できないが、簡単にいうと、星杜学園の女子生徒は、その5人のシンデレラになる事を夢見てるってことで間違いなさそうだ。
「ところで小春ちゃんさぁ、5人のチョコ王子が誰だったかは、ちゃぁんと覚えてるぅ?」
「あ、えっと……、3人までなら間違いなく」
そういった事にはあまり興味がないので、誰がチョコ王子なのかなんて、いつもの私なら忘れてもおかしくはなかったが、なにせ今回は白い制服の2人が一ヶ月の間、自分のクラスに存在していた事と、1位だった早見坂とは映画関係で縁があった事もあり、珍しく覚えていた。
「そっかぁ~、小春ちゃんが覚えている3人っていうのはぁ……っていうことはぁ、ふむふむぅ」
「何がふむふむぅ?」
「3人以外は覚えてないっていうことはぁ、それはぁ……ふむふむぅ」
「3人以外を覚えていないと、何がふむふむぅ?」
麻莉子が何かを含んだような表情で、思案している。
「これはぁぁ~~~、もしかして、もしかするとぉ~」
「もしかすると?」
「麻莉子にもまだ分からないけれどぉ~、意外とぉ~、もしかするとぉ~」
麻莉子は、ちゃんと私に説明する気はないようだった。
「うんうん。お楽しみはぁ、最後までとっておかなくちゃねぇ~~~~」
どうやら最後にはお楽しみがあるらしい。
「友哉くんとぉ、桐生くんはぁ~。うんうん、おったのしみぃ~~~。そりゃあ緊張もするってもんでっしょぉ~」
私たち4人の中で、この行事を一番楽しんでいるのは麻莉子で間違いない。それから麻莉子は私にこう言った。
「小春ちゃぁん、ホワイトダンスパーティーは今日の放課後だからねぇ~。体育館に集合だよぅ」
「えっ? 麻莉子、今なんて??」
驚きで声が裏返りそうになりながら、その言葉を復唱する。
「ホワイト……ダンスパーティーっ!?」
「え? 小春ちゃ~ん、そこは驚くところなのぉ?」
「だ、だ、だ、だってさ。ダンスパーティーって?」
「小春ちゃんったらぁ、いまさらなぁにぃ? 体育の授業でもセンセがちゃーんと言ってたじゃないよぅ。星杜恒例のダンスパーティーの時に、壁の花にならないようにちゃんと踊れるようになりましょうねってぇ~。小春ちゃんったら聞いてなかったのぅ?」
聞いてないよ、聞いてない! 聞いてません!!
そんなハナシ、私はちっとも知らないんだから!




