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Space Sights  作者: 津辻真咲
6/14

本部総合課 Space Soldiers

「Space Soldiers」

ナンシー・ロイは、知っているようだった。

向かって右から順に、リーダーの灰崎博嗣はいざき ひろつぐ村崎葵むらさき あおい藍原瑠璃あいはら るり、そして、一一・ロボロフスキー(カズヒト・ロボロフスキー)の4人が姿を現した。

オーター・ブールは、目と目の間にしわを寄せ、その4人組に銃弾を浴びせた。

しかし、その中の一人、藍原瑠璃は、オーター・ブールの攻撃を避けて、回し蹴りをした。

彼の乗っている粒子リフターが音を立てて、床を転がっていく。もちろん、彼自身も。

「両手を上げ、伏せなさい」

粒子リフターの壊れる音に気を取られていたナンシー・ロイに、村崎葵はかまわず銃を突きつける。

彼女は、打つ手がなくなったことに苛立ち、自分の銃を強く握りしめた。

「みんな! こっちだ!」

警備部警備課の警備員たちが援護にやってきた。現場の警備ロボットたちが全滅してしまったので、機械ではない警備員までかりだされてしまったのである。

「銃を床に置きなさい」



 数時間後、通は一人で廊下に置かれた長椅子に座っていた。辺りは一面、白色。そして、無機質で閑散としている。壁と一体化されている時計は、秒針を音もなくなめらかにスライドさせていく。それがこの空間の唯一の生命体であるかのように、自由意志を持っているかのように、その他には何も気配がなかった。

「須木調査員」

 すぐ横のドアが開いた。

「エリカ・ニチュードの修理が終わりましたよ」

「はい」

このエリダヌス本部の修理室の出入り口から出て来た修理員の男性、ミッド・グリーンの声に通は顔を上げた。

「面会はもう出来るから」

「はい」

返事をする彼は、少し傷心気味だった。

 人工知能だからといって、完全な修復はもう不可能な時代へと突入していた。


「失礼します」

ドアが開き、サラ・ブラウンと李四が室内へ入ってきた。

「まだ、目覚めてはいないんだ。申し訳ない」

「そうですか……」

エリカが目覚めていることに、少し期待をしていた二人は残念そうだった。

「私はこれで」

「ありがとうございました」

ミッド・グリーンが去っていく。ドアが開き、閉じた。李四は少し頭を下げたままだった。

サラ・ブラウンはベッドの側の椅子に座り、意識のないエリカをじっと見た。

「早く目覚めて」

――SHINOHARAのように、もう会えなくなるのは嫌だ。



エリカが目を覚ます。しかし、そこはエリカの人工知能が作り出した仮想空間だった。白い空間なのに立方体だと感じる。

――前もそうだった。解体されそうになっている時と似ている。160億年前の地球時代だったかな。

――あぁ、そうか。だから、今の職業に就いたのか。

エリカは笑顔で篠原に抱きつく。そんな映像を見た。

目の前の篠原も笑顔になった。彼は地球時代のエリカ・ニチュードの開発者。遅咲きの研究員だった。


 青い空からは、約8分遅れの光が降り注ぐ。ここは、160億年前の地球。地上には、まだ植物などが花を咲かせていた。そんな大地にそびえ立つビル群の中心、そして人類科学の中枢のビルに彼女はいた。

「エリカ・ニチュード」

「はい」

エリカ・ニチュードは、立体映像で姿を現した。

「今日の整理をお願いします」

「はい」

この頃のエリカ・ニチュードは、あまり感情を表現することがなかった。人工知能の感情の開発も発展途上だったこともある。

「今日のアメダスの状況はどうですか?」

篠原は立体映像の彼女に、今日の確認を開始する。

「北部、南部共に正常です」

「はい。では、新しく設計された首都高速の渋滞解消シミュレーションの出来栄えはどうでしたか?」

「この設計なら渋滞は解消されます」

 篠原はチェックリストにしるしを入れていく。

「その下の南北バイパスはどうですか?」

「信号の秒数に少し手を入れる必要があります。こちらで、シミュレーションの計算をしておきました。参考にしてくださいと、警察本部の交通規制課に提出してください」

 エリカはシミュレーション結果を立体映像として映し出した。篠原はそれを確認する。

「分かりました。残りの整理は、私のパソコンを通じて各省庁に転送しておいてください」

「はい。分かりました」

それを聞いたエリカ・ニチュードは、立体映像を閉じていった。


――そうか、彼の名は、SHINOHARA。

――そして、今の新しい開発者の名が、Sarah Brown。

――そうだった。

エリカの削除されていた記憶が、幾重にも重なった偶然によって復元された。地球時代のことを伏せておくということは、できなかったようだ。


「エリカ!」

「はい」

エリカ・ニチュードは、自分を呼ぶ声に立体映像で姿を現した。

「よくも、やってくれたな!」

人類の同僚である担当首席官僚のグレン・ハーバーがコンピュータ室へ怒鳴り込んできた。彼は人一倍、失敗を嫌がっている。

「まだ、報告を聞いてないのか? planet plane社で航空機の墜落事故が起きた。その航空機へ今日の飛行設定データを送ったのは、管理人工知能のお前だろう!」

 エリカ・ニチュードの立体映像が一瞬、歪んだ。

「いいか? その墜落した航空機にはお前の開発者、篠原氏も搭乗していたんだぞ! 篠原氏を殺したのはお前だ。それを言いに来た。お前は解体だ」

ドアが閉まった。立ち去る音は、最後の記憶となった。



次の瞬間、意識はベッドの上のエリカにつながっていた。

「エリカ」

「……」

黙ったまま皆を見渡す。そんな意識を取り戻したエリカを見て、サラ・ブラウンは微笑んだ。

すると、ドアをノックする音が聞こえた。

「どうぞ」

開いたドアからSpace Soldiersの4人が姿を現した。

「はじめまして。私たちは本部総合課のSpace Soldiersと申します」

向かって右から二番目にいた村崎葵むらさき あおいが皆に代わり、あいさつをした。

彼女は、淡い紫色の虹彩と黒いセミロングの髪をしている。スカートもネクタイも黒色だが、制服は紫色の部分が多い。

右から三番目にいるのは、藍原瑠璃あいはら るり。彼女は、虹彩と同じ瑠璃色のスカートとネクタイをしていて、髪は黒髪のポニーテールをしている。

右から一番目の青年は、一一・ロボロフスキー(カズヒト・ロボロフスキー)。茶髪に黄金の虹彩をしている。制服の上着は白だがカッターシャツは茶色なのが特徴。

一番左のリーダーである男性、彼は灰崎博嗣はいざき ひろつぐという。黒色の髪と虹彩をしていて、基本的に黒いサングラスをしている。制服も主に黒色で、制服の一部分に金の刺繍がのびている。

「今回のテロリストの目的が分かりましたので、ご報告をと思いまして」

 灰崎博嗣がサラ・ブラウンと李四の方を向いて話し出した。すると、通が話の中に入って来た。

「何だったんですか?」

「復讐だそうです」

「彼らの惑星は恒星の死の時、宇宙環境省の保護を受けられなかったそうです」

 宇宙環境省の広報課が行っている、惑星保護のためのネット投票は多数決。だから、一定の割合の票を獲得しないと保護対象にはならない。多数決で、宇宙連合加盟国の人々によって、生死を決められてしまうのだ。

――このシステムの限界か。彼らもまた被害者。

通は、斜め下を向いていた。


「確か、人類の女性もいましたよね?」

 通は、灰崎博嗣に尋ねる。

「地球も保護対象にならなかったからだそうです」

「やっぱり、そうか」

サラ・ブラウンはため息をし、頬杖をついた。

「未だに保護派は、根にもっていたということね」

地球時代出身のサラ・ブラウンと李四は、あまり驚いてはいなかった。実は太陽が赤色巨星になり、人類が完全に地球から離れていく際、地球の生命体たち、人類以外は保護の対象にならなかった。行政の上層部の彼らにしてみれば、ただの惑星。

「地球ってそんなにいいところだったの?」

 藍原瑠璃が腕組みをして言い放った。

「え?」

 サラ・ブラウンは少し驚き気味で彼女の方へ振り返った。

「だって、人類って地球の事〈美しい〉って言い過ぎ」

藍原瑠璃が何か不満そうに言った。

「と、言うと?」

サラ・ブラウンが聞き返す。

「誰でも出身惑星が好きなのは分かるけど……、何か分からない」

「そっか」

サラ・ブラウンは少し微笑んだ。苦笑を隠して。

「それで話は変わるが、今回の一件で本部の半分である惑星SAVIが壊滅状態になってしまいました。よって、今回、身を挺してまでテロリストたちと戦ってくれたエリカ・ニチュード調査員の活躍を称賛し、上層部は彼女のいるアンドロメダ支部を惑星SAVIの緊急本部と定めました」

灰崎博嗣は話を終える。

――なんと。

アンドロメダ支部の皆は驚いた。しかし、通は少し呆れ気味だった。

――上層部、押しつけてきたな。

「それから、私たちSpace Soldiersもあなたたちと同じくアンドロメダ支部にて調査員として働くこととなりました。よろしく」

 村崎葵は笑顔で握手を求めた。

――ということは、エリダヌス本部がアンドロメダ支部へ一部、移動してくる?

エリカは村崎葵の言葉に〈ふよっ〉としていた。

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