第十二頁 決着
刀と斧がぶつかり合う。一撃一撃が重い衝撃を放ち、おおよそレベル20の戦いとは思えない気迫を醸し出していた。
もっと強く、もっと速く、もっと限界よりも先へ!
一撃毎にさらに斬撃の威力が増し、速さが増す。ユウも、ミノタウロスも。
ピシッ!
ーー音が聞こえる。超えてはならないーーいや、超えなくてはならない壁が壊れる音が。
「『幻想領域』ーー断ち切れその先まで。幻桜流刀術『幻想一閃』」
ユウの魔法で『断ち切る』情報が強化された刀は、ついにミノタウロスの斧を超え、ミノタウロスの身体に到達する。
「ブモォオオオ!?」
「ぐっ!?」
刀がミノタウロスの身体に到達した束の間、ミノタウロスは驚くも、すぐに右足で僕の胴に蹴りを入れ、僕を引き離す。
僕はそれをまともにくらい数m飛ばされた。さらに防御が間に合わず、肋骨を中心に骨が折れ、口から大量に血を吐く。
ミノタウロスは左肩から右脇腹にかけて斬り裂かれた傷から血が噴き出し、膝と手が地面につく。
二人はボロボロもボロボロ。100人中100人が二人を見ると二人の正気を疑うだろう。二人は笑っているのだから。それだけ身体が傷ついてもなお。
さぁ、次で決着だ。
二人はそう直感的に理解する。
ユウは刀を両手で持ち、腰の横で水平に構え、両足を前後に開き、前傾姿勢になる。
ミノタウロスは走る体勢をとり、右腕に血管がはち切れる程の力を込める。
葵は見届ける。その激突の果てを。
二人はどちらからともなく動き出す。
「幻桜流刀術『幻想一閃』!」
「ブモォオオオオオオオオ!」
互いの最強の一撃がぶつかり合う。ユウの刀は徐々にひび割れ、ミノタウロスの右腕は筋肉が切れ、骨が剥き出しになる。
それでもなお二人は止まらない。止まれない『想い』がそこにある。
「アァアアアアア!」
「オォオオオオオ!」
そこで、二人を中心に衝撃が走る。
葵はその衝撃に目を開けていられず、それが収まるまで目を瞑って待った。
幸い、衝撃はすぐに収まり徐々に目を開けることができた。
その目に映ったのは、その黒い衣装に黒い髪にも良く分かるほどに見えるぐらい血が流れているユウと、最早骨のみと言っても良いくらい、いやその骨すらもボロボロに崩れそうなくらいの状態のミノタウロス。
ミノタウロスの身体はもう既に崩壊を始めていて、心臓部分の魔石は従来の魔石の赤さとは異なり、赤に黒を混ぜた紅の光が輝いている。その黒さは強化種の証である。
勝った。ユウは勝ったのだ。ユウと同じくらいのレベルの人では死を待つだけになってしまう程の絶望に、ユウは勝ったのだ。
ユウはいつの間にか刀を下ろし、ミノタウロスの身体が崩壊していく様を見ていた。
「ーーーー」
生憎ユウが何て言ったのか自分が聞くことはできなかったけれど、ユウの満足そうな顔を見て野暮な事は聞くものではないかとそう思い、そっとユウに近づく。
「ユウ」
「……勝ったよ葵」
「ええ、よく見たわ。貴方の『物語』を、この目でしっかりと」
「ありがとう。ついでにお願いするよ。もうすぐ、魔法で繋いでいた『器』がまたバラバラになる。しばらくは起きれないと思うから、世話を頼むよ」
「ええ、任せなさい。ゆっくりお休み、また会いましょう」
「うん。シエルも『器』の修復をお願いね」
『お任せを、マスター。御身の器は必ず最高の状態にしてみせます』
「楽しみにしてるよ、じゃあおやすみ」
その言葉を最後に、ユウの身体は崩れ落ちる。葵はユウを受け止め、地上へと帰還したのだった。




