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幻想を歩く旅人  作者: 幻桜ユウ
第二章 孤独の少女は外の世界を夢見る
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『序章』






 『序章』 終わりはいつも突然に




 ◾️◽️◾️◽️◾️



 

 ーーおい、起きろよユウーー


 ーーユウさん起きてくださいーー


 ーーユウ、起きないと悪戯しちゃうぞー?ーー



 声……が……聞こ……える。


 懐かしい……ような、聞いてると悲しい……ような。


 起き……ないと。


 僕は身体を起こす。目が徐々に開き、目に入る日光に少しずつ慣れていくように、視界が開けていく。



 「あっ、起きました! 起きましたよ、()さん!」

 「やっと起きたか寝坊助。いくら寝るのが好きとはいえ、限度があるだろ限度が」

 「まぁまぁ、良いじゃありませんか。ユウさんは連日働き詰めでしたし、別に迷宮(ダンジョン)探索も急務ではありませんし、ゆっくり行きましょう」

 「いやいや、甘いよ()()ちゃん。ユウってば、好きあらば寝ようとするから、無理にでも起こさないと一生起きないよ」

 「()の言う通りだな。こいつ、あっち(日本)でも俺の事をちょくちょく枕にしやがるからな」

 「…ハッ! まさか、BL?」

 「おいやめろ、冗談でもそんなこと言わないでくれ」



 目の前には3人の男女。


 一人目は(かがみ)(やま)(とおる)。黒髪黒目の()()()男性。クラス『鏡の勇者(ミラージュブレイバー)』所持者。『鏡魔法』を扱う魔法戦士。


 二人目は(かみ)(さか)()()。黒髪黒目の()()()女性。クラス『剣持つ聖女』所持者。『聖剣魔法』を扱う聖女(物理)


 三人目は(あま)(がや)(かなで)。黒髪黒目の()()()女性。クラス『(そら)揺らす歌姫』所持者。『歌魔法』を扱う歌姫。


 『僕』達は日本からの転移者。高校からの4人で下校中、足下に魔法陣が現れ、この国『アイン』にやってきた。いや、国とは言ったが、この国には『外』が存在しない。地球のような球形ではなく、ただ無限に平面に広がっているわけでもない。ただ、円形状の平面上に国が存在し、その外側は物理的に断ち切られている。国の外に出ようとしても、壁があって出ることはできない。


 そんな世界で『僕』達に求められたのは、『迷宮(ダンジョン)の攻略』。この国の中心に大きく開いた『穴』。壁に備え付けられた階段を降りていくと、そこに広がるのは、常識が外界と隔絶された世界『迷宮(ダンジョン)』。


 最下層は地下100階層にあるとされ、現在は49階層まで攻略されている。その下が折り返し地点となる50階層。この迷宮(ダンジョン)では10階層ごとにボスがおり、その50階層にもボスはいるだろう。それも折り返し地点だけあって、これまでよりも強いかもしれないボスが。


 『僕』は自分の『ステータス』を脳裏に描く。



 

 【名前】 幻桜ユウ

 【レベル】 102

 【クラス】 シーカー 幻想の旅人

 【スキル】 幻想魔法

       



 レベルの割には非常に簡素なステータスである。本来シーカーは基本スキルである『探索術』や『状態異常耐性』というのを誰もが備えている。だが、『僕』はそんな『スキル』は持っていない。というか、所持できない。


 ここで、『ステータス』に関して説明するとしよう。


 レベルとは()()()()()()()を積んだことによって上がるもの。探索にしろ、討伐にしろ、はたまた料理にしろ、その人にとって『得るもの』があった時にレベルは上がる。


 RPGゲームの様にレベルが上がれば『攻撃力』や『守備力』が上がる、なんて事は無い。レベルとは即ち、『強さ』ではなく『人生の積み重ね』を表すもの。それ故に、本来『スキル』とは『得たもの』であるはずなので、レベルが大きいという事はそれなりに得たもの(スキル)があるのが普通なのだ。


 だと言うのに、『僕』の『ステータス』は非常に簡素なものだ。見やすいと言えばそれまでだが、『僕』の『スキル』は『幻想魔法』ただ一つ。それなりの雑務(タスク)はこなして来たはずなのに、何一つとして『スキル』として昇華される事は無かった。その唯一と言って良い『幻想魔法』にもレベルは無く、どんな文献にも載っていない異色を放つ『スキル』なのだ。


 『積み重ね』を表すレベルが無いという事は、つまりこの『スキル』には積み重ねる()()は無く、この『スキル』は既に()()されているという事なのだろう。何とも使い甲斐のないものだ。まぁ、面倒くさがりの自分には丁度良いのかもしれないが。


 『僕』はため息を吐き、起き上がる。



 「ごめん、心配かけたね。僕は大丈夫だから、迷宮(ダンジョン)に行こうか」

 「ユウさん、本当に大丈夫ですか? さっきも言いましたけど、疲れているなら休まれていた方が…」



 理恵はそう心配してくるが、『僕』は首を横に振って理恵の頭を撫でる。



 「本当に大丈夫だよ、理恵。心配してくれてありがとう」

 「んぅ、もう仕方ない人ですね。了解です。ですが、危ないと判断した時は『聖剣』を使ってでも無理やり止めますから、そのつもりで」



 理恵は頬を軽く朱に染めながら、仕方がありませんねとばかりに肩をすくめる。その様子を見て、頬を膨らませる人が一人。

  


 「あぁ良いなぁ。理恵ちゃん、ユウに頭撫でられてる。私、最近撫でられてないのに」

 「それはお前の普段の行動にも原因があると思うが…。まぁ、アイツもアイツで、奏の事はしっかり見ているからな。変に調子付かないようにタイミングを見計らっているんだろうよ」

 「透の言う通りなんだろうけどさ。って言うか、私は知ってるんだからね! 透ってば、ユウが学校で昼寝する時、さりげなく横に座ってユウの頭を自分の肩に誘導させムグムグッ!?」

 「おいバカッ、何言ってやがる!? そっ、そんな事してる訳ないだろ!? おいユウ、何も聞こえてないよな、なっ!?」

 「えっ? ああ、うん」



 透は急いで奏の口を両手で塞ぎ、顔を真っ赤にさせてユウに話が聞こえていたかを問う。


 もちろん、ユウは聞こえていなかったので、何の話かは全く分からない。ただ、透が顔を真っ赤にさせていたので、奏がまた何か言ったのだろうなと推測しているが。


 『僕』は少し微笑んで、3人に号令をかける。



 「今回の目標は迷宮(ダンジョン)50階層。折り返し地点だけあって、これまでより過酷な階層になるはずだ。気を引き締めて行こう!」

 「おう」

 「はい」

 「了解!」



 3人も元気よく返事をし、それを受けユウは迷宮(ダンジョン)へと歩き出す。3人もユウの後に続く。


 4人は進む。世界の秘密が眠る場所へ。


 それが、目を背けていた真実であるとは知らずに。


 




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