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怪しい協力者

 なんで!?


 なんで友達たちが!?


 くそ! わけわかんない!


 いつもの日常だった、いつも通りの朝7時に起床して仕事に向かったんだ。


 バスに乗って駅に向かうんだけど、その日は地元の友達二人と鉢合わせして、私達地元組なのに、なかなか会えないから、久しぶりの再会に嬉しくって昔話や近況報告をして、きゃっきゃっと年甲斐もなく騒いでしまった。


 普段は30分近くかかってうんざりしているのに、今日は楽しい会話をしていたせいかあっという間に駅に着いてしまった。


「え!? もう駅に着いたの!?」


「みたいね……」


「今日は満員バスも、長い道のりも苦じゃなかったよ私」


 私達3人は、うんうんと頷き合いバスを降りて、改札口に向かった。


「そういえば最近あちこちの県で、暴動騒ぎが起きているってニュース流れるけど、怖いよね~。ここでもいつか起きそうで……」


「ウイルスかなんかが原因じゃないか? ってワイドショーに出てるコメンテーターが言ってたけど、それが本当なら電車やバス、飛行機使っている時点で防ぎようがないよね」


 二人は不安な表情を浮かべて話をしているけど、私はこの手の話は嫌いだ。


 怖い怖いと不安を口にしてても何の解決にもならないし、そんな話をする時間があるなら自衛の手段を話合った方が、よっぽど有意義だ。


「祐希奈は心配じゃないの? 私達バスや電車使っているから他人事じゃないし、もしかしたら頭おかしくなった人達の暴動に巻き込まれる可能性は毎日あるし。」


「う~ん……そんな事言ってたら外に出られなくなっちゃうじゃない? だったら私は、考えつく限りの自衛手段を考えるかな?」


 ちらっとカバンから痴漢撃退用のスプレーを出してみせる。


「さすが祐希奈だわぁ。私そんなの持ち歩いてないよ。」


「祐希奈は、昔っから本当に変わらないよね。警戒心が強いというか、誰の事も頼らないし。」


 私が特別とかじゃなく、自衛手段を考えないで生きていられる人の方が特別だと思うのだけどもなぁ。


「あ、ごめん。二人とも先に行ってて。」


 そう言うと和美は、私達から離れて行った。


 そのまま私達は改札を通り駅構内へ、裕美は名古屋方面行きのホームに、私は東京方面行きのホームへ別れ、電車を待ってしばらく経ったら階段を物凄い人の数が押し寄せてきた。


「感染者が現れた! 食われてたまるか!」


「どけよ! ジジイ! 邪魔なんだよ!」


「早く逃げろ! 線路に出て早く外に!」


 人の波は、ホームをあっという間に埋めつくし線路へ我先にとなだれ込んでいく。


 え?


 待って? 今線路に行ったら!?


 パァァァァァァァァ!! キッギギィィィィ!!


 けたたましい警笛音とブレーキの音、それから叫び声と怒号が響き渡ったけど、みんな集団パニックを起こしているせいか、今起きた惨劇なんかお構い無しに空いている線路に逃げる者、駅構内に戻る者、呆然としている者とに別れた。


 感染者?


 感染者って、最近ニュースになっていた暴徒化した人達の事?


 それより食われるって何?


 そんな事ニュースじゃ言ってなかった。


 とにかく逃げなきゃ……。


 逃げる? どこへ?


 線路も構内も人が溢れかえっている。


 下手に動いたらダメだ。


 落ち着け、落ち着け。


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ーーっ!!」


 奴らが……初めて見るその姿、獣のように爛々とした目をし、血の混じったよだれをたれこぼしながら現れた。


 昔のゾンビ映画のように動きは遅い、これなら逃げられる。


 とりあえず武器になるもの……。


 だけど、テロ警戒対策のおかげで武器になりそうなものがない。


 その時、突然左腕を掴まれ、直後激痛が走る。


 自分の肉を食いちぎられる場面なんか、普通に生きていたら、まず見ない光景でしょうね。


 そして、恐怖よりも怒りと憎しみが爆発。


「こっ、のぉぉぉぉぉ!!」


 ぐちゅ!


 突き出した二本の指が暴徒の目を貫き、そのまま脳まで達したのか絶命した。


 ここから早く離れなきゃ死ぬ!


 自販機の横にあったゴミ箱を手に取り、目の前にいる暴徒なのか人なのかわからない者を片っ端からなぎ倒していく。


 階段にいる肉の塊達を蹴り飛ばして道を開け、何とか構内にたどり着いた。


 つい15分程度前は、いつも通りの日常だったのが、今は肉を食いちぎられた者とうめき声を出して歩く者、血溜まり、生臭い匂い。


 何もかもが非日常。


 もちろん食いちぎられた私の腕も……。


「とにかく外に行かな……」


 膝から崩れ落ち、床に体を密着させてしまい力が入らない。


 体が熱い、意識が遠くなる。


 私死ぬのかな……?


 -------


「これが私に起きた話、目が覚めたらハーフゾンビになっていたの。」


「今の話だと、あなたは祐希奈……さん?」


 話を聞いているうちに意識がはっきりして、今はちゃんと座れている。


 それにしても、この人も駅にいたのか。


 僕と同じ駅にいたと思わないけども。


「そう、私が祐希奈。人間は餌とか兵隊要員って考えているけど、ハーフゾンビの貴方を襲う気はないから安心して。」


 人間をそんな風に……。


 だけど、この人とこの人の持ってる兵隊が僕達に協力なり同盟なりしてくれたら、勝算が生まれる。


「ねぇ、坊やはなんて名前なの?」


「あ、僕は五十嵐浩晃って言います。」


「五十嵐くんね……よろしく。」


 祐希奈さんから、悪意も敵意も感じない。


 だけど、僕を同族って思っているからであって、人間のコミュニティにいるってわかったらどうなるかわからない。


 一か八かで賭けるか?


 みんなを危険に晒す事になりかねないけど、どうせ協力してもらえなくても全滅は必須。


「祐希奈さん、出会ってすぐにこんな事を言うのは申し訳ないんですが──」


「いいわよ。協力してあげる。」


 耳を疑った。


 僕は、まだ本題を何も言ってないのに快く承諾してくれたのだ。


「ふふふ。どうして?って顔しているわね? そりゃあ、あんな会話の始め方したらなんか頼み事があるってわかるじゃない?」


「そうだとしても、内容も聞かずに……」


「五十嵐くんが気に入ったからよ。それだけ。さぁ、行きましょう。」


 祐希奈さんは、そういうと簡単に身支度を済ませて、自転車を持ち出し、僕の腕を引いて屋敷を出て

 自転車のおかげで、あっという間にコミュニティに着いてしまった。


 ただ、分岐点が途中にあるのに一度も迷わず、僕にも聞かないで──

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