↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
究極ぼっちの異世界転移  作者: 志賀飛介
初めての異世界編
8/26

(8)酒場、ウエスタン

「あの、横助さん……。すいません、私余計なことをしてしまったようで…………」

 次の目的地に向かう道すがら、クルミが申し訳なさそうに横助に言った。

「いや、クルミは何も悪くないって!ただちょっと俺のネガティブが強すぎただけだから……」

 横助はそう言って隣で落ち込むクルミをなだめた。

「で、そのお得意様ってのはなんかの店なのか?」

 荷車に積まれた通常サイズの十倍はあろうかという大きな牛乳瓶を見ながら横助は尋ねる。この大きな牛乳瓶を三つ、牛乳を売りに来たときは必ず届けに行くお得意様がいるということで、横助とクルミは広場を北に向かって歩いていた。

「広場から北に少し行った場所で酒場をやってらっしゃる方なんです!」

「酒場か……」

 するとちょうど前方にいかにも酒場といった雰囲気の店が見えてきた。

「もしかしてあれか?」

「はい!『ウエスタン』さんです!」

 ウエスタンという名前の通り、まるで西部劇に出てくる酒場のような店構えだ。外から店内が見える例の入り口を押し開けてクルミは店内に入ると、大きな声で店主の名前を呼んだ。

「ガロンさーん!クルミでーす!牛乳を届けに来ました-!」

 すると奥から低い声が聞こえてくる。

「おう、ちょっと待ってろ」

 しばらくするとカウンターの奥から鼻の下に口ひげを蓄えた男が顔を出した。太く低い声に似合わず体型は細身だが、目付きがかなり鋭かった。そしてその鋭い目付きで横助を睨み付ける。

「…………お前は?」

「あ、あの……」

 蛇に睨まれた蛙のごとく横助が硬直していると、横からクルミがフォローを入れた。

「こちらは横助さんです。なんと伝説の勇者様なんですよ!」

「伝説のではないですけど、はい……」

 横助がそう言うとガロンは内面まで全て見透かすような目付きで横助の目をじっと見据えた。横助は助けを求めるようにクルミを見るがクルミはニコニコと笑うだけ。

「それは本当なのか?」

 心臓に響くような重たい声でガロンはそう言った。

「は……はい、一応……」

 証拠を見せた方が良いかと横助がローブに手をかけるが、ガロンは「そうか」とひとことだけ言った。

「え、信じてくれるんですか?」

「ああ、正直信じがたいが、お前が嘘をついていないのは分かる」

「はぁ」

 なんと言えばいい分からず横助が戸惑っていると、クルミが横から耳打ちをした。

「ガロンさんは人の感情を読み取れるんですよ」

(え、どゆこと?)

 混乱する横助にガロンは話を続けた。

「さっきは失礼な態度を取って悪かったな。俺はこの店の店主をやってる、テン・ガロンだ」

 横助は混乱した頭のまま差し出された右手を握る。

「あ、どうも。僕は……横助と言います」


「うっま!これマジで美味いっす!」

 牛乳を運び終えた後、横助とクルミはガロンの店で昼食をご馳走になっていた。メニューはクリームパスタ。ルルリエ家の牛乳を使用した知る人ぞ知る裏メニューである。見た目こそ普通のクリームパスタだが、横助はその味の良さに驚いていた。

「ガロンさんの料理は全部美味しいんですよ!」

 クルミがパスタを巻きながら自慢げに言った。

「いやほんとに美味いっすよこれ」

 横助もそう言うが、ガロンは至って冷静な顔で「そうか」と言うだけだった。

 そうしてしばらく黙々と食べる二人を黙って見ていたガロンだったが、ちょうど横助が食べ終わるタイミングを見計らって口を開いた。

「ところで横助。お前はこれからどうするんだ?」

 最後の一口を飲み込んでから横助は聞き返す。

「どうする?」

「まさかいきなり魔王を倒しに行くわけでもないだろ?取りあえず、何かしら仕事が欲しいんじゃないのか?」

「ああ……そうっすね」

 横助は頷く。ゲームならまず先にチュートリアルがあって、それから集会所的な所で簡単な依頼を受ける。横助としてもいつまでもルルリエ家にお世話になるわけにも行かないので、早いところお金を稼げるようになりたかった。

「だったらギルド同盟議会に行け。場所はクルミが知ってるだろう」

「ギルド同盟議会?」

 首をかしげる横助に、クルミが答えた。

「ギルド同盟はいわばギルドをまとめるためのギルドです。そこで各ギルドの代表が集まって話し合いをします。それがいわゆるギルド同盟議会です。議会ではギルド間の話し合いだけでなく、西都の運営についても話し合いがなされます。つまり西都の行政の部分もギルド議会が担っているんです」

「ギルド同盟は各ギルドから出される依頼の窓口もやってる。だから行けば何かしらの仕事があるだろう」

 ガロンは事務的にそう言った。

(なるほど、いわゆる集会所か……)

 ゲームなどでもよく登場する集会所。どんなRPGも最初は簡単な依頼から始まるし、そういう意味ではガロンの提案も悪くないと思った横助は早速ギルド同盟の本部を訪れてみることにした。


「ここです」

「ここかぁ」

 石造りの建物の前でクルミと横助は立ち止まった。建物は古いが扉の脇に『ギルド同盟議会』と真新しい看板がついている。

「ここが実質的な西都のトップってことだよな」

「はい。レインさんという方が商人ギルド長と兼業でギルド同盟議会の議長を務めています」

 横助は西都に来る途中にクルミから聞いた話を思い返した。若くして一国のトップとなったやり手の議長だ。若いというのがどれくらいなのかは分からないが、大体三十代後半くらいだろうというのが横助の予想だった。

「ですがおそらく会うことは出来ないでしょうね……。お忙しい方ですから」

「まあ、だろうな」

 横助は頷いた。商人ギルド長と同盟議会の議長、トップを二つも務めているのだから当然である。しかし目的は勇者としての第一歩を踏み出すための勇者っぽい依頼を探すことなので議長に会う必要はない。

(でもいまいちまだ勇者っていう実感が湧かないんだよなぁ)

 横助はそんなことを思いながらクルミに続いてギルド同盟のドアをくぐる。外壁は石だったが内装は木造で、正面に受付がいくつかあった。雰囲気は横助のイメージする集会所に近いものだった。若い人からお年寄り、冒険者風の人から農家っぽい格好をしたの人まで様々な人たちがいる。

「で、これが依頼か」

 横助は掲示板に貼り付けられた紙を見ながら呟いた。その掲示板からやりたい依頼の紙をはがして横の受付の持って行くというシステムだ。

「私もちゃんと見たのは初めてです。結構たくさんあるんですねー」

 クルミも同じように掲示板を見上げて言った。依頼書にはそれぞれ依頼主と簡単な依頼内容、それと報酬などが書かれていた。さすがにゲームと違って依頼の難易度は書かれていなかったが、依頼内容と報酬を見れば大体の難易度は予想できた。

「これなんてどうですか?」

 クルミが中でも特に簡単そうな害獣駆除の依頼を指差す。報酬は二万グラン。日当ならまぁまぁの額だ。

「なるほどね……」

 横助は腕組みをして少し考える。やがて「よし」と納得したように頷くと、「これにしよう」とその隣にあった依頼書を指した。


建築ギルドより

依頼内容『建築資材の片付け』

報酬『五千グラン』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。