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究極ぼっちの異世界転移  作者: 志賀飛介
初めての異世界編
6/26

(6)ラクティカ大陸

 翌朝、横助はいつも通り日が高くなってから目覚めた。

(ん……朝か……)

 うっすらと目を開き、窓の外の光に顔をしかめる。と、そこで勢いよく体を起こした。

「ス〇パ〇ヒ〇ロ〇タイム!!!」

 いつもの特撮物を見逃したと思って飛び起きるが、そこは知らない部屋である。

「ああ、そうか。異世界に来たんだっけ……」

 横助の脳裏に昨日からの出来事が思い浮かぶ。なんなら今この瞬間でさえやっぱり夢だったのではないかと思えるような突飛な出来事だった。

 横助はベッドの上で伸びをした後、無意識のうちに手探りでスマホを探している自分に気がついた。いつもなら朝起きてまずソシャゲのログインボーナスを貰うのが日課なのだが、それもこの世界では必要ない。

「そういやイベントもまだ完走できてないんだよな…………まあいいけど」

 横助はベッドから出ると、昨日借りた寝間着から同じく昨日借りたシャツとズボンに着替えた。アルモンドが昔着ていた服なので少々大きめだが、問題はない。そのまま横助は昨日晩ご飯を食べたリビングへと向かう。するとテーブルの上には一人分のトーストと目玉焼き、それからメモが一枚置いてあった。

『キッチンに牛乳があるので飲んでください。 ヘーゼル』

 それに従って横助がキッチンに向かうと、氷水につけられた牛乳瓶があった。

「……冷蔵庫はさすがにないか」

 そう呟いて横助は牛乳瓶に手を伸ばす。思いの外冷たい瓶に驚きつつ、蓋を外して一気に飲む。

「…………うっま」


 朝食を食べ終えた横助は一通り家の中を見て回ったが人の気配はなかった。そこで外で仕事をしているのではと牛舎の方に行ってみることにした。

(そんで俺も何か手伝うか。このままだとチートキャラならぬニートキャラになってしまうからな)

 牛舎ではクルミ達が何やら作業をしていた。横助が手伝いを申し出ると、クルミは大層喜び、アルモンドは面倒くさそうに鼻を鳴らし、ヘーゼルはニコニコと微笑んだ。

 それからしばらくはヘーゼルに教わって仕事を手伝った。と言っても横助に出来ることは雑用ぐらいだったが。

 そしてお昼過ぎ。昼食を食べ終えてぼーっとしている横助のもとにクルミが折りたたまれた紙を持って来た。

「なんだそれ?」

 横助が尋ねると、クルミは得意げに笑った。

「ふふふ、これはですね」

 そう言ってクルミは紙を広げた。それを見て横助は感嘆の声を上げる。それは新聞紙ほどの大きさがある地図だった。

「もしかして、この世界の地図か?」

「はい!この世界、というかこの大陸。ラクティカ大陸全体の地図です!」

 紙の左上に『ラクティカ』と書かれている。

「横助さんに見せよう思いまして、物置から引っ張り出してきました!」

 嬉しそうに言うクルミ。

「まじか、ちょうど見たいと思ってたんだよ。ありがとう」

 横助に言われてさらに表情を崩す。

「えーっとですね……。まずこの真ん中にあるのが王様や王女様のいる王都という国です。そして王都を中心に東西南北にそれぞれ東都、西都、南都、北都という国があります。他にも自治権を持っている小さな国はいくつかありますが、基本的にラクティカ大陸はこの五つの国から成り立っています」

 クルミが地図を指差しながら説明をする。それを見ながら横助は頭の中にある情報を整理していった。

「ここが西都ってことは…………ここがあの泉で、俺達が今いるのはこの辺りってことか?」

 横助が西都から西に少し進んだ草原地帯を指差す。

「そうです!この辺りの草原は牧畜をしている人が多いのですが、定住しているのはうちだけで、後はほとんどが遊牧民なんです。ちなみに私のご先祖様も遊牧民ですよ!」

 クルミが自慢げに言うのを聞きつつ、横助は地図を眺めた。ラクティカ大陸。西側が丸く東は入り組んでいる。どこかで見たことのある形だった。王都や西都など街の他にも上空から見えた山脈や砂漠も描かれている。それを見るに中々大きな大陸である。

「なるほどね」

 これから冒険することになる世界。横助の胸は否応なく高鳴っていた。


「ふぅー……久々にこんな疲れたな……」

 横助は濡れた頭をタオルで拭きながら呟いた。ドライヤーなんて便利な物はこの世界にはない。自然乾燥である。

 結局あの後は昼食を食べてからも作業は続き、最終的に全ての仕事が終わったのは日が暮れ始めた頃だった。朝が少し遅かったとは言え、ここまで長い時間労働に勤しんだのは横助にとって初めての経験である。ただ体を動かしていたせいか思いの外心地いい疲労感だった。

(肉体労働も案外ありだな)

 そんなことを思いながら横助は来客用として使っているという寝室のドアを開けた。まだ少し髪が濡れているが、横助は気にせずベッドに倒れ込む。仰向けになって天井を見つめた。まだ知らない天井だ。ふと両親の顔が浮かぶが、不思議と寂しさは感じなかった。それよりも横助にとって目下の悩みは今後もこの異世界で生きていけるのかどうかだった。しかし二日ほどこの世界で生活をして、文明レベルこそ違うが、文化的にはそれほど変わらないということが分かってきていた。その証拠に、食事などの日常生活において特にこれといって違和感を覚えていない。基本的に今まで通りの感覚で生活できているのだ。

(やっぱりこの世界が俺の世界の住人に想像されて出来た世界だからなのか?)

 横助は考えるが、どちらにせよこっちの世界に来てしまったのだからもうどうしようもない。幸い一番の不安要素だった言語の問題がなぜか日本語で通じるというご都合主義に似た何かによって解決していたので、横助の気持ちはだいぶ楽になっていた。

(このまま異世界スローライフと洒落込むのもありなんじゃないだろうか。まあ、あの女神は怒るかも知れないけど……)

 横助の脳裏に激おこぷんぷん状態のギャル女神が浮かぶ。そして疲れていたせいか激おこギャル女神をぼんやりと思い浮かべながら横助はゆっくりと眠りに落ちていった。


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