↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年銀河は魔王です  作者: 小林晴幸
おいでませ勇者の村
PR
63/67

3.勇者の村 ~病弱なおかあさま2~





 教えて貰った場所へと銀河達が向かうと、そこには2人で暮らすのも精一杯の小屋があった。

 庭先の畑で、病み衰えた女が鍬を振るっている。

 病み細り、骨と皮だけになった身体。

 その姿は、村人からの話に聞いていた年頃よりもずっと老けて見えた。


 だけど遠目に見ても、彼女が病みついていようと心根まで病んでいないことは分かる。

 側にいるだけでホッとする様な、温かな気配。

 ああ、あの人は何かに守られている…一目見て、銀河は直感的にそう思った。


 だけど病に蝕まれた身体で、畑に出ている方が問題で。

 一目見た感想など、女のあまりにも危うい様子で直ぐに消し飛んだ。


 心配してだろう、隣の家の女将が付き添ってあれこれと声を掛けている。

 どうやら女に農作業を止めて家に入るよう、口添えているようだが…

 細くなってしまった身体に、農具は重すぎる。

 振り上げる度、鍬の重さに振り回されてあっちへよろよろ。こっちへよろよろ。

 見ているだけでも、何とも危なっかしい。

 体力の消耗も激しい様で、農作業は遅々として全く進まず。

 蹌踉けるたび、その農具で惨事を起こすのではないかと………

 見ているだけで、背筋が凍える様だ。


 女の現状を正しく認識した瞬間、銀河とレイヤはだっと駆けだしていた。


「お願いです! 無理しないで下さい!」

「その鍬を置いて、涼しいところで寝ててよ! 農作業なら私達がするから!」

「そうです! 休んで下さい! どうか僕達に、手伝わせて…!!」


 なんとも必死な、本気の懇願だった。



 元々根が善良な銀河と、人並みの道徳観念は一応備えているレイヤ。

 どうにも女の様子を見ていられなかった2人は、土下座の勢いで頼み込んだ。

 お願いだから、どうか貴女は休んで下さいと。

 いきなり現れた旅装の少年少女に、女が目をパチパチと瞬かせる。

 だけど自分を心配してくれたのだと分かるや否や、警戒することもなく、やんわりと微笑んだ。

 まるでとろける様な、柔らかい笑顔だった。

「気持ちは嬉しいわ。でも、これは私の仕事で…」

「すまない。どうかこの2人の気の済む様にやらせてもらえないか」

 銀河達の頼みを断ろうとした矢先、追いついたローレンスが割り込んだ。

 穏やかながらも有無を言わせない器用さで、女に真っ直ぐ視線を向ける。

「この子は生き別れの母親を捜している最中でな、母親と同じ年頃の女性が大変そうなのを放っておけないんだ。だから頼む。この子の孝行心を満たすと思って、協力してやってくれ」

 大の男にそこまで言われて、無下にできる者はそうそういない。

 相手が一児の母親と言うこともあり、母性を擽るナイスフォロー。

 少年達は内心で、ローレンスの手腕を称えてグッと拳を握った。

 --流石ローレンスさん、年の功ー!

 狼男にとって、全く嬉しくない感想は、幸いにして狼男に悟られることもなく。


「それじゃあ、お手伝い、頼もうかしら…」


 女が子供達の熱意に折れたのは、半ば自然なことだった。



 しかしながら、最終的に畑仕事を手伝ったのは少女と狼男の2人だった。

 畑仕事は手慣れたものの、村娘レイヤ。

 亀の甲より年の功、長生きによって培われた知識と経験の狼男ローレンス。

 彼等にとっては畑仕事などちょちょいのちょいだが。

 銀河1人が、畑仕事は初体験で。

 鍬の握り方がなってない! と、作業開始早々に鬼の形相でレイヤから駄目出しをくらい。

 銀河は、勇者の母リーナの付き添いを厳命され、看病に勤しんでいた。


「ごめんなさい、ありがとうね」

「お礼なんて止して下さい。僕達、好きでやってるんですから」

 ただの自己満足だと言いながら、銀河は温かい香草茶を用意する。

 滋養が大事だよね。そう思いながらお昼ごはんの献立を考えていた。

「でも、申し訳ないわ。初対面なのにこんなに良くして貰って…」

「言ってたでしょう? 僕はお母さんがいないから、貴女みたいな人を放っておけないです」

 それは嘘じゃないと、内心だけで呟いた。

 銀河の父母は、もう10年も前に他界しているのだから。


 銀河の強い勧めを断ることもできず。

 この日、日暮れまでリーナは銀河達の献身を受け入れることになった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。