0.少年ジャック
その少年は、身が切れるのも、息が切れるのも構わず、森の中を疾駆した。
彼等が住まう大陸は、地獄だった。
遙かな古代、光の大神と闇の大神が相争い、同時に倒れ臥したという。
深き眠りについた、その身体から生まれた四つの大陸。
闇の大神の心臓部があったとされる場所に相当するのが、代々の魔王が居城『真夜城』。
つまりは、この大陸。
それは、四つの大陸で最も闇深き大陸だということ。
保護してくれる『国』も無く、それでも僅かに根付くこの地の人間達は皆、絶望していた。
この暗黒の大地に生まれてしまったこと。
襲い来る数多の魔族に対抗する手段も少なく、多くが命を落としていく。
それでも此処で生きるしかないことに、彼等は絶望せずにはいられなかった。
闇の大陸に唯一存在する、人間の集落。
弱く儚い者達は、驕奢たる魔物の食い物にされながらも、彼等は他所に逃げられない。
逃げる為に、他大陸へ渡る手段がない。
船を造ろうにも、海に出没する奇怪な魔物達に転覆させられるだろう。
他方へ逃げるには、彼等はあまりに弱かった。
逃げ場のない闇の中、それでも僅かでも生き残る為、人間達は助け合う。
必死に身を寄せ合って互いに震える体を宥めながら、より強く深く、情を寄せ合って。
そんな、絶望しながらも生きる為、必死な者達の村。
ジャックは、そんな村に生まれた一人の少年だった。




