女神光臨(の、魔法ができました)
間抜けな音と共に、魔法の記述が再び増える。
今度はどんなモノができたのかと、銀河達は逸る胸をざわめかせながらページを捲る。
そこに書かれていた記述は--
「こ、これは…」
「またなんとも、想定外の大作ですね! 流石は銀河様!」
「っていうか、これって魔王って存在とは分類違いじゃ…?」
三人三様、それぞれの反応でじっと凝視してしまう。
銀河は絶句し、クリュスは目を輝かせ、レイヤは首を傾げている。
そんな三人を引き出した魔法の説明書きには、こうあった。
回復魔法レベル4 消費MP1
“癒しの女神召喚”
発動条件:呪文+祈祷
「誰か助けて…!」と唱えつつ、女神の召喚を願う。
効果:
癒しの力を持つ女神を召喚する。
女神の力で半径3㎞以内にいる者のありとあらゆる傷病を問答無用で癒す。
病気・怪我の完全回復効果。
予想もしていなかった効果の高すぎる癒し魔法に、レイヤは奇妙な顔をしている。
「これは…魔王の魔法では、ないわよね?」
思わず疑問系になってしまうのは、目の前にあまりにも魔王らしくない少年が居るから。
「うーん。どうだろ。僕もよく分からないんだけど、怪我が治るのは、良いことだよね?」
それは「良いこと」で済ませて良いのか、魔王という観点から考えると疑問は大きい。
だけど銀河としては望まぬ結果ではなかったし、良しとすることにした。
「いや、そもそも…銀河の世界じゃどうか知らないけど、こっちでは回復魔法なんて聖職者でもなければ使えない筈なんだけど…」
「え゛っ」
思っても居ないことをレイヤに言われ、銀河が固まる。
次いでその首は巡り、視線はクリュスへと。
クリュスは無駄に爽やかな笑顔で其処にいた。
「クリュスさん、どういうことです?」
「ふふふっ 銀河様にならできると確信していました! ちょっとできるか~と思って提案してみたら案の定です! 流石は銀河様…その才知、その魔力、我等の王とはいえ、歴代のどの魔王様も及ばぬ素晴らしい才能と慈悲の心! 我等の忠誠を一身に背負うお姿! 私は銀河様の素晴らしさに臥して…」
「クリュスさん、クリュスさん、その辺で」
「クリュスさんの銀河賛美、長すぎて厭きるわよね」
身悶えする様に感激で頬を染め、一心不乱に銀河を褒め称える吸血鬼。
そんなクリュスさんにも慣れてきた二人は、クリュスが暴走しても動じなくなっていた。
「でも、確信していたって言うけど、半信半疑だったんじゃないの」
「おや、レイヤ嬢。貴女は銀河様にできないことがこの世にあるとでも?」
「あ、クリュスさん。僕、流石に人殺しとかはできませんからね。その他にもできないことはありますから。その辺、理想と現実の折り合いをちゃんと付けておいて下さいね」
本気で怪訝という顔をする吸血鬼と、あっさりその言葉を否定する魔王。
村娘は、そんな彼等と一緒にいることが楽しくて仕方がない。
もういっそ、この城に骨を埋めようかな。
そう思うくらいには、彼女は風変わりな魔王と吸血鬼の住む城を気に入っていた。




