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少年銀河は魔王です  作者: 小林晴幸
魔王城の日常
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取扱説明書クリュス1号のご案内 ~回復魔法をつくってみよう~




 自分の予想以上の能力値に微妙な反応を残しつつ、どう対応したものかと銀河は悩む。

 しかし彼は悩んでも仕方のないことは悩まない主義だ。

 気にしても仕方ないと、ある程度眺めた後でページを閉じた。

「ちょっと、銀河? 閉じてどうするのよ。創った魔法の確認するんじゃないの」

「あ」

 自分のステータスに衝撃を受けて、頭からスポーンッと抜けていた。

「そうだったね。回復魔法を創ったんだった」

「ああ、創れちゃったんだ…」

 銀河がいそいそとページを捲る横で、微妙な反応のレイヤ。

 そう言えば先程からちょっと様子が変だなと、この時点で銀河は気付いた。

 不思議な顔を向けてみるが、レイヤは苦笑で「いいから」と応えるのみ。

 今は先に魔法を確認しようと、彼女は言った。

「だって、気になるから」

「それもそうだね」

 少年少女と吸血鬼が肩を並べ、ページを大きく開いた。


   第一項目 「回復魔法」


    回復魔法レベル1           …5P

    回復魔法レベル2           …6P

    回復魔法レベル3           …7P


 記された目次の項目に、回復魔法と大きな文字。

「うわ。一気に三つも魔法ができてる」

「どうやら銀河様の想像力は特に優れたものの様です」

「そうなんですか?」

「はい。この魔導書はイメージがはっきりしていればはっきりしているだけ、素早く的確に魔法が完成します。また、威力や効力もイメージがどれだけ固まっているかで決まってくるのです。それは使い勝手にも影響し、発動条件の決まる要因でもあります」

「発動条件って、何のことですか?」

「実際に魔法のページを開けば分かりますが、箇々のページには呪文など、魔法を発動する条件が記されています。イメージが固まっていなかったり、上手くできていないと、発動条件が難しくなったり、発動に使うエネルギー量が大きくなったりするのです」

「そう言うことは次から早く言って下さいね、クリュスさん」」

 結構大事なことを後から言われ、銀河の眉尻が下がる。

 変なことになっていませんようにと祈りつつ、銀河は確認の為にページを捲った。


「こ、これは………」


 銀河が捲ったページ。

 其処に記されていたのは、少年が予想だにしなかったモノで。

 イメージがどれだけ大事か、突きつけてくる出来映えで。

 銀河は己の貧弱な想像力に頭を抱えた。


              回復魔法レベル3 消費MP1

      発動条件:呪文

       「たすけてまみー」

      効果:精神的痛み止め

       呪文を唱えると10年前に亡くなった筈の銀河の実母が現れ、

       「痛いの痛いの飛んでいけ」をしてくれる。


「………。なにこれ、超斬新」

 この魔法に意味はあるのか?

 銀河的には、顔も覚えていない母親に会えるという意味(結構重要)しかない。

 ちなみに回復魔法レベル1は銀河の自称親友「齊藤一二三」君が赤チンを塗ってくれる。

 回復レベル2では銀河の小学生時代の初恋の君「中村鳴子」さんが包帯を巻いてくれる。

 どれもこれも、別段魔法である意義はないものばかりで。

 そんな魔法を創ってしまった銀河は、己の想像力の貧弱さに頭を抱えた。

 別の視点から見れば、物凄く想像力があると思われるのだが。


 碌な魔法が創れなかったと落ち込む銀河。

 ページの空白はまだまだ沢山あり、作り直そうと思えば幾らでも作れるだろう。

 だけど次にまともな魔法が作れるとは限らない。

 博打を打つ趣味のない銀河は、時に冒険心が足りない。

 そんな彼を唆すのは、吸血鬼。応援するのは、村娘。

「大丈夫です、銀河様。方法はどうあれ、微々たるモノでも効果のある魔法ではないですか」

「そうそう。このままのイメージはアレだけど、発想を変えてみれば良いんじゃない?」

「そうですね。銀河様、もう一度だけ頑張ってみましょう? 今度は、もっと丁寧に時間をかけてイメージを膨らませてじっくりやればよろしいではありませんか」

「…うん、そうだね。やってみるよ」

 勇気とやる気を取り戻し、銀河は立ち上がる。

 その手には、不気味な魔王専用魔導書。

 その瞳には、魔法への憧れ。

 そして重要なのは、大事な友達を案じる気持ち。


「回復、回復… 手当、看病…? 大事なのは、そこに込められた温かい気持ち…?」


 自分の中に潜む回復という名の漠然としたイメージ。

 その中を漂いながら、銀河はこれぞというモノを探す。 

 そうしてやがて、魔導書が一際強く、光り輝く。


 チーンッ

 

 だけどやっぱり、音はアレだった。





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