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4 ウサギのクッキー

「シエラ、セイラ⋯⋯これは一体どういうこと?」


お母様がシエラを睨みつける。


(まずい⋯⋯)


シエラちゃんが後ずさる。私も、思わず黙ってしまった。


「こんなドレス! 一体誰が許可したのかしら?」


なぜこうなったかというと。

シエラちゃんにドレスをあげて、隠し通路から送り返そうとしたら、お母様の足音が聞こえて。


「危ない! お母様が来ちゃう! シエラちゃん、そこに落ちてるリボンは私のクローゼットの奥に隠して! クッキーはポッケに!」


そう叫んだんだけど⋯⋯。

その時シエラちゃんが着ていたドレスはどうしようもなくて、結局ばれちゃったんだよね。


(あっ⋯⋯でも、お母様もこのシエラちゃんの可愛さを見たら態度を改めるんじゃ⋯⋯)


「こんな汚い醜女に、何を着せているの!?」


(はぁっ!? サイテーっ!!)


淡い期待も裏切られて、もうどうしたら良いかわからない。直視してみたらいいのに。絶対「尊っ!」ってなるに決まってるのに、もったいないな。


「ええっと。お母様⋯⋯」

「⋯⋯お姉様。言い訳するとか言ってなかった?」


シエラちゃんが私に耳打ちする。


(顔が近い! サイコー! じゃなくて。言い訳⋯⋯)

「あっ!!」


(言ったわ!!)


確か、シエラちゃんが不安がってるとき、「『この子の身だしなみが整っていなかったら、私まで悪く思われるでしょう!』とでも言うから大丈夫!」とか言った気がする。

そうじゃん、言い訳できるじゃん! 何で忘れてたんだろ⋯⋯。


とりあえず、ここは⋯⋯。


「お母様、私が着古してゴミ箱行きだったドレスを、この奴隷にくれてやりましたの。私の奴隷がボロボロの服を着て歩いていたら、私の品格まで悪く思われてしまいますもの!」


(シエラちゃん⋯⋯! 悪く言ってごめんっ!)


「なるほどね、さすがセイラ、我が家のことを考えてのことだったのね」


こんなあっさりいけちゃうの?

とにかく安心した。シエラちゃんも少しうれしそうに微笑んでいる。


お母様がいなくなると、シエラちゃんが近づいてきた。そして、くすっと笑った。


「お姉様。ナイス演技」

(ぎゃぁぁぁぁっ!! シエラちゃんに褒められたっ!! というか可愛すぎない!? 私の推しだから当然だけどさぁっ!!)


私は尊すぎてもう倒れそうだった。




「シエラちゃん、さっきポッケに突っ込んだウサギのクッキー潰れてない!?」

「⋯⋯大丈夫」


シエラちゃんがドレス越しに手触りで確認しながら言った。


「よーし! お母様も言ったことだし、買ってきたクッキー食べよ? 早めに食べてねってお店の人が言ってたから」

(お店の人の話はシエラちゃんが食べてるのを見るための嘘だけど、事実だよね! 多分⋯⋯)


「⋯⋯うん」


シエラちゃんはポケットからクッキーを取り出すと、包みをそっと開けた。

そして、慎重に口元に近づけると、小さな口でクッキーをかじった。


(うさぎのクッキーを両手で持ってモグモグしてるシエラちゃん、ガチの天使!! 「はむっ」っていう効果音がしそうな感じが!!   もはや人間界の宝でしょ!! )


サクッと心地よい音を鳴らしながら、楽しそうにクッキーを頬張るシエラちゃん。そんなシエラちゃんがかわいすぎる!!


「⋯⋯? 何でこっち見てるの、お姉様」

「なんでもない! た、たまたまだよーっ」


(可愛いからに決まってるーっ!! 己の可愛さに気づけーっ!! シエラちゃーんっ)


シエラちゃんは不思議そうな顔をすると、クッキーを食べるのを再開した。

相変わらず「はむはむ」って食べてて、可愛すぎーっ!!


もう私は限界を迎えて、クローゼットを全開にした。中には「もう捨てていいのよ」とお母様に言われたのにもかかわらずとっておいた服もあれば、新品の服もある。


「お母様を完璧に騙せるって分かったんだから、もう無敵だよ! ほら、このドレスも、そのドレスも、全部シエラちゃんにあげるからね!」

「⋯⋯そんなにたくさん着られないよ」


苦笑いしながらも、シエラちゃんは着ているドレスの裾を愛おしそうにギュッと握りしめた。

そして、私にそっとウサギのクッキーを差し出した。


「ほら、お姉様も食べなよ」

「いいの!? じゃなくて。シエラちゃんが全部食べて良いんだよ!?」


私がそう言っても、シエラちゃんはクッキーを差し出すのをやめない。


「じゃあ、一個だけ⋯⋯」


私もかじると、シエラちゃんがじーっと見つめてきた。


「どうしたの?」

「⋯⋯なんでもない」

「あっ! 口にクッキーの欠片ついてた!?」

「⋯⋯違う」


シエラちゃんは耳を赤くして、そっぽを向いてしまった。


(私にはあのダイヤの原石を換金した大金があるんだから、次はもっと可愛い髪飾りも買ってあげるね!)

私はそう心に誓った。

お読みいただきありがとうございます。

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