3 お着替え大作戦
(シエラちゃんっ、シエラちゃんっ)
私はワクワクしながらシエラちゃんが部屋に来るのを待っていた。
昨日、隠し通路を通って部屋に戻ったあと、シエラちゃんは、掃除をしなければならないので、すぐに部屋に戻ってしまった。
(つまりまだ渡せてないんだよっ⋯⋯!)
私は、くううっと拳を握ると、そのまま壁をぽんぽんと叩いた。
その時、ドアがゆっくりと開いた。
「お姉様。隣の部屋に響くよ?」
「し、シエラちゃん!?」
私は、壁を叩くのをやめると、シエラちゃんに飛びついた。
シエラちゃんは困ったような顔で言う。
「お姉様?」
「あぁっ、ごめんっ! オタク全開でごめんーっ!」
静かな朝に私の声が響いた。
「これ、昨日欲しいって言ってた青いリボンだよ! あと、うさぎのクッキー!」
「私なんかに買わなくてもいいのに⋯⋯」
呆れた様子で、でも少し嬉しそうに言うシエラちゃん。そんなシエラちゃんも可愛すぎで、私はもう死にそうだ。
「⋯⋯でも、ありがとう」
(ぎゃあぁぁぁっ! シエラちゃんずるいーっ!)
可愛すぎて、私は心のなかで叫んでしまう。
「い、良いの良いの。また買うからね! それにしても、リボンどうやって使おうか!」
思わず話題を変えてしまった。
(でも、可愛いんだからしょうがないよね!)
「えっと⋯⋯このドレスにつけたいな」
「このドレス?」
シエラちゃんが着ているドレスは、もうすっかりボロボロで、ところどころ破けたのを縫った跡がある。
それに比べて、私のドレスは、新品なうえにもう着なくなったドレスですら、ほとんど前の状態のままだ。
(おかしくない!? 私だけ買ってもらえて!)
とはいえ私もお母様に流されて新品を買ってもらっているから、悪いとしたら自分もだけれど。
「私のお古で良ければあげるよ?」
「⋯⋯でも、お母様がなにか言うかも⋯⋯」
「そしたら私が、『この子の身だしなみが整っていなかったら、私まで悪く思われるでしょう!』とでも言うから大丈夫!」
(何としてでも私の服着せてみたいーっ)
絶対似合うに決まってる!
私はそう思って、クローゼットの中から服を数着出してみた。
「ほら、これとか似合うんじゃない? リボンをここにつけて⋯⋯」
「⋯⋯お姉様、本当に良いの?」
「もちろん!」
(推しに直接なにかあげれるなんてサイコーでしょ!)
「だったら⋯⋯これがいいな」
シエラちゃんがそっとひとつのドレスを指さした。
それは、白くてふんわりとした生地に、パールがあしらわれている、可愛らしいドレス。そこまで悪目立ちしないから、お母様でも許可しそうだ。
「これだけと言わず、全部いいんだよ!?」
「でも⋯⋯たくさんあっても、困っちゃうし」
シエラちゃんは、私の手からそっとドレスを受け取ると、体にかざした。
「これでも、十分だから」
(しーえーらーちゃーんっ! なんでそんなに可愛く笑うのーっ!!)
私の脳内は大パニックだ。
シエラちゃんは、ふんわりと優しく笑っている。原作のときには直接見ることが出来なかった笑顔を、はっきりと、今ここで見ることができた。
「ありがとう、お姉様」
その顔は、きっとアニメでも見ることができなかったと思う。
縫い付けようとは言ったものの、どうつけたら似合うかいまいちよく分かった。
「そうだ! 体にかざすだけじゃなく、一度着てみなよ!」
「え⋯⋯今?」
「うん! できれば、今!」
私は満面の笑みを浮かべる。この服を着た姿を見てみたいーっ!
「⋯⋯こう?」
シエラちゃんが着てみせる。
「うんっ⋯⋯ってめっちゃかわいいーっ! なんでそんな似合うのーっ!?」
(いや、私の推しだから当然か!)
シエラちゃんは、ピンときていないようで、こてんと小さく首を傾げた。
「ぎゃーっ!」
「お、お姉様?」
シエラちゃんは何が起きているかよく分からないようで、ますます首を傾げる。そんな仕草が、シエラちゃんのことをもっと好きにさせて、もっと叫びそうになる。
(あぁっ、ここ叫んじゃいけないの忘れてたーっ!)
懐かしいな。前世、家でよく叫んだなぁ。
「り、リボンはここが良いかなぁ? 結ぶね」
慌ててリボンを腰に巻き、後ろでリボン結びにする。
ふんわりさせて、形を整えたら⋯⋯。
「できた! どう?」
鏡を使って見せてみる。
「⋯⋯かわいい」
「だよねぇっ! シエラちゃんかわいいねっ!」
「⋯⋯ドレスがね」
シエラちゃんは、少し笑って言った。
(そう言ってるシエラちゃんが可愛いんだよーっ)
また今度、他のドレスもあげるからね!
お読みいただきありがとうございます。




