第22話 皇帝の来訪 二日目 前編
「⋯⋯」
お父様は、黙ったあと、「ああ」と答えた。
「な、何で⋯⋯」
「⋯⋯スーラは、身分だけで人を差別するような人だ」
お父様は俯いて、続けた。
「だから、皇帝の子と言ったら、絶対にシエラを特別扱いして、セイラのことなんて全く気にしなくなる」
「⋯⋯でも、今はシエラちゃんが虐げられています」
私が首を傾げながら不安げな表情をすると、お父様は「それに」と続けた。
「もし、シエラが皇帝の娘だということをスーラが知っていたら、シエラを、自分の立場を上げるための道具にしていただろう。人質にして皇帝に言うことを聞かせようとしていたかもしれない」
「!」
(そっか、シエラちゃんを守るためだったんだね)
私は胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。きっとお父様のことを味方だと信じていたから、裏切られなくて嬉しいんだろう。
本当に、お父様は私たちのことをちゃんと考えてくれる、いい人だなぁ。
(あれ、でも⋯⋯)
「じゃあ、なぜ、そんなにお母様の性格を知っているというのに、今も離婚しないんですか?」
「⋯⋯昔は、あんな人じゃなかったんだよ」
お父様はポツリと呟くと、「そろそろ寝なさい」と言って私たちを部屋まで送ってくれた。
その時、お父様は小さく呟いた。
「もう、スーラはあの頃には戻れないのだろうか」
「⋯⋯」
私は何も言えずに、部屋へ入ろうとした。
「⋯⋯お母様、昔はどんな人だったのかな」
シエラちゃんが呟く。
「⋯⋯どうだろう」
私は、それだけ呟くと、シエラちゃんを部屋まで送った。
そして、シエラちゃんを送ったあと。私は部屋の中に入ると、思いっきりベッドにダイブした。
ふわふわの布団が私を包みこむ。
「もう、よく分からなかったけど⋯⋯」
私は布団に顔を埋め、笑顔で言った。
「まあ、お父様がシエラちゃんを守ってくれてたならそれでいいよね!」
私はそう思い、そのまま眠ってしまった。
◇◇◇
次の日。
皇帝は泊まっていったから、今日も話し合いみたいなのがある。
昨日はかなり不穏な空気で終わってしまったから、今日はどうなるかちょっと怖い。
(皇帝はいい人だけど、ちょっとシエラちゃんのこととなるとシエラちゃんを困らせるくらい過保護だよね⋯⋯)
昨日だって、シエラちゃんは皇帝に過保護な発言をされてなんだかすごく困っているような顔をしていた。間違いなく皇帝の重すぎる愛のせいだ。
(私はいつも一歩引いて、シエラちゃんを困らせないように愛を伝えてるのになぁ)
私はそう思いながらも、話し合い(?)の場に向かった。
その時。
「⋯⋯お姉様」
「シエラちゃん!」
シエラちゃんが走ってきた。
私はシエラちゃんを抱きしめて、頭を優しく撫でる。
「お、お姉様?」
「あっ」
はっとしてシエラちゃんを見ると、少し困ったような顔をしている。
(困ってる顔のシエラちゃんも可愛いっ!! じゃなくって! 困らせちゃだめ!)
私はぱっとシエラちゃんを話すと、慌てて早口で話し始めた。
「し、シエラちゃん、今日も話し合いみたいなのに参加するの?」
「⋯⋯お母様が、来てって言ったから」
「私も今日も呼ばれてるんだよね、何のための話し合いなのかな?」
「⋯⋯わかんないけど、」
シエラちゃんがいいかけたとき、部屋の前についた。
ドアを開けようとしたとき、部屋の中から大きな声が聞こえてきて、私は思わずドアにのばしていた手を引っ込めた。
「で、ではどうすれば⋯⋯」
「まだわからないのか?」
(も、もう始まってる!? しかも喧嘩してる⋯⋯!)
私は恐る恐るその中に入った。
「もう一度言う。シエラを⋯⋯って」
皇帝はこちらを振り返って、ニコッと笑った。
「シエラ、来ていたのか」
皇帝は、シエラちゃんを優しく抱き上げた。
(あっ、またシエラちゃんを困らせてる!)
私はそう思いながらも、悪いことをしているわけではないし、なにしろ止めたらどうなるかわからないからどうにも出来ない。
(私はまだシエラちゃんを生で見ていたいから、止めたくても止められないなぁ)
私は仕方なくそのまま席に着くと、シエラちゃんを解放するまでずっと待っていた。
やっとシエラちゃんを解放してもらったので、話し合いが再開された。
(そもそも目的はなんなんだろう? さっきシエラちゃんが言いかけてたけど、心当たりがあるのかな?)
私は首を傾げた。
皇帝が話している内容は、主にシエラちゃんのことだし、本題がわからないなぁ。
「あれ⋯⋯」
(もしかして、シエラちゃんのことを話すために来たのかな?)
シエラちゃんの話題といったら、一つくらいしか思い浮かばない。
(皇帝は、シエラちゃんを取り返しに来たんだ⋯⋯!)
そう考えたら、もうそれしか思いつかなくなった。
もし、そうなったら。
私とシエラちゃんは、離れ離れになるの⋯⋯?
お読みいただきありがとうございます。




