第17話 お父様
私はベッドの上でゆったりとしながら、秘密について考えていた。
秘密っていうのは、なぜ皇族のシエラちゃんがこの家にいるかについてだ。
「お母様に聞いたら⋯⋯流石に怒られるよね」
私はお母様に聞くのは無理だと思って、他の選択肢を考えた。
「あっ! そういえば⋯⋯」
(影が薄すぎて忘れてたけど、お父様もいるんだった!)
影が薄すぎるという理由でどんな人かもよく分からないけど、聞いてみようかと思って、私は部屋を出た。
「うわぁ、おばけが出そう⋯⋯」
部屋の外は真っ暗で、窓から木の陰が見えて不気味だ。
「明日でも良いけど⋯⋯」
(今すぐはっきりさせたい⋯⋯!)
私はそう考えて、自分の足音しか聞こえない静かな廊下をゆっくりと歩いていった。
コンコンコン。
お父様の部屋のドアを優しく叩いた。
「お父様、入ってもいいですか?」
「⋯⋯」
返事はない。
私はもう一度ドアを叩いた。
コンコンコン。
返事は、またなかった。
「入りますね」
私はそう言うと、ゆっくりとドアを開けた。
中は暗かった。
(あ、やっぱり寝てたかな⋯⋯)
そう思った途端。火がぱっとついて、部屋が急に明るくなった。
「⋯⋯セイラか」
お父様はロウソクを近くに置くと、こちらへと手招きした。
「どうしたんだ? 何かあったか?」
「いいえ。ただ、シエラちゃんについて知りたくて」
「⋯⋯シエラについて、か」
お父様は俯いた。
私はそんなお父様をまっすぐ見つめながら、返した。
「はい」
「⋯⋯もう帰りなさいと言ったら、帰るか?」
「帰りません」
「⋯⋯そうか」
お父様は諦めたように言った。
「シエラは、スーラから生まれた子ではない」
スーラというのは、お母様の名前だ。
「⋯⋯知っているようだな」
「はい、シエラちゃんは皇族の子、であっていますか?」
私が問うと、お父様はゆっくりと頷いた。
「ああ」
「なんでこの家にいるんですか?」
私がそれも尋ねると、お父様は静かに口を開いた。
「⋯⋯最初は、ただの迷子だと思っていたよ。でも、その子が初めて流した涙はダイヤモンドだった」
「じ、じゃあ、皇帝のもとに届けなかったのは何で⋯⋯」
「あの頃の皇帝は、妻と子を亡くして途方に暮れていた。ときには、暴力的になることもあった。そんなときに、その子を届けたらどうなる?」
「⋯⋯さらった犯人だと思われて、処刑されます」
私が静かに答えると、お父様は「そういうことだ」と答えた。
「自分勝手だろう?」
「⋯⋯誰だって、自分の命を優先するのは、仕方ないと思います」
(私はシエラちゃんの事を優先しちゃいそうだけど、まあ推しだからっていう理由もあるし)
お父様ははっと目を見開くと、「そうだな」とつぶやいた。
「セイラ。シエラを助けられなくて、申し訳ない」
「大丈夫です。私がシエラちゃんを支えているので」
(いや、正直に言うと助けてあげてほしい!!)
言葉では大丈夫と言いながらも、心のなかではそう思ってしまった。
「もう帰るかい?」
「あ、いえ。もう一つ知りたいことがあります」
私が言うと、お父様は穏やかな表情で、「何だ?」とたずねた。
私は息を吐くと、口を開いた。
「なぜお母様は、シエラちゃんをあんなに嫌っているんでしょうか」
「⋯⋯」
お父様は黙っている。
「⋯⋯わからないよ。スーラ本人に聞いたらどうだ?」
「⋯⋯分かりました」
私はそう言うと、部屋を出た。
(お母様に、聞けるわけない)
私はそう思った。
◇◇◇
しばらくして。
「シエラちゃんっ!」
「⋯⋯何?」
私はシエラちゃんに声をかけた。
「いきなりでごめんね? あの⋯⋯」
私は首を傾げて、続けた。
「シエラちゃんって、もしかして学校行かせてもらってない?」
「⋯⋯私は、使えない娘だから」
(つまり行かせてもらってないってことー!?)
私はぐっと拳を握りしめた。
学校はめんどくさいけど、友達と交流したりできる素敵な場所なのに。
(行かせないとか、サイテー!!)
「シエラちゃんは使えなくないよ!? っていうか、行きたい? 私が行けるように手助けしてあげる!」
「⋯⋯ありがとう。でも、お母様が何ていうか⋯⋯」
「それは私がなんとかするから!」
(シエラちゃんと学校行きたい!!)
今はたまたま休みの期間で、本当は学校があるみたいなんだ。
それをお父様が、この間教えてくれた。
(結構お父様とも仲良くなったかな!)
私はニコニコしながらシエラちゃんを見つめる。
とうとう根負けして、シエラちゃんは小さな笑みを浮かべた。
「じゃあ、お願い」
「ぎゃあああ! 私の推し可愛⋯⋯」
ハッとして、叫びを抑えた。
「⋯⋯お姉様、面白い」
シエラちゃんはくすくすと笑っている。
(いやいや、その顔は反則でしょ!!)
私はそう思い、ジタバタしながらシエラちゃんを見つめていた。
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