第16話 刺繍
「シエラちゃんシエラちゃん、今日は何しよっか?」
「急に言われても⋯⋯」
シエラちゃんは戸惑いながらも考え始めた。
私は、思わずニコニコしながらシエラちゃんを見つめる。
「今日は、新しいことに挑戦してみたいな」
「いいねいいねっ」
私はぴょんぴょんと飛び跳ねながら、思いっきり頷いた。
◇◇◇
「新しいこと⋯⋯」
私はカーペットに寝っ転がりながら考えた。シエラちゃんもカーペットの上に座って一緒に考えている。
「そうだ! なにか作ってみるのはどうかな?」
「⋯⋯いいかも」
シエラちゃんは目を見開いて、コクっと頷いた。
「ちょーっと待っててねー! お姉ちゃんが見つけるからねっ!!」
私は棚の中をゴソゴソとあさり始めた。
「これはどうかな?」
私が取り出したのは、刺繍糸と刺繍針、そして刺繍枠。
名前の通り刺繍のキットだ。
「これを使って刺繍してみたら?」
「⋯⋯やってみる」
シエラちゃんは針と糸を手に持った。
「⋯⋯どうやるの?」
「ええっとね、まずは糸を出してね」
私が糸をそっと受け取ると、糸を束ねていた紐を取って先っぽを出した。
「これを必要な分切って、ほぐしてみようか」
シエラちゃんは小さな手で少しずつ糸をほぐしていった。
(かわいいーっ!! 真剣な表情も良い! 私もこんな目向けられてみたーいっ!!)
私がジタバタしていると、シエラちゃんは針を慌てて針山に刺して私に駆け寄ってきた。
「大丈夫?」
「うん! シエラちゃんが可愛くて、つい⋯⋯ごめん!」
私は勢いよく謝った。
シエラちゃんは戸惑いながらも、私の体を起こしてくれた。
「えっと、次は⋯⋯?」
「次はね、糸を張りに通すの」
私がお手本を見せようと、針の穴に糸を通そうとした。
(あれっ? おかしいな⋯⋯)
私がもう一度通そうとしたけど、うまくいかなかった。
「⋯⋯お姉様。私もやっていい?」
「良いよ!」
私がニッコリしながら言うと、シエラちゃんは緊張しながらも針に糸を近づけた。
(どうかシエラちゃんの手に針が刺さりませんように!)
「あっ、入った」
「えっ! 本当!?」
私が興奮しながらシエラちゃんの持っている針を見る。
たしかに針の穴に糸が通っている。
「シエラちゃん、すごい!!」
「⋯⋯ありがとう」
シエラちゃんは俯いているけど、耳が真っ赤だ。
「じゃあ早速刺繍してみよー!」
私ははしゃぎながらそう言った。
◇◇◇
「まず、この図案からやってみようか」
私はさっき見つけた枠に布をはめてから、床においてある図案を指さした。
シエラちゃんは布を受け取ると、図案を見ながら刺繍を始めた。
一針一針、丁寧に刺繍していく。
私なら途中で諦めてしまうのに、シエラちゃんはひたすら刺繍をしていく。
(私も、次の刺繍の図案を作っておこうかな)
前世、シエラちゃんの絵を描くためにたくさん絵の練習をしたから、絵は得意な方だ。
刺繍も割とやっていて、自分で図案を作ったこともあった。
私が図案をかいている間、シエラちゃんはただひたすら刺繍をしていた。
「⋯⋯完成」
「ほんと!?」
私はかきかけの図案を放り投げて、シエラちゃんの方へと走った。
「⋯⋯どう?」
「⋯⋯」
可愛い、ピンクのうさぎの刺繍。
私はじっとその刺繍をみつめて、そして顔を上げた。
「めーっちゃ、良い!」
「⋯⋯ありがとう」
シエラちゃんはふんわりとした笑みを浮かべた。
(ぎゃあああっ!! シエラちゃん、その顔反則!!)
私はまたジタバタしてしまった。
「と、ところで、この刺繍、何に使おうか」
「⋯⋯お姉様が決めて」
シエラちゃんは布をすっと差し出した。
「いやいや、シエラちゃんが決めていいんだよ!?」
「⋯⋯お姉様に、あげたいから」
私はとうとうその言葉に負けて、刺繍を受け取った。
「あっ!! この刺繍、シエラちゃんのうさぎのぬいぐるみに似てない!? お揃いだ!!」
「⋯⋯お揃いにしたくて、これを選んだの」
シエラちゃんは小さな笑みを浮かべてそう言った。
「じゃあ、ブローチにしてみようかな!」
私は布を切ってブローチに改造し始めた。
(次は自分のを作ってもいいんだからねっ! シエラちゃん!)
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