第12話 皇帝
私とシエラちゃんは皇宮の近くへ向かう。
私はシエラちゃんに明るく話しかけた。
「ねえねえ、シエラちゃんは何でここに来ようと思ったの?」
「何でかわからないけど、あそこが気になって⋯⋯」
(なるほどなるほど。やっぱり無意識に惹かれてるのかぁ⋯⋯)
私はうんうんと頷く。その横でシエラちゃんがこてんと首を傾げた。
私はその可愛さにキュン死しそうになるのをなんとかこらえながら、皇宮の前の方へ向かった。
◇◇◇
「ここまでしか行けないみたい」
「そっか⋯⋯」
少し近くまで来たら、門番がいてこれ以上入れなかった。シエラちゃんは少しがっかりしたように肩を落とす。
「もう少し近くまで行けば分かると思ったのに⋯⋯」
「ん?」
(何が分かるんだろう⋯⋯)
とにかくもう少し行きたいというシエラちゃんの願いに応えたくて、私はうーんと考えた。
(あ、ダイヤモンドをあげたら入らせてくれたりして?)
試してみようと思って、私はずんずんと門に近づいていった。
「おい、お前! 何してる?」
「皇宮を見たくて」
私が言うと、門番が睨みつけてきた。
シエラちゃんが慌てて走ってくる。
「⋯⋯! この人は⋯⋯いや、まさかな⋯⋯」
門番がなにか言っているけど、私は無視してダイヤモンドを取り出した。
門番は目を見開く。
「こちらをあげるというのは?」
「な、なんだ、そういうことか⋯⋯入っていいぞ」
(あれ? 受け取らずに入れてくれた⋯⋯?)
私は不思議に思いながらも、中に入っていった。
そこは大きな庭のようになっていて、大きな建物がいくつか並んでいた。
私はシエラちゃんに向かってこう言った。
「シエラちゃん、」
言いかけて、やっとシエラちゃんの表情に気がついた。
驚いているような、戸惑っているような。
「⋯⋯ん? なあに?」
シエラちゃんがやっと気がついて、こちらを見た。
「なんでもない!」
「⋯⋯?」
不思議そうな顔をしながら、シエラちゃんがポツリと呟く。
「ここ、なぜか見覚えがあるの。初めてのはずなのに⋯⋯」
「そうなんだ⋯⋯」
その時。後ろから肩を掴まれた。私は瞬時に振り向いて、その人を見る。
その男の人は私を静かに睨みつけた。
「侵入者か?」
(あ、すぐ入らせてもらえたけどここって入っちゃ駄目な感じだった⋯⋯?)
「お姉様⋯⋯!」
シエラちゃんが駆け寄ってくる。それを見て、男の人はぴたりと動きを止めた。
「エレナ、なのか⋯⋯?」
(は? シエラちゃんですが)
私は心のなかで厳しく訂正する。
「いや⋯⋯そんなはずは⋯⋯でも、この顔立ち⋯⋯」
男の人はさらに近寄って、シエラちゃんに手を近づけた。
「あの! 私のシエラちゃんに触らないでもらえます? あとエレナって⋯⋯」
そうたずねると、男の人ははっと我に返った。
「⋯⋯『私の』?」
「はい、私の妹ですが?」
私がさらに口調を強めてシエラちゃんをこちらに引き寄せると、男の人は寂しそうに言った。
「そうか⋯⋯今は、そうなんだな⋯⋯」
「あの、さっきからどういうことですか?」
私が少しイライラしながら言うと、男の人は「紹介が遅れたな」と言った。
「私はこの皇宮に住んでいる皇帝だ」
(⋯⋯え?)
私の耳に想像もしていなかった言葉が飛び込んできた。
「ええっと、今なんて⋯⋯」
「だから、私が皇帝だと」
(ええ⋯⋯)
私はありえないと思った。地面に座り込みそうになるのを必死に堪えた。
(あ、でも確かに皇宮だから⋯⋯って納得しちゃだめ!)
私は皇帝に向かってこう言った。
「あの、エレナってどういう⋯⋯?」
「七年前、行方不明になった私の娘だ」
七年前。七年前と言ったら、ちょうどシエラちゃんが生まれたくらいだ。
ってことは⋯⋯。
「その子は母親に似たんだ。白髪に青の瞳。その子の泣く声、顔立ちははっきり覚えてる」
やっぱり⋯⋯。
シエラちゃんは、もしかして⋯⋯。
「その時の顔にそっくりなんだ」
シエラちゃんは、やっぱり皇帝の娘なの?
お読みいただきありがとうございます。




