|海の皇帝《レヴィアタン》
カリファの言葉に驚く一同。
ザックス「海の皇帝ッ?!!!」
世界三大恐慌。
『不死の王』『最古の龍』そして、『海の皇帝』である。
いずれも過去数百年は活動が見られず、人間界は平和であった。
過去に何度か三大恐慌は色々な国で暴れ回っていたが、その度に数十万もの人間の命、そして魔族の命が失われていた。
この内の一柱でも動いたなら、緊急事態宣言が発令されることとなっている。
そして今回、数百年振りに発令されたのだ。
海の皇帝が人間界で暴れていると。
ここ数年でも目撃情報はあったが、直接被害を被る事はなかった。
だが、カリファの話では今回、人間の船を襲ったようだ。
幸いな事に死者は出なかったが襲われたのは事実。
海岸軍用基地の海軍の所有する軍船が破壊されたのだ。
その船を運転していた船長曰く、航海の訓練をしていた所
突如襲われたとの事。
まだ近海にいるようで厳戒態勢がしかれている模様。
三大恐慌ともなるとS級ランクでも手に余るとのこと。
過去に不死の王にS級が5人当たってようやく引かせることができたとの事。
今の人間界にも5人のS級がいるが、すぐに招集する事が叶わず今回はSS級である二人に退治を頼みたいとの事。
海の皇帝の話が一通り終わるとザックスや
門兵達の顔面は蒼白していた。
一般人からすと三大恐慌なんておとぎ話のような話である。
ここ数百年現れなかった事もあり、風化されつつあったのだ。
しかし、過去に三大恐慌が起こした悲劇は学校の授業で誰もが習う。
そして、今その悲劇が再び怒ろうとしているのだ。
ザックス「海の皇帝が過去に起こした惨劇の一つ・・・・・・怒り狂った海の皇帝は大津波を起こした。その津波の高さは数百メートルとも言われています。
何万人---いや、何十、何百万人もの命が失われたと聞きました。魔法使い達が総出で大津波に魔法を放つも、海の皇帝の威力には適わず無駄になったと聞きます。
それを、我等が主であるゼノン様とメフィ様の二人だけに任せると言うのですか?!!!」
先程のカリファの話が本当なら、ザックスの言う通り二人で
対処する事となる。
いくらSS級とはいえ、相手は正真正銘の化け物だ。
それを二人で相手にするなど無謀だと誰もが思っていた。
そして、それはお願いしているカリファも気持ちは同じであった。
しかし、上の者---つまり国王からの勅命なのだ。
S級の5人も招集しているがセレスとロベルト以外の三人は、他の国との国境を守護している為、戻す事が出来ないとのこと。
さぞ恐ろしい事だろう。
カリファはゼノンとメフィに申し訳なく思う。
しかし、ゼノンとメフィの顔は依然として無表情である。
ザックスや側近達の顔を見ると恐怖で顔面蒼白であった。
これが正しい反応だ。
カリファは疑問に思い首を傾げていた。
そんなカリファの表情で理解したメフィがゼノンに小声で囁く。
メフィ「ねぇ、ゼノン? 皆の顔を見るに私達では勝てないと思われてると思うよ? 哀れんだ目をしてるもん」
メフィの言葉に驚くゼノン。
だが、今思えばこれが当たり前なのだと気付く。
以前レイラに聞いた事があるが、三大恐慌は人間達からすれば恐怖の象徴である。
ゼノンはその三大恐慌全てと戦い軽く倒し、傘下に治めているのだ。
そう三柱共だ。
つまり、海の皇帝もゼノンの配下なのだ。
そして、地上に住む生き物は襲わない約束を過去にしている。
そこが不思議だったのだ。
ゼノンは別に恐怖で黙っていた訳では無い。
何故、あの海の皇帝が人間を襲ったのか考えていたのだ。
ゼノンの配下となってから三大恐慌は三柱とも大人しくなっていた。
急に暴れるなど絶対何かあったに決まっている。
それがゼノンは気になっていたのだ。
ゼノン「ふむ。なるほどな。カリファと言ったか? その任務引き受けよう。しかし、私とメフィの二人で十分だ。他の者達では足でまといになる故にいらぬ」
カリファ「えっ?!」
ザックス「なっ?!!!」
ゼノンの突然の言葉に驚く一同。
それはそのはず。
本来なら国家戦力を持ってしてでも迎え撃たなければならない。
もし、海の皇帝が攻めてきたならそうなる。
だが、今回はこちらから討伐しに行くのだ。
その為、少数精鋭で向かわせ様子を見させる手筈となっている。
つまりは決死隊である。
本来ならこの任務を断るはずなのだ。
カリファだってもし、この任務を頼まれたら逃げて隠れるだろうと思っていた。
それなのにゼノンは真顔で二人で行くと言っている。
恐怖のあまり、おかしくなってしまったのだろうかとカリファは思う。
カリファ「ゼ、ゼノンさん? あの、分かっていますか?!!!
海の皇帝ですよ? 三大恐慌の一柱ですよ?!
頼んでいる私が言うのもおかしいですが断らないのですか?!」
思わず本音が出てしまったカリファ。
なんたってゼノンはいつまで経っても落ち着いたままなのだ。
むしろ、頼んでるカリファの方が慌てふためいているのだ。
しかし、この言葉を投げかけてもゼノンの態度は変わらなかった。
ゼノン「うむ。さっきから何度も聞いたぞ。断ればセレス達が行かされるのであろう? なら私が行く。悪いがメフィ、私はこのまま海の皇帝の元へ行く。故に皆に出掛けると伝えておいてくれるか?」
いくらセレスが人間界ではトップレベルでも海の皇帝の前では歯が立たない。海の皇帝の強さはゼノンがよく知っている。
セレスはまだまだ子供達の為にも生きていてもらわなければならない。そして、ロベルトも同じである。
よってゼノンが一人で行く。
しかし、メフィは、
メフィ「家族には今伝えてくるわ。でも、今回は私も一緒に行く! 私達は夫婦であり共にSS級でしょ? それに、私ならゼノンの足を引っ張る事は無いはずよ。そうでしょ?」
微笑みながらそう話すメフィ。
ゼノンも少し考えた後、たまには夫婦で任務するのもいいかと思い了承した。
という事で、家族へはザックスからただ出掛けるとだけ伝えてもらいゼノンとメフィはすぐ様海の皇帝がいるとされる海岸軍用基地へとカリファの案内の元向かうのであった。
「面白いな、続きが読みたいなと思ったらブックマーク、高評価をお願いします。そして誤字脱字や意見などあったら是非コメントしてください。」