海軍基地
カリファの乗ってきた馬車に一緒に乗るゼノンとメフィ。
海岸軍用基地はここより、凡そ半日の距離の距離にあるとの事。
ゼノン「ふむ。悪いがそんなに時間は掛けられぬ。子供達が待っているのでな。転移」
御者の叫び声が聞こえる。
そして、微かに聞こえる波の音に潮の香り。
カリファは慌てて馬車から顔を出す。
カリファ「な、なんだと?!・・・・・・こ、ここは海岸軍用基地
・・・・・・ありえない・・・・・・転移魔法は太古の魔法であり、失われた魔法の一つ・・・・・・それを使える人間が・・・・・・ありえない」
突然の事に驚きを隠せないカリファは一人でブツブツと呟いていた。
そんなカリファを気にすることなくゼノンとメフィは馬車より降りる。
メフィ「これで半日分、短縮できたわね」
ゼノン「うむ。せっかくの子供達の休みだ。こんな事で時間を潰している暇はない。カリファ、行くぞ」
いつまでも放心状態になっていたカリファはハッとして、馬車から飛び降りゼノンとメフィと共に海岸軍用基地へと向かう。
ここの海岸軍用基地は人間界一の海軍と言うこともあり規模はデカかった。
そして、何やら海兵達は皆が慌ただしく走っている。
海辺には土塁が高く積まれており、魔法使い達も配置されていた。
だが、こんなものでは役に立たない。
ゼノンにはわかっていた。
今生きている人間達は三大恐慌の恐ろしさをわかっていない。
ゼノンとメフィはカリファに連れられ、ここの海軍基地の
本拠地へと足を運ぶ。
入り口で兵士に話をつけると中へと案内される。
カリファ「王の勅命により、SS級冒険者であるゼノン殿とメフィーロ殿を連れてまいりました」
部屋の中には強面のおっさん達が軍議を開いていたようで、皆が机で話し合いをしていた。
そして、奥の真ん中にいる老練が恐らくここの指揮官である。
フーデル「よく来てくれた。ワシが海軍総司令官を務める
フーデル大将と言う。ゼノン殿とメフィーロ殿の噂は耳にしておる。お前達の様な手練がいた事に感謝する。悪いが手を貸してくれぬか?」
フーデルに対して中々の好印象を持つゼノンとメフィ。
立場に自惚れることなく、冒険者である自分達にも敬意を払うその姿勢。
何故、フーデルがここの総司令官である事が伺える。
恐らく強さだけではなく、その人柄もあるのだろう。
ゼノン「うむ。話は既に聞いている。すぐに向かうがよろしいか?」
「おいッ!!! フーデル様に対してその口の利き方はなんだ!!!
冒険者風情が立場を弁えろ!!!」
突如声を荒らげるその男は、割と若そうな男であり意地の悪い顔をしている。
どこにでもこういう人間は一人はいる。
だが、この男の言い分もわかる。
カリファも敬語を使っていたように、人間界は冒険者よりも
国の兵士達の方が立場は上である。
そして、ここに居るフーデルは海軍大将でありトップの人間なのだ。
つまり、今回の件についてはゼノンに非があった。
そこでカリファも慌てて頭を下げる。
カリファ「も、申し訳ありません!!! この二人は実力は間違いないのですが礼儀作法は疎いのです。冒険者であるが故に、そこは何卒ご勘弁を」
カリファの言葉に舌打ちをする先程の男。
そして、周りの将校達も同じ思い出あったようでゼノンを睨んでいる者ばかりであった。
最悪の空気である。
しかし、ゼノンとメフィは相も変わらずポーカーフェイスである。
そして、この空気を和ましてくれたのがフーデルであった。
フーデル「今は緊急事態故に、口調までとやかく言うことはあるまい。ゼノン殿の言う通り、早速で悪いが頼めるか?」
フーデルの言葉に頷くゼノン。
そして、
フーデル「海の皇帝についてだが、その者が実際に船に乗っており被害を受けた者だ。話はそのボレロ少佐に聞いてくれ」
フーデルが指差す先には先程、ゼノンに突っかかってきた男がいた。
ボレロ少佐。
先日、航海の訓練をしている時にたまたま海の皇帝にやられたボレロ少佐。
少しの怪我で済んだが、船は全壊した。
ボレロ少佐「冒険者二人にあれを倒せるとは思わないが、せめて死ぬ前に教えといてやろう。やつの恐ろしさを。怖くなったら
このまま逃げてもいいんだぞ。後は俺が引き受けるからな」
相変わらず嫌味ったらしくそう話すボレロ少佐。
フーデルも何やら頭を抱えている。
フーデル「皆の者、軍議は一旦休憩としよう」
フーデルの言葉に皆が外へと出る。
そして、ゼノン達も外へ出ようとしたのだが、フーデルに呼び止められた。
皆が出るのを見計らうとフーデルは再び口を開く。
フーデル「すまぬなゼノン殿。ボレロ少佐は教皇の親戚であり
コネの様なものでこの地位についたのだ。実力も中の下、そして性格もあの様にひん曲がっておる。しかし、教皇の後ろ盾があるせいで追い出すことは不可能。お主達には面倒をかける。大将として謝らせてくれ。申し訳ない」
そう言って頭を下げるフーデル。
なんともフーデルも不憫である。
そして、ゼノン達は雑魚の小言などこれっぽっちも気になどしていない。
ゼノン「大将というのも大変なのだな。お前が気にする事はない。そして、謝る必要も無い」
ゼノンの言葉に慌てるカリファ。
大将に対してお前呼ばわりしたのだ。
下手をすると不敬罪で打首ものだ。
現にフーデルも驚いている。
メフィに至ってもやれやれといった感じだ。
またしてもカリファがゼノンの尻拭いの為に何度も頭を下げる。
当の本人であるゼノンに至っては、何故カリファが謝っているのかもわかっていない様子だ。
フーデル「ガッハッハッ!!! よいよい。冒険者にいちいち敬語など求めたはせぬ。それに、先程も言ったが今はそんな事言っている場合ではない。今こうしている間も海の皇帝はここを、いや人間界を滅ぼす準備をしてるやもしれぬ」
フーデルの人柄に感謝するカリファ。
しかし、ゼノンは何やら厳しい顔をしていた。
それにはメフィも気付いており、珍しいとも思った。
ゼノンの力ならチャチャッと殺せるはずなのにと。
この時はまだメフィはゼノンと海の皇帝が主従関係であることを知らなかったからだ。
メフィ「どうしたのゼノン?」
ゼノン「いや、恐らくだがこの事件はそんなに簡単な話ではないだろう。私の予想が正しければボレロとか言う男を処罰する事になるやもしれぬぞ」
ゼノンの言葉に驚く一同。
一体どういう事なのか。
その答えはゼノンにしか分からなかった。
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