操り人形
全ての料理に満足し、平らげお金を払い店を後にする。
帰りも皆で仲良く歩いて帰っているとムムが、
ムム「ねぇお父さん?そういえば、校長先生をご飯に誘ってみたの! でも、断られちゃった・・・・・・校長先生は忙しいのかな?」
ゼノン「セレスをか・・・・・・ふむ。なるほど。後で私が行ってみよう。ムムは本当に優しいな」
ムムの頭を優しく撫でるゼノン。
先程まで暗い顔になっていたが、一瞬で笑顔に変わっていた。
家に着くとゼノンはすぐ様、セレスの元へと転移した。
校長室に着くとやはりセレスは居り、もう慣れたのか特に驚いた様子はなかった。
セレス「ゼノン様、本日はどうなされましたか?
今日は頑張った子供達と過ごしてあげた方がいいのでは?」
ゼノン「うむ。その子供達からの願いでな。ご飯に誘ったが断られたと」
ゼノンの言葉に苦い顔をするセレス。
セレス「その事でしたか。ムムさんには申し訳なかったですね。行きたいのは山々なのですが、私はムムさんの学校の
校長であり教育する立場にあります。仮に、私がムムさんの家へ食事に招かれたとすると他の生徒に知られた時、不公平を覚えられてしまうでしょう。その為、お断りせざるを得なかったのです。ムムさんには改めて謝って頂けますか」
セレスの言葉は最もである。
確かに他の生徒に知られでもしたら、セレスはムムを贔屓している等、良からぬ思考を持つ生徒が増えるかもしれない。
だが、ゼノンは・・・・・・
ゼノン「うむ。断る。」
まさかの、ゼノンの言葉に驚くセレス。
だが、続いてゼノンは言葉を述べる。
ゼノン「お前がムムの誘いで来れないのは知っていた。
だから、私が来たのだ。ムムの先生としてではなく、私の愛弟子を食事に誘いにな。セレス、我が家へ食事に来ないか?」
ゼノンのあまりにも独善的な発言に思わず驚くセレス。
だが、その言葉にセレスは嬉し涙を流していた。
初めてのゼノンからの食事への誘い。
幼少期より尊敬し、敬愛していた師匠からの誘い。
セレスは純粋に喜んでいた。
セレス「ふふふっ、そうですか。ムムさんの先生としてではなく、師匠としてですか・・・・・・ありがとうございます、ゼノン様。このセレス、ゼノン様のお言葉に甘えお呼ばれさせて頂きます。」
セレスの言葉に満足したゼノンは頷く。
ゼノン「うむ。では、早速だが明日の夜はどうであろう?」
セレス「明日の夜なら私も空いております。」
ゼノン「なら明日の夜にまた迎えに来るとしよう。いきなりの訪問済まなかったな。今日は本当におめでとう。
お前を弟子に持ち、私は誇らしく思う。ではまた明日なセレス」
そう言うとゼノンは転移であっという間に消えていった。
セレス「誇らしく思う・・・・・・ですか。私もゼノン様に出会えて本当によかったですよ。貴方に出会えなければ、今の私はありませんからね。過去も今も私が愛する方は貴方だけなのですから」
セレスは生涯独身である。
それは、ゼノンを愛してしまったが故にだ。
ゼノン程完璧な男は居らず、そしてゼノンに想いを伝える事が出来なかったからだ。
だが、セレスはこれで良かった。
ただただ、ゼノンを思うだけでセレスは幸せなのだ。
少し思いに耽けると、セレスは明日の食事を楽しみに、仕事に励むのであった。
その日の夜、とある屋敷にて。
教皇「おい、何故直ぐに薬を飲み倒さなかった? 初めから飲んでいれば勝てていたのではないか?」
ミネロヴァ「す、すみません父上。自分の力でどこまでやれるか試してみたくて・・・・・・父上の言葉に反した事、謝罪します。本当にすみま「バチンッ!!!」んッ?!」
ミネロヴァが話している途中で頬をビンタする教皇。
その目は最早、子に向けるような目ではなかった。
冷たく、恐ろしい眼光で睨みつける教皇。
教皇「お前の様な子を持ち、父として恥ずかしく思う。
私の言う事も聞かず、無様にまた負けた。
去年約束した筈だ。今年こそは勝つと。
お前のせいで私の面子は潰れた。どうしてくれる?
私の仲間が私の元を離れたらどうしてくれる?
全て貴様のせいだ。」
教皇の言葉にただただ謝るミネロヴァ。
幼くして母を亡くし、頼れる親は父のみとなった。
気付けばミネロヴァは教皇の言われるがままの操り人形となっていた。
だが、今回は父に反してしまった。
いや、反抗したわけではない。
ただ自分の力でどこまでやれるか試したかったのだ。
だが、それが間違いであった。
自分の思いがかりで父を失望させてしまったのだ。
ミネロヴァは深く反省していた。
ミネロヴァ「父上、本当にすみませんでした。来年こそは
必ずや父上の期待に答えてみせます」
教皇「来年で貴様の学生課程も終了する。終われば魔法局で働くのだ。今はロベルトとかいう小童が局長をやっているが時期局長はお前がなるのだ。その為にも、負ける訳にはいかぬのだ。その事を重々頭にいれ、魔法により一層励め。
お前はただ、私の言う事を聞いていればいいのだよ。
わかったな?」
父の言葉に答えるミネロヴァ。
そう。自分は父の言う事さえ聞いていればいい。
そう頭を切り替えるミネロヴァ。
少しでも自我を持ってしまったのが間違いだったのだと理解した。
ミネロヴァには友達はいない。
学校が終われば直ぐに魔法の訓練である。
それを約17年間繰り返してきたのだ。
楽しく学校生活を送る者も居れば、こういった孤独に過ごす生徒も居るのであった。
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