070 辻妻を合わせに
担当:四葩
ーーーー時は遡るーーーー
ロートに新たな義眼を造るためルイ達が部屋を出ていった入れ替わりにヤオが入ってきたので、わたしはロートを連れて隣の部屋に移動した。
部屋にはわたしとフードを外したロートだけ
先ほどまで細々した話で盛り上がっていたわたしたちだけど元々お互いが無口な気質だからか沈黙が部屋に広がっていた。
「緊張しているの」
シナから受け取った球体を嵌め終わったあたりから続く手の震えに目を向けて
一言尋ねればハッとしてこちらに目線を合わし、やがて小さく頷いた。
「そうよね、緊張してしまうわよね。わたしもそうだったし」
あの檻で生涯を終えるのだとずっと思っていたわたしに降ってきたひとつの奇跡
「エルも呪石を持っていたの…義眼には見えないけれど」
じっくりと瞳を覗き込まれた。
「違うのよ。わたしは首輪なの、紫の石がついていたわ」
ずっしりと重たい感覚を未だこの首は覚えている
「ふぅん…アンジェたちと出会った時とか呪石がなくなった時とか…どうだった」
「そうねぇ……」
ぽつりぽつりと口下手なりにあの時のことを話していく。そのゆっくりとしたペースでも耳を傾け聴くロートは聞き上手なのかもしれない
呪石が外れ旅の一員となった後のことも気づいたら話していた。
「そんなことがあったんだ。あとキメラとか竜とか空想上のものだと思ってた…エルもエルフなのよね確かにちょっと耳が長いし」
「ここに来るまでの経緯は今話したぐらいかしらね…よくよく考えるとどの国でも事件が起こっているわね。この国も少しおかしいみたいだし」
きっとそれは呪石のせいなのだろう
「ロートは呪石を人にもらったと言ったけどどうやって知り合ったの」
果物屋の娘が呪石を使った精巧な義眼をもらった経緯が気になる
「えぇと…その…よく覚えていないの」
「覚えていないって…」
「その義眼をもらう前の生活が霞みがかっているの…どうして今まで気にしてなかったんだろう…おかしいわよね」
それはこの国に起こっていることと同じじゃないかしら…呪石の影響で
「あぁでも、そうよ。父さんが連れて来たんだわ…でも家じゃないわ…もっと広い場所 。わたしがお気に入りの黄色いドレスを着ていた日」
ロートが次々に発する言葉に違和感を覚えた
義眼の製作者を連れてこれた果物屋の店主
庶民であるはずのロートがドレスを着ていた
果物屋はそんなにも人脈があるものなのか
この国は庶民にもドレスを着る習慣があるのか
それと
誰も顔のわからないこの国の王
辻褄が合う
果物屋の店主が王ならば
王に娘がいるのなら
「ロート王宮の図書館にいきましょう」
きっと王女の誕生についての記事ならあるでしょう
アンジェに書き置きしておくのを忘れていたことにエルが気づくのは
すでに王宮の図書館に着いたときだった




