062 少女捜し
担当:四葩
「こんにちは、店主」
「いらっしゃいませ。おぉ昨日の旅の方」
ヤオが話しかければ快活な笑顔で店主が出迎えてくれた。
「リンゴ美味しかったです。流石産地から選んでいるというのが頷けますね」
「そうかそうかっ!いやぁ舌の肥えていそうな旅の方に気に入ってもらえたのは果物屋冥利につくねぇ」
少女の事を訊きやすくするためかヤオは店主と世間話を続ける。
いったいいつ頃リンゴ食べたのかしら
お土産にと袋ごとリンゴをこちらに渡していたから帰ってからは食べてない気がするけど……
あっでも食感とか味についても話し合ってるし、食べ歩きでもしたのかしら
ヤオって物腰がやわらかいけどそういうとこがあるのよね。品性を持ちながらも粗野な面ももつみたいな
「あぁそうそう後ろのこの子がですね。ここのロゴが入った袋いっぱいにリンゴを持った少女にぶつかってしまいまして…折角のリンゴが落ちて傷んでしまったんじゃないかと謝罪をしたいそうなんです。フードを目深に被った少女なんですけど……心当たりはありませんかねぇ」
「すみません旅の方。それは答えられない質問だね」
「知らないじゃなくて、答えられないなのね」
エルが唐突に問い掛けた。
こういう時基本自分から話始めないからちょっと驚いた
エルの指摘通りきっと知らないわけじゃないのよね店主は、隠すのは何のためなのかな
「ウチはね。売ってるのは物だけさ、目に見えないもんは売らない主義でね。もちろん貴女方が人捜ししてるってことも他の客には言わないさ」
「そうですか……残念です。しかし、店主の個人を守る考え方は素晴らしいと思います。対人商売ならではですね」
「そう言っていただけて嬉しいです」
巧くヤオが場を繋げてくれたから険悪にならずにすんで良かったわ。敵はつくりたくないし……でも振り出しに戻っちゃったわ
「しかし、店主。私が買い物に来ていてばったり出会すのは宜しいですよねぇ。偶然ですから」
「ん……あぁそれは大丈夫ですよ。偶然ですから。来るという保障はありませんがね」
「はい。私はあくまでも美味しい果物屋がほしいだけですからね」
ニヤリを悪い顔している自覚はあるのかしらヤオも店主も
でも、一縷の希望はありそうね。あとはルイ達が情報を集めてくれればいいな
人気のない路地裏を歩く少女が歩き馴れた道を悠々と進む。
不意に被っていたフードが風に煽られそうになるのをしっかりと押さえた。
今はまだ、違うわたしになっちゃ駄目
彼女か彼かわからないけど、
何をして何を考えているかもわからないけど、
わたしじゃない誰かがココにいるのだけわかる
フードをぎゅっと握り締めた。
次回は2週間後です!




