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少女と呪石とほどほど人外  作者: 宮居/四葩
第1章
15/80

014 逃亡

担当:四葩

獣道さえない木々の間をひたすら走る。

ファネスが開いた西門の先は昼間でも鬱蒼と茂る木の陰で薄暗く、不気味だ。


「ここまでくれば大丈夫でしょう」

シナが足を止める。

ちょうどアンジェの体力も限界になっていたところだった。


呪いで速く走れても…体力がついていけない…


シナもエルも多少息が上がっていただけで止まってからはすぐに息は整えられていた。


こっちはまだ上がった心拍を抑えるようと深呼吸を繰り返しているのに



「……ふぅ、お待たせ。もう大丈夫」

こちらを窺っていた二人に声をかける。

「待ち合わせの場所までもう少しで着くけど、出来ればギリギリに着きたい。今の最短ルートじゃない別のルートで行くけれどいいかしら?」

「それでいいわ。長く留まって国の奴らに見つかりたくないし」

頷き返すとシナはエルを見る。

「それでいい」

エルの了承も得て、先ほどよりも緩いペースで三人は森の中を進んで行った。




「何か来る」

エルが後方を見つめながら呟いた。

「国の奴ら?」

固い声でシナが問うがエルは首を横に振る。

「もっと小さい気配……しかも一人分」

ガサッと低木が揺れ三人の中に緊張が走る。

「お姉ちゃんみーつけたっ」

出て来たのは、自称あたしの弟らしいガキだった。



「誰なの」

エルはあたをは見つめてニヤニヤしている奴を睨む。

「僕はルイス・ログリール。お姉ちゃんの弟だよ」

チッ

あたしの舌打ちにエルがチラリとこちらを窺うが気にしない。そんな奴、弟なんかじゃない。あたしの兄妹は兄様だけなんだから

「敵じゃないなら、いい」

ルイスから興味を失ったように歩き出すのにあたしも続いた。

「シナ、どうしたの?」

未だ留まったままのシナに振り返ると神妙な顔つきをして何か呟いていた。

「……何故追って来れた」

「お姉ちゃんの気配を追ってきたんだよ」

シナの鬼気迫る様と呑気に応えるルイスとの間に温度差が生じている。

「そんなことが可能なの……呪いも使わずになんて」

納得出来ずにいるシナに同情する。あたしだってコイツの探知能力(あたし専)や神出鬼没さには鳥肌ものだし

「愛の力さっ」

ぞわぁ

鳥肌が凄いことになった。本当気持ち悪い

「愛?……そう、なるほど愛とは凄いわね」

ねぇ……待ってシナ、まさか今ので納得してしまったの。止めてお願いだから

……ルイス覚えてろよ



「お姉ちゃん」

「………」

「ねぇお姉ちゃんってば~」

「……黙れ」

さっきからこの状態で沸々と苛立ちが上がる。コイツはあたしを苛立たせる天才か、ここまでくるともう賞賛したくなる……まあしないけど


「しりとりしよう。リンゴ酢」

「……」

「…菫」

あたしが無視し続けるとアイツの纏う空気がどんどん重苦しくなる。それに堪えられなかったエルが答えるとパァと空気が軽くなった。

心なしかシナの横顔が安堵した顔つきになってるが、エルの恨みがましい視線が背中を刺してる。どんな我慢比べだ。これ

「レンズ」「頭痛」「臼」「炭火」「微雨」「憂さ晴らし」「師走」「芒」「鱚」「彗星」「椅子」「ステビア」「アンジェ」

後ろを歩いていたアイツがあたしの前に回り込んであたしの名前を言う。そりゃあもうニッコリと笑って

「うぐっ」

何故殴ったのかって、そんなのそこにアイツの頭があったから


つまり、殴ったのは反射的だった




「着いたわ」

シナが足を止めたのは特に何もない場所。

「シナ、貴女の友人が来る前にエルの首輪を外しましょう」

これで石が手に入る。やっと兄様を生き返らせるのに近づく

「そうね。少し離れていて」

あたしが離れるのを確認するとシナが首輪にそっと触れ、呪いを唱える為に口を開いたその瞬間、

「お姉ちゃんっ」

背後にいたルイスがあたしを押し、前にいる2人に突っ込む形で全員が倒れた。

「なにすんのよっ」

ふざけるな

最後の一言が言えなかった。

木の葉を眺めるように仰向けになったあたしの上に何が一直線に飛んだ。そう思った時にはダンッと森に硬質な音が響いた。


「アンジェ、君の弟君は凄いな。よく気が付いた……しかし残念だ。苦しまないよう一発で仕留めてあげようとしたのだが」


出てきたのはカティだった。後ろに四、五人の兵士が控える。

「さあアンジェ、エルを返してもらおうか。シナも、奴隷のお前が何をしている」

あたしの下敷きになっている二人の体が強張っていた。

「呪いで動きを止められるわよね」

「無理だ。兵士の中に術師がいる……城での案内はずっと同じ使用人だったでしょう。あれは客人が呪いを使うかを見張っていたの」

小声でシナに頼むが、首を振られた。シナの視線は一人の兵士、あの使用人だけを見つめていた。


どうすれば、いい。このままじゃエルが、首輪が奪われてしまう

「そんなの許せない」

ゆらりと立ち上がったアンジェは短剣を握りしめていた。シスターの形見、ファザが渡してくれたもの

構えなんて知らない。ただ真っ直ぐに刃先をカティに向ける。

「貴方たちは力を持ち過ぎ、奪いすぎた。だから……『よくぞ、言った。娘御』

ブワッと突風のようなものが視界を遮る。現れたのは、獣

合成獣キーラ

『約束は守られた。ならばこちらも役割を果たさなければのぅ』

あたしの横からカティらに進み出る。

『行け、此奴らは引き受けよう。報復せねば森の首領として立つ瀬が無い…あの水槽で回復したしな。愚かな者どもよの』

振り向いて軽くウインクしてきた。

似合わないな…あの厳つい顔じゃ

違和感が凄すぎる

「ありがとう。シナ、エル行くよ」

背を向けてシナとエルを引っ張り上げる。

『似合わないとは失礼じゃな…娘御』

心読まないで

『先ほどの言葉の続き“あたしに寄越しなさい”は聞かれぬようにな』

「わかってる」

「アンジェ、どうしたの」

声に出ていたらしくシナが窺わしむ

「なんでもない。それより友人に連絡して」

「それは大丈夫。この先にいるわ」

そうきいて安堵した。

『達者でな。アンジェ、健闘祈る』



合成獣の声の後唸り声が響いた。


成し遂げなければ、すべては兄様のために



申し訳なかったです……、遅れたのは莱梛の所為ですはい。

次回は忘れず更新します。→5月1日 20時

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