015 幕間[#1]
担当:宮居
小走りで奥へと進む。
皆、黙ったままだ。
「……うん、少し遅れたけど……」
と、数分経ってシナが呟いた。恐らく友人に連絡を取っているのだろう。向こうから連絡が来たのか。シナの頭上に薄らとだが、鎖が見える。
「シナ!」
前方から、声が聞こえた。
「ルイ!」
シナが応じる。
身長はそこまで高くない少女。
短く、真っ黒な髪。そして真っ赤な目。
首元にも同じ赤色の何かが見える……。紋章か、なにかか。
「無事で良かったよ、シナ。なかなか来ないから心配した」
「ごめんね。この遅れの所為で計画に支障が……とか、ないよね?」
「バックは大丈夫。だから突然の邪魔が入らなければ、ね」
「奴ら……とか?」
「……君が、アンジェかい?」
2人の会話に割り込んだ。
睨まれてる……?
こちらに寄ってきた。なにをするのか、と身構えたのだが、
「そんなに構えなくても、シナを助けてくれたんだ、悪いようにはしない。オレはルイ・クレイアイナ。ご協力、感謝する」
と手を差し出した。これは、握手しろ、ということか?
「……アンジェ、ログリール」
事を荒立てても仕方ない、と手を握る。
ルイは満足そうだ。そしてシナの方を向く。シナがエルを紹介しようとして、
「そこにいるのは」
ルイがそれを遮った。
「例のエルフか……」
「ねぇ、そろそろその首輪、外せない?」
ルイはエルの事を歓迎していないようだ。興味がないわけではないだろうが……。
無関係な人からすれば、エルフは敵寄せだからな……邪魔だと思うのも、仕方ないが。
空気が重くなるのを感じ、エルの首輪を指さしながら言った。
「……そうだね。外さないと」
シナが応じる。
ルイはエルをじっと見ている。
エルを木の影に座らせ、シナが首輪に手を触れた。
「痛くは、しないから」
シナが目を閉じ、再び開けたその瞬間に、いつもの灰色の鎖とは違う、綺麗な紅色の鎖が、シナとエルを纏った。
「........……」
シナが呪文らしきものを唱えている。何を言っているかはわからない。
パリンっ。
「外れた」
「……ありがとう。感謝する」
エルがお礼を口にする。
「これで1つ目。やっとだ」
シナから首輪を受け取る。紫色の綺麗な石ははまったままだ。しかし少し弄ると簡単に取れた。
石だけをバックにしまい、要らない部分は捨てる。
「これ、僕が貰ってもいいー?」
落とされた破片を、邪魔が弄ってる。
勝手にしろ、と思った。
他の3人も何も言わない。
……やれやれを……にしても1つの石を得るのに、こんなに時間がかかるとは……。
それでも、やりきるけどね。
すべては兄様の為に。
「さて、これからどうする?」
それぞれの目的は達成した。
エルはこれから故郷に帰ればいいし、シナは友人に会うことが出来た。
「ちょっといいか、アンジェ」
「ん、え?」
目が眩んだ。ルイを突き飛ばし、大勢を整える。
「お姉ちゃん!」
邪魔が寄って来たが構ってられない。
なんとか立ってはいられるが……思考が回らない。声が出せない……。
「ルイ」
「ほら」
シナがルイに寄る。ルイが何かを渡した。
「やっぱり、そうだったんだね……。ごめんアンジェ」
そう言うとシナが寄ってくる。頭に手を当てる。
「君は後でね」
ルイスの方をちらっと見てから向き直り、シナは1度目を閉じ、そして開いた。
「ドルミーレ」
静かに、シナの声が聞こえた。
最後に見えたのは、シナの赤い目──……
「ん……」
「あ、起きた」
「おねーちゃん!起きたよー!」
目を覚ますと、たくさんの声が聞こえた。
「あの人起きたよ!良かったね!お薬効いた?」
子供の声。
……耳障りな……小さな子供の……。
「わかったわかった。ちょっと待ってて。今から食べ物持ってくから……あんまり騒がしくしちゃダメよ?」
『はーい!』
何人かの声が重なった。一体何人いるんだ……、と言うか。
「ここどこだ」
体を起こす。
「あ、まだ寝ていた方がよろしいですよ」
右隣を見ると落ち着いた雰囲気の少女がいた。
「ここは、森の奥にあります、孤児院のようなものです。貴方達がこの近くで倒れていたもので……夜は危ないですし、家に連れていこう、ということになったんです。勝手にすみません」
「……ありがとう。だけどそいつは置いていって良かった」
と左隣を指差し言う。この邪魔はいなくなればいいと思う。
「あ、ルイ姉」
「よぉ、アンジェ。起きたんだな」
「お前……」
「待て待て、昨日の件なら訳があるんだ。後で説明するからとりあえず……」
「お待たせしました〜って姉さん、帰ってきたの?」
……人が多すぎて、頭痛い……。
ルイと同年代であろうルイを姉さんと呼ぶ彼女から食事を受け取り、それを食べ終え、ルイに向き合う。
「さて……説明していただきましょうか?ルイさん」
「そんな怖い目で見るなって」
「……あんた雰囲気変わってるわね」
「さぁてね。んーと、どっから説明すりゃいいんだ?何が知りたい」
「何がって、全部」
「お姉ちゃん、全部って言われてもじゃないの……」
邪魔が口出しするが気にしない。
「んじゃー、1から説明していくか……」
ルイ曰く、
この場所は森に捨てられた子供たちの保護をする場所らしい。
ルイはここで世話係を食事を運んで来てくれた女性──アナリアと共にしているらしい。
「オレの仕事の関係でな。アナリアは仕事仲間だったんだ。色々知ってもらっていた方が都合がいいから誘った」
「ルイから仕事の誘いだなんて、団体いる時にはなかったから驚いちゃって。折角だからやってみようかなって」
アナリアは予想通りルイと同い年だった。
長髪、ルイと同じくらいの身長。しっかりとしたお姉さん、という感じだ。
アナリアは家事担当。ルイは防衛担当、らしい。
ここにも色々あるみたいだ。山賊とかなんとかー、と言ってるがその表現が正しいものなのかはわからない。
とりあえず、ルイが裏社会の人だということはわかった。しかも多分、リーダーだ。
彼女を敵には回せないな……。
「この施設は、アンジェが探してる国の近くにある。あの国から、ここまでの道順を知って欲しくなくて眠らせた。シナもここに一緒に住むことになってる。後、眠らせた後に小さな呪いをかけさせてもらった」
と言うとルイは自分の頭を指でつついた。
灰色の鎖が見える……。
『害はないし、何が出来るかはわからないけど、ちょっとした手助けは出来るから』
頭の中に声が響いた。
なるほど……。
「アンジェもやってみろ。こっちから連絡できてもそっちから出来なかったら意味無いんだ」
と頭を指でコツコツと叩く。
『君の場合は耳の上、あたりかな。相手の顔と名前を浮かべて、その2秒後に心の中で言うんだ』
「わかったわ」
右耳の上を2回指で叩く。
そしてルイの事を浮かべ、言う。
「……どう?」
「駄目だな。反対側でやってみろ」
「了解」
今度は左耳で、同じことをする。
「おーけ。聞こえた」
「良かったわ」
何を伝えたかは、言わないでおく。
「ただいま」
「おかえり、シナ」
夜になって、シナが帰ってきた。
この後どうするかをルイと話していたところだった。
あたしの姿を確認してシナは言う。
「アンジェ……ごめん、ね」
「大丈夫。仕方の無いことだもの」
荒らすことはない。ルイは協力してくれるって言ったし。
「そう……うん、ありがと。何話してたの?」
シナの態度が、接し方が、変わりつつあるのがわかる。
「今後のこと。どうやって向こうに行くかって」
「あぁ、なるほど。あそこはアルケアよりも外からの人に敏感だからね……警戒心も強い」
「うん、その話をしてた」
そう言えばシナは今まで、何をしていたのだろうか……?
服をよく見ると赤い染みがあった。
血か……?
「じゃあそういうわけで、アルケアの追っ手がいないか確認してから出発だ。明日の夜、かな。一応ここは呪結界貼ってあるから見えないだろうが……近くを通ってる可能性はある。……山賊も最近多いからな。迂回ルートを通るんだ。そこが、シナが言うにはここの近くなんだよな……」
「どうしてアルケアの人たちは向こうへ?」
「貿易の為さ。あそこは資源だけはいいんだ。石油とか鉄鉱石とかな」
「なるほど……アルケアみたいな国は外から資源を頂かなきゃいけないのね?」
「そうだな。そしてその資源の多さからよく狙われてるおかげで、外からの人に対する警戒心が強い。まぁ……こいつがいればなんとかなるかもしれないが」
「……こいつが?」
ルイはルイスを指さしている。
こいつが1体、何の役に立つというのだ。
全くわけのわからない、と言う表情をルイに向けると、嫌そうにルイは言った。
「向こうの王様は、かわいい系男子が好きなんだよな」
……なんだよそれ。
次回更新は未定です。




