第41話 羊飼いは、羊を数えられない
「昨日は百頭いたんだ」
羊飼いが言った。
「今日は何頭いるんですか?」とエルフ。
「分からん。減っている気がする」
羊たちは柵の中を自由に歩き回っている。これでは数えるのも大変そうだ。
「なら、石を使いましょう」と俺は言った。
「石?」
「今日、羊が小屋に入るとき、一頭につき石を一個置いておくんです。明日、羊が入るたびに石を一個取り除く。石が余れば羊が減った。石が足りなくなれば増えた。全部ちょうどなくなれば、昨日と同じ数です」
「数えなくてもいいのか!」
「ええ。昨日と今日の羊を一対一で対応させるんです」
エルフが感心したようにうなずいた。
「なるほど。数そのものを知らなくても、同じ数かどうかは分かるんですね」
「そういうことです」
「よし! やってみよう!」
羊飼いは張り切って石を並べ始めた。
翌日。
羊飼いは石の山を前に、頭を抱えていた。
「大変だ!」
「どうしました?」
俺が尋ねた。
「石が百個ない!」
「え?」
「数えたら九十七個だった! 羊が百頭いないぞ!」
エルフが首をかしげた。
「……昨日、本当に百頭いたんですか?」
「もちろんだ!」
「数えたんですか?」
「いや」
「じゃあ、どうして百頭だと?」
羊飼いは少し考えた。
「……いつもそれくらいいるからな」
「勘ですか」
「そうとも言う」
俺は石の山を見た。
「じゃあ、羊が減ったかどうかは、まだ分かりませんね」
「いや、分かったぞ!」
羊飼いは力強くうなずいた。
「うちの羊は、百頭いなかった!」




