第42話 影は嘘をつかない
「敵の攻城塔が、壁より高いかもしれません!」
城門前に兵士が駆け込んできた。
遠くには巨大な木製の塔が見える。敵はあれを城壁に近づけ、上から兵士を乗り込ませるつもりらしい。
「高さを測れないんですか?」とエルフ。
「近づけば矢が飛んでくる。あの距離からでは分からん!」
俺は地面に伸びた自分の影を見た。
「影を測ればいい」
「影?」
俺は近くにあった槍を地面に垂直に立てた。
「この槍の長さは?」
「二メートルだ」と兵士。
「影は一メートルだな」
俺は遠くの攻城塔を指差した。
「塔の影は?」
「七メートルくらいだ!」
「なら、塔の高さは十四メートルだ」
「どうして分かるんですか?」とエルフ。
「槍は高さ二メートルで、影が一メートル。高さは影の二倍だ。塔も同じ太陽の光を受けているから、影の長さも同じ割合になる」
「つまり、影の長さが分かれば、高さも分かるんですね」
「そういうことだ」
兵士は城壁を見上げた。
「城壁は十二メートルだ……。二メートルも負けている!」
「まずいな」
兵士は青ざめた。
「どうすればいい! 壁を高くする時間はないぞ!」
俺は少し考えた。
「塔が近づく前に、攻城塔を壊すしかないな」
「分かった! 弓兵を集めろ!」
兵士は走り出した。
エルフが俺の袖を引いた。
「ところで、どうして槍と塔の影で高さが分かるんですか?」
「太陽の光がほぼ平行だからだ。離れた場所でも、同じ角度で影ができる」
「なるほど……」
エルフは納得したようにうなずいた。
そのとき、兵士が戻ってきた。
「大変だ! 敵の塔が動き出した!」
「もう城壁まで来るんですか?」
「いや、まだ遠い!」
兵士は空を見上げた。
「日が暮れる前に、影が伸びるぞ! 塔がもっと高くなる!」
「塔の高さは、日が暮れても変わらないぞ」




