第39話「兵士は、敵軍を止めたかった」
「敵の進軍を止める方法はありませんか?」
兵士のボルグが尋ねた。
「道を塞げばいいんじゃないか」
主人公は何気なく答えた。
「道を……塞ぐ」
「あるいは、止まれって書いておくとか」
「なるほど!」
翌朝。
敵軍が王国へ向かって進軍していた。
その街道の真ん中に、巨大な看板が立っていた。
『止まれ』
敵将軍は馬上から看板を見た。
「……何だこれは」
「将軍、罠では?」
「分からん。だが、止まれと書いてある」
敵軍は停止した。
ボルグは物陰から飛び出した。
「よし! 止まったぞ!」
「本当に止まった……」
エルフが呆然とした。
主人公は頷いた。
「文字が読める敵でよかったな」
「そこですか?」
敵将軍が叫んだ。
「おい! 誰がこんな看板を立てた!」
「私です!」
「何のつもりだ!」
「進軍を止めるためです!」
「止まっているだろうが!」
「はい!」
「ならば看板をどけろ!」
「嫌です!」
敵将軍は剣を抜いた。
その瞬間、ボルグがもう一枚の看板を掲げた。
『進入禁止』
敵将軍は剣を下ろした。
「……くっ!」
エルフが主人公に囁いた。
「これ、いつまで続けるつもりでしょう」
「看板がある限りじゃないか」
そのとき、後方から王国軍がやってきた。
「ボルグ! 敵軍を止めたそうだな!」
「はい!」
「よし! 我々も進め!」
「お待ちください!」
ボルグは王国軍の前にも看板を立てた。
『止まれ』
「お前、味方だぞ!」
「敵味方に関係ありません!」
「どけ!」
「交通ルールは守ってください!」
王国軍も停止した。
敵軍も停止した。
両軍は街道を挟んで、向かい合ったまま動かなくなった。
夕方。
王様がやってきた。
「何をしているのだ?」
ボルグは胸を張った。
「戦争を止めています!」
王様は感心した。
「素晴らしい! これなら無駄な犠牲も出ない!」
主人公は看板を眺めた。
「次は信号機でも作るか」
エルフが首を振った。
「赤で止まって、青で進むんですね」
「そうだな」
「……戦争中に青になったら、両軍が同時に突撃しませんか?」
その場にいた全員が沈黙した。
ボルグはゆっくりと新しい看板を取り出した。
『青でも進むな』
「もう交通ルールじゃないでしょう!」




