第38話「兵士は、敵を全員捕まえたかった」
「敵を一人も逃がしたくないんです」
兵士のボルグが主人公に相談した。
「包囲すればいいんじゃないか」
「包囲?」
「敵の周りをぐるっと囲むんだ。逃げ道をなくす」
「なるほど!」
ボルグは感激した。
翌日。
王国軍の訓練場に、巨大な円形の柵が作られた。
「これが包囲網です!」
エルフは柵を見上げた。
「……ずいぶん大きいですね」
「敵を逃がさないためだ!」
「敵はどこですか?」
「まだいません!」
主人公は柵の中を覗いた。
「これ、誰が入るんだ?」
「敵です!」
「どうやって?」
「おびき寄せます!」
ボルグは自信満々だった。
数日後。
敵軍が王国の町に攻めてきた。
ボルグは待っていた。
「今だ! 敵を包囲するぞ!」
王国軍が敵軍を追い立て、巨大な柵の中へ誘導した。
敵兵が次々と入っていく。
「よし! 全員入った!」
ボルグは柵の門を閉めた。
敵将軍が叫んだ。
「何のつもりだ!」
「捕虜になってもらう!」
「ふざけるな!」
敵兵たちは柵をよじ登ろうとした。
しかし、柵は高かった。
敵将軍は歯ぎしりした。
「くそっ! こんなもの、破壊してやる!」
そのとき、ボルグが叫んだ。
「待て! 柵を壊すな!」
「なぜだ!」
「せっかく捕まえたのに、逃げられるだろう!」
「ならばどうしろというのだ!」
ボルグは胸を張った。
「おとなしくしていろ!」
敵軍は、しばらく沈黙した。
その後、敵将軍が言った。
「……分かった。降伏する」
ボルグは歓喜した。
「やったぞ! 敵を全員捕まえた!」
エルフは主人公に耳打ちした。
「これ、ただの捕虜収容所では?」
主人公は頷いた。
「いや、違う」
「何がです?」
「敵が自分から入ってきた」
「そこですか?」
その日の夕方。
王様が訓練場を訪れた。
「見事だ、ボルグ! 敵軍を丸ごと捕らえるとは!」
「ありがとうございます!」
「ところで、この柵は何人まで収容できる?」
ボルグは少し考えた。
「まだまだ入ります!」
王様は満足そうに頷いた。
「よし。では、国内の犯罪者もここに収容しよう」
「えっ」
「反乱を起こした者も、借金を返さない者も、全員だ!」
主人公は柵を見た。
「便利だな」
エルフが小声で言った。
「このままだと、国民全員が入れられそうです」
ボルグは真剣な顔で答えた。
「大丈夫です。柵を大きくすればいい!」
「大丈夫じゃない!」




