第37話「兵士は、降伏することにした」
「敵を欺くには、どうすればいい?」
兵士のボルグが主人公に尋ねた。
「敵が予想しないことをすればいいんじゃないか」
「予想しないこと……」
ボルグは腕を組んだ。
「例えば?」
「攻めてくると思ったら逃げる。逃げると思ったら攻める」
「なるほど!」
「降伏すると思ったら降伏しない」
「……待てよ」
ボルグの目が光った。
「降伏すると思ったら、本当に降伏する」
エルフが眉をひそめた。
「それは欺いていませんよね?」
「いや、敵は油断するはずだ!」
翌日。
ボルグは敵軍の陣地の前に、一人で立っていた。
武器を捨て、両手を上げる。
「降伏する!」
敵の将軍が出てきた。
「……本当に降伏するのか?」
「本当だ!」
「何か企んでいるのではないか?」
「いや、降伏だ!」
将軍は疑いながらも、ボルグを捕虜として連行した。
その日の夜。
ボルグは敵軍の食堂で食事をしていた。
「捕虜なのに、ずいぶん普通に食べていますね」
敵兵が言った。
「腹は減るからな」
「……何か企んでいるのでは?」
「いや、食事だ!」
翌朝。
敵将軍がボルグを呼び出した。
「お前は本当に何も企んでいないのか?」
「何も!」
「では、なぜ降伏した?」
「敵を欺くためだ!」
将軍は頭を抱えた。
「……それを言ってしまったら、もう欺けていないだろう!」
その頃、王国軍の陣地では。
「ボルグが敵に捕まったそうです」
エルフが報告した。
主人公は頷いた。
「作戦成功だな」
「どこがですか!」
「敵の中に入り込めた」
「捕虜としてですよ!」
そこへ伝令が駆け込んできた。
「大変です! 敵軍から使者が来ました!」
使者は一枚の書状を差し出した。
そこには、こう書かれていた。
『こちらも降伏する』
エルフは書状を二度見した。
「……敵も降伏してきました」
主人公は少し考えた。
「じゃあ、戦争は終わりだな」
「そういうことになりますね……」
そのとき、別の伝令が駆け込んできた。
「大変です! 両軍の兵士が全員、相手の陣地に捕虜として移動し始めました!」
主人公は頷いた。
「平和になったな」
エルフは額を押さえた。
「国境に誰もいなくなります!」
その後、両国の王は話し合いの末、戦争を終結させた。
ただし、捕虜の交換には三日かかった。
最後まで、自分がどちらの軍の兵士なのか分からなくなった者がいたためである。




