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第3話 冒険者ギルドで職業を聞かれたので正直に答えた

「職業は何ですか?」


冒険者ギルドの受付嬢は、笑顔でそう尋ねた。


俺は困った。


職業。


そういえば、異世界に来てから一度も働いていない。


「無職です」


「かしこまりました。では、希望する職業はありますか?」


「特にありません」


「剣士、魔法使い、僧侶、盗賊、商人などがございますが」


「じゃあ、無職で」


受付嬢の笑顔が少しだけ固まった。


「無職という職業はございません」


「そうなんですか?」


「はい。無職は職業ではありませんので」


なるほど。


言われてみればそうかもしれない。


「では、職業欄には何と書けばいいんでしょう?」


「未定、としておきますね」


「お願いします」


受付嬢は羊皮紙に何かを書き込んだ。


そのとき、隣から声がした。


「お前、まだ職業が決まっていないのか」


振り返ると、エルフが立っていた。


「お前も冒険者なのか?」


「いや、我はエルフだ」


「それは知ってる」


「職業は狩人だ」


「へえ。じゃあ狩人エルフか」


「違う。エルフだ」


「いや、狩人だろ」


「種族はエルフだ」


「分かってるよ!」


受付嬢が困った顔でこちらを見ていた。


「お知り合いですか?」


「まあ、そんなところです」


「こちらの方は?」


「エルフです」


「種族ではなく、お名前をお願いします」


「エルフです」


受付嬢は静かにペンを置いた。


「……かしこまりました」


何かを諦めた顔だった。


そのとき、ギルドの入口が勢いよく開いた。


「おい! ここに怪しい男がいると聞いたぞ!」


兵士だった。


また兵士か。


俺はもう驚かない。


「そいつだ! 白い便座を持ち歩いている男!」


兵士は俺を指差した。


「貴様、職業は何だ!」


「未定です」


「ふざけるな! 何かあるだろう!」


「強いて言えば、転生者です」


兵士は眉をひそめた。


「転生者? 聞いたことがない職業だな」


「職業じゃありません」


「では何だ!」


「生まれ変わった人です」


「……それは知っている」


兵士は少し考えた。


「つまり、前世では何か仕事をしていたのだろう?」


「まあ、会社員です」


「会社員?」


「はい」


「どんな魔物を討伐する?」


「魔物は討伐しません」


「では何をする?」


「会社に行って、仕事をして、帰ります」


兵士は隣の兵士と顔を見合わせた。


「それは……奴隷ではないのか?」


「違います」


「毎日、決まった場所に行き、命令を受け、働く。しかも報酬は月に一度」


「やめてください」


「休みの日まで決まっているのか?」


「やめてください」


「それは奴隷よりひどいのでは?」


「やめろ!」


ギルド内が静まり返った。


受付嬢が小さく咳払いをした。


「ええと……登録はどうなさいますか?」


俺は少し考えた。


そして、答えた。


「やっぱり無職でお願いします」


エルフが頷いた。


「よい判断だ」


「お前は黙ってろ」


第3話 完

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