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翌朝、元気に登校して来た李珠は真っ先に私の机の前に足を運んできた。
「おはよー美波」
「おはよう、李珠」
「……あれ?」
私の顔を見るなり、目を見開く李珠。そのポカンとした表情に、瑠琉が私の肩に手を置いて言った。
「気づきましたか李珠さん。美波さん、上手いですよね」
「ほんとほんと、絵は下手なのにね」
「うるさいわね沙希、あなたに言われたくないわよ」
私の顔を覗き込んでくる李珠。あまりじろじろ見られるのも気恥ずかしいので視線をずらすと、李珠の手が鞄のサイドポケットに入れられているのを見つけた。そこからは、アイブロウペンシルらしきものの先っちょが窺える。きっと、描く気満々で来たのだろう。
「どったの美波ちゃーん、急にお洒落に目覚めるなんて。何かあった?」
「さあね。思春期、というやつかもしれないわ」
「思春期? ちょっと違くない?」
首を傾げる李珠の顔は、ほんの少し動揺の色が滲んでいるようだった。まるで、私の変わりように焦っている、みたいな。
どうしてそんな顔をするのか知らないが、少し気分が良くなる。私は丁寧に磨いた爪を見せつけるように弄りながら、淡々とした声を意識して「そう言えば」と切り出した。
「バイト、始めることにしたから」
李珠の唇から息だけが漏れた。何かを言いたそうにしながら黙る李珠より先に、玲奈が訊ねてくる。
「え、美波バイト決まったの?」
「まだ連絡はしていないけれど、今日の放課後してみるつもりよ。どうやら、怪しいところではないみたいだし」
「へー、何するの? 事務系?」
僅かに遅れたテンポで、李珠も会話に入ってくる。事務だと思っているらしい李珠に、私はしたり顔で言ってやった。
「読者モデル、というやつね」
たっぷり十秒ほど、間をおいて。
「……へ」
李珠が、とんでもなく面白い間抜けな面で、そう呟いた。
私は笑いそうになるのを堪えて、澄ました顔で李珠を見返す。
覚悟しろ、穂條李珠。そして覚悟しろ、私。
音楽も、アイドルも、Sky′sも、やると決めたら本気でやれ。
誰からも舐められない、清く強い私になるよう、相応の努力をしろ。
メイクと読モは、そのための第一歩だ。
Sky′sを、穂條李珠ありきのグループなんて言わせない。
李珠にも、沙希にも瑠琉にも玲奈にも、誰にも負けないSky′sの一員になってやる。
誰の肩にも並べられる、そんな私に、なってやるのだ。




