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Sky’s  作者: 白咲実空
#12.Me Should Want
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97/103

8

 翌朝、元気に登校して来た李珠りずは真っ先に私の机の前に足を運んできた。

「おはよー美波みなみ

「おはよう、李珠」

「……あれ?」

 私の顔を見るなり、目を見開く李珠。そのポカンとした表情に、瑠琉るるが私の肩に手を置いて言った。

「気づきましたか李珠さん。美波さん、上手いですよね」

「ほんとほんと、絵は下手なのにね」

「うるさいわね沙希さき、あなたに言われたくないわよ」

 私の顔を覗き込んでくる李珠。あまりじろじろ見られるのも気恥ずかしいので視線をずらすと、李珠の手が鞄のサイドポケットに入れられているのを見つけた。そこからは、アイブロウペンシルらしきものの先っちょが窺える。きっと、描く気満々で来たのだろう。

「どったの美波ちゃーん、急にお洒落に目覚めるなんて。何かあった?」

「さあね。思春期、というやつかもしれないわ」

「思春期? ちょっと違くない?」

 首を傾げる李珠の顔は、ほんの少し動揺の色が滲んでいるようだった。まるで、私の変わりように焦っている、みたいな。

 どうしてそんな顔をするのか知らないが、少し気分が良くなる。私は丁寧に磨いた爪を見せつけるように弄りながら、淡々とした声を意識して「そう言えば」と切り出した。

「バイト、始めることにしたから」

 李珠の唇から息だけが漏れた。何かを言いたそうにしながら黙る李珠より先に、玲奈れいなが訊ねてくる。

「え、美波バイト決まったの?」

「まだ連絡はしていないけれど、今日の放課後してみるつもりよ。どうやら、怪しいところではないみたいだし」

「へー、何するの? 事務系?」

 僅かに遅れたテンポで、李珠も会話に入ってくる。事務だと思っているらしい李珠に、私はしたり顔で言ってやった。

「読者モデル、というやつね」

 たっぷり十秒ほど、間をおいて。

「……へ」

 李珠が、とんでもなく面白い間抜けな面で、そう呟いた。

 私は笑いそうになるのを堪えて、澄ました顔で李珠を見返す。

 覚悟しろ、穂條李珠。そして覚悟しろ、私。

 音楽も、アイドルも、Sky′s(スカイ)も、やると決めたら本気でやれ。

 誰からも舐められない、清く強い私になるよう、相応の努力をしろ。

 メイクと読モは、そのための第一歩だ。

 Sky′sを、穂條李珠ありきのグループなんて言わせない。

 李珠にも、沙希にも瑠琉にも玲奈にも、誰にも負けないSky′sの一員になってやる。

 誰の肩にも並べられる、そんな私に、なってやるのだ。

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