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心臓が、嫌な音をたてる。
「それでは、今年ダンス大会で地区大会を突破した本校のスター! ダンス部の皆さんによるパフォーマンスです! どうぞっ!」
放送部の少女による元気なアナウンスが流れ、震える足を一歩、踏み出す。
盛大な拍手に迎えられてステージに立つと、位置を確認して後ろを向き、ポーズをとる。
「……えっと」
放送部がマイク越しに戸惑った声を出す。リハーサルではポージング後すぐに音楽が流れたのだが、暫く待っても流れないことに焦りを感じたのだろう。だけど私はなんとなく、機材トラブルではないと察していた。
足音が、一向に聞こえてこないのだ。先頭の私に続くはずの足音が、全く、1人も、しない。
まだ踊っていないのに呼吸が乱れる。ステージ裏から聞こえる嘲笑に、全身の筋肉が強張る。
「あのー、ダンス部のみなさーん?」
放送部が呼びかけるも、誰も反応を示さない。客席もざわつき始め、カメラを構えていたはずの顧問が慌ててステージ裏に駆けてくる。
「ちょっとあなた達、何してるの? なんで、一条さんだけ──」
「私たち、一条さんと一緒に踊りたくありませーん」
すぐ傍で、ドッと笑い声が起きた。心臓が、嫌な音をたてる。足が縫い付けられたように動かず、後ろを向いて客席を確認することは愚か、ステージ裏に戻ることもできない。
「一条さん、戻って来て! 一条さん!」
顧問がそう指示を飛ばすも、私は呼吸を繰り返すことしかできない。酸素が薄い。苦しくて、文化祭ということもあってか熱気がすさまじく、暑い。
「だ、大丈夫ですか? ちょっと、過呼吸になってるじゃん……やばいって、ねぇ」
放送部が壇上に上がって来て、私の顔を覗き込んでそう言う。
「取り敢えず保健室……ごめん、ちょっと触るね」
腕が掴まれた瞬間、私は崩れ落ちるようにして倒れた。
客席から悲鳴が上がり、男性の先生方が駆けつける気配を感じる。
もう、全部どうでも良かった。笑われようが、独りぼっちにされようが。
苦しいから、どうでも良いから、今すぐ楽になりたかった。




