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Sky’s  作者: 白咲実空
#11.ブレない道筋
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88/100

7

 面接に合格した。その通知が届いたのは面接をした日から二日後、月曜日のことだった。またも昼休み、お弁当を片付けていた私達の目の前で、唐突に椅子から立ち上がった李珠りずを見て、なんとなく察した。

「李珠さん、もしかして……」

 ごくり。唾を飲む瑠琉るるに李珠は小さな頷きを返すと、無言でSky′s(スカイ)のグループLINEに画像を送信。すぐに見ると、予想通りのメール画面が載っている。『高校生限定アカペラ歌唱大会の面接結果』と書かれた件名、そして良い内容を熟読して、私達は息を吐く。クラスメイトの何人かがチラチラと私達のことを見てくるため、スマホを隠すように持って移動を開始。

 やって来たのは今月二度目となる体育館裏。五人で円になるよう立ち、もう一度メールの内容を確認する。

「一回目の打ち合わせが明後日か……。時間はこっちから指定できるみたいだけど、どうする?」

 李珠が早速返信用のメール文を作成し始める。明後日は普通に平日なので、学校がある。だから放課後、十六時以降しか行けないことになるが。

「明後日ってさ、クラス旗作るんじゃなかったっけ? 手伝える人は絶対集合って高橋たかはしさんが言ってたような……」

 玲奈れいなが言うも、すぐに李珠が「手伝える人でしょ? 私達は無理じゃん」と即答する。しかし、高橋さんの言う“手伝える人”を、そのままの意味として受け取ってはいけないことは、私にもなんとなく解っていた。

 というのもここ最近、学校の授業は毎日のように一時間ほど総合が設けられ、文化祭か体育祭のための時間に割り当てられているのだが、高橋さんが私達を見る目が厳しいのだ。

「クラス旗もそうだけど、グラドリの試作とかチラシ作りとか、そういうの私達、一切手伝ってないよね……」

 当日お店をまわす役割の他に、生徒は一人一人役割を与えられている。高橋さんを筆頭とする陽キャ集団は買い出しや会計などを含めたグラドリを作る係。お店を宣伝するチラシは美術部の子が作る係で、看板の製作なんかも美術部や手芸部の役目となっている。そしてそれら以外の、特に何も役割を与えられなかった人達が協力してクラス旗を作るのだが、クラス旗は仲の良い人達が固まって作業をしているため私達に入る隙はない。

 私達の他にも目立たないタイプの男子やおとなしめの女子なんかはあまり作業に参加していないが、現状で一番文化祭に非協力的なのは誰がどう見ても私達、Sky′sだった。総合の時間はクラス旗を手伝う必要がないとのことなので、体育館か空き教室を狩りて体育祭のダンスを練習し、放課後は皆がせっせと文化祭の準備を進める中、私達は撮影やダンス(体育祭ではなくSky′sのMV用)の練習でさっさと帰る。

 非協力的どころではない。もはや喧嘩を売っている。

「でも、高橋さん側にも問題あると思うよ? だってグラドリは完全に仲間内でやってるし、クラス旗は絵が上手い子以外参加禁止みたいな謎の空気あるし。看板だってさ、私は最初手伝うって言ったんだけど、八尾坂やおさかくんがここは俺らでやるから大丈夫って言って、じゃあ手伝うことなさそうだしせめて体育祭に向けてダンスの練習やろうって言ったら、陰であいつらやる気なさすぎとか、劇じゃなかったから拗ねてるんでしょとか言われるんだよ? 意味わかんなくない?」

「陰でこそこそ言ってるのって、高橋さんとか間宮まみやさんとか、風浦ふうらさんとかでしょ? クラス全員から嫌われてるわけじゃないんだから、放っておけば良いじゃない」

「そうかな? 私最近、クラスの皆から遠巻きにされてるような気がするんだけど」

 美波みなみの言葉に、李珠は首を横に振る。が、私にはピンとこない。そりゃあ、嫌っている人達もいるだろうが、全員が私達を嫌いになるなんて、そんなおかしなことはないと思う。嫌われるようなことは……文化祭の手伝いをしていないこと以外は、していないわけだし。

 だが、首を傾げる私の横で、玲奈は「そうだね」と同意を示した。思い当たることがあるらしい。

「嫌われてるわけではないんだろうけど、こう……扱いに困ってるみたいな空気はあるよね。私もこの前、クラス旗手伝おうとしたんだけど、玲奈ちゃんは大丈夫だよって謎の理由で断られたし」

 すると瑠琉も、「そういえば私も」と手を上げる。

「文化祭とは関係がないのですが……以前お友達と話していた時に、瑠琉はあんまり学校に興味ないでしょって言われました。学校で人気の男の子について話していて、私は彼を知らなかったので、知らないと正直に答えただけなんですが……。あ、えと、嫌なことを言われたわけではなく、その、何と言いますか、何気ない言葉ではあったのですが、私には棘が刺さってしまったと言いますか」

 私にはSky′s以外に親しい人がいないので解らないが、皆どこかしら思うところがあるらしい。何と言って良いか解らず黙っていると、美波が大きなため息を吐いた。

「ちょっと、話が逸れてるじゃない。打ち合わせ、一応曜日変更もできるみたいだけど、今週中にはしときたいってのがテレビ側の意向なんでしょ? だったら大人しく明後日の放課後にしましょう。文化祭の手伝いなんて、私達にできることはどうせ何もないんでしょうし」

「そう、だね。じゃあ明後日の……十七時で」

 流されるまま、李珠は文を打つ。反対をする人もおらず、なんだか気まずい沈黙の中打ち合わせの予定が決まる。

「八尾坂くんにはどうする? 言っておく?」

 玲奈が問うと、李珠が頷く。

「そうだね。当日は出られないことが決定したから……私の方から呼び出して言っとくよ」

 話は纏まり、私達は特に喜ぶでもなく教室へ戻った。勿論、アカペラ歌唱大会に出場できることは素直に嬉しい。が、テレビに出られる代わりに文化祭には出られない重みが、皆の背中にのしかかっていた。

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