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Sky’s  作者: 白咲実空
#11.ブレない道筋
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3

 話し合いの結果、文化祭はグラデーションドリンク、略してグラドリに決定した。当日までは味の調合や看板の制作などをして、当日は四人一班で店を回す。私は午前中、十一時二十分から十二時までの間を任されることになった。因みに、美波みなみ玲奈れいな瑠琉るると一緒の班だ。混みやすい時間帯だから五人でしても良いという話にはなったが、何故か李珠りずは十四時から十四時四十分という落ち着いた時間帯の班に収まっていた。

 体育祭は、体力測定時の記録表を持ち出した八尾坂やおさかくんが私をリレーのメンバーに無理矢理組み込みやがったせいで、私はリレーと徒競走、綱引きという三つの種目をこなす羽目になった。それと、一年生はダンスもしなければならないので憂鬱極まりない。運動は得意なので体育祭は苦ではなかったが、ダンスのせいで一気に私のやる気は失われた。休んでやろうかな、当日。

 そんなわけで二学期初日は終わり、帰り支度を済ませた私はいつものメンバーと穂條ほじょう家に向かっている。いつものメンバーとは言わずもがないつものメンバーだが、具体的な名前を上げずとも解るいつものメンバー、そんなメンバーに恵まれる日がくるなんて、私の高校生活も随分と華やいだものだ。おかげで、夏休みは恋しいけど今日も楽しい。

 昇降口を出ると、むわっとした熱気に包まれる。アスファルトから湯気が出そうな暑さに、美波が顔を顰めた。

「暑っ苦しいわね。腹が立ってきたわ。ねぇ、コンビニでアイスでも買っていきましょう」

「あ、アイスならうちにあるよ。炭酸も」

 李珠は言いながら、どこか元気がなさそうに俯く。文化祭の話し合いをしてからずっとこんな調子だが、何かあったのだろうか。劇にならなかったことが、めっちゃショックだったとか? 訊きたいけど、訊いて良いのか解らない。私が迷っている間にも、瑠琉が文化祭の話題を投げた。

「楽しみですよね、文化祭。バンドとかやるみたいですよ。私達も、何かやります?」

 え、何かって?

「何かって?」

 私と同じ疑問を玲奈が投げると、瑠琉は「だってほら」と何やらもじもじし始めた。

「私達、一応、アイドルじゃないですか。だから、文化祭でステージやったりしないのかなーって。フリーステージの募集、まだ始まったばかりですから空きがありますし」

 私の足が止まった。文化祭のステージには、苦い思い出がある。

 夏祭りのステージで、大勢の前で歌って踊ることはできた。完全に人目を克服できたわけではないけど、中学生の時の私よりかは確実に、成長はしている。でも、夏祭りと文化祭じゃ、全然違う。私の中では全然、文化祭の方がハードルが高い。

 だって、歳の近い人ばかりが集まっていて、ダンス部の人達だっていて。

沙希さきさん? ……あっ」

 私の過去を知っている瑠琉は、すぐに私の足が止まっている原因に思い当たったようで「す、すみませんっ」と謝ってくる。いや、謝られるのもきついっちゃきついんだけど。

「べ、別に、やりたかったわけではなくてっ、その、確認というか、やるなら準備とかしないとなーと、思っただけで……」

「あ、ああ、うん」

 そんな必死にならなくても。瑠琉はごほんごほんと咳払いをした後、「体育祭も、楽しみですよね!」と無理矢理話題を変えた。

「私は運動苦手なんですけど、沙希さんがリレーで走るところは見たいです!」

「い、いや、そんな速くないよ? その……私のせいで順位落ちたらって考えたら、めっちゃ怖いし……」

「プレッシャーなんて感じる必要ないわよ。走らない人達が頑張って走る人に文句言うなんて、お門違いにもほどがあるんだから。それに、もし失敗したとしてもそれは順位を巻き返せないアンカーの責任よ。私が怨むならアンカーを怨むわ」

 いや、私がアンカーなんだけど。そういえば美波、体育祭の種目決めの時、うつらうつらしていたような。

 運動場の傍を通り過ぎると、サッカー部や野球部の邪魔にならない場所で、リレーの練習をしている人達がいた。同じ一年生かどうかは解らないが、足が速い。そりゃリレー選手なのだから当然っちゃ当然なのだが、見るからに運動部っぽい脚の筋肉をしている。

 私も走り込みくらいした方が良いのかなぁ、なんてことをぼんやり考えていると、

「で、李珠はさっきからどうしたのよ?」

 と、美波がそんなことを言った。突然、ではなかった。私も気になってはいたことだったから、そんなことと形容するのもおかしな話だ。

 話の的になった李珠は、「え?」と解っていそうで解らないと言いたげな顔をする。美波が小さな息を吐いた。

「そんなに浮かない顔をして、それで何もありませんと言うのなら、そもそも顔に出さないでもらえるかしら。何も言いたくないけど心配はしてほしいなんて、そういうかまってちゃんが私はあまり好きではないの。鬱陶しいから」

「ちょっと、美波」

 言いすぎだ、と玲奈が軽く注意する。美波はごめんとは言わず、「ま、本当に何もないのなら良いのだけれど」と歩き出した。

「また後で」

 少しだけ大きな声で、李珠が言う。美波に、そして、私達に。

「また後で、言うね」

 少しだけ笑った李珠の顔は、何処からどう見ても焦りが滲んでいた。首筋を伝う汗は、たぶん暑さだけのせいじゃない。

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