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Sky’s  作者: 白咲実空
#11.ブレない道筋
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2

沙希さきおはよ、たんおめー」

「おはよう沙希、誕生日おめでとう」

「沙希さん、お誕生日おめでとうございます」

 私の友達が私に送る誕生日おめでとうは、実に簡素なものだった。トイレ行ってくるわ的なノリで流れていく誕生日おめでとうに、もしやサプライズ的な何かを仕込んでいるのではないか、なんて期待してしまう。玲奈れいなみたいに、私の反応を録音して楽しんで、後で動画化するつもりかもしれないし。

 と、思っていたのだがそんなことはなかった。

「安心してよ沙希ちゃん、誕プレはちゃーんと用意してあるから」

 HR終了後、あまりにも深刻な顔をしていたのだろう私に、李珠りずがふざけた調子でそう言いに来た。私は安堵して、「ほんとっ?」と瞳を輝かせてしまう。し、しまった、期待が顔に……。い、いやでも、誕生日プレゼントを期待するくらい、良いよね? 私達、友達なんだし。

「そ、それで、プレゼントは……」

「いや、ここじゃ渡さないけど」

「ん? え、あれ? なんで?」

「いやだって、学校だし」

 なるほど、と言おうとしたけどなるほどじゃない。意味が解らない。碧天へきてん高校の校則は他校と比べて緩い。スマホは授業中以外なら使用オッケーだし、お菓子や漫画の持ち込みもとやかく言われたりしない。友達の誕生日プレゼントだって、持ってきてお祝いしている生徒を多く見かける。

 とすると、李珠の言う〝学校だし〟には何か別の意味が含まれていることになる。

「李珠もしかして……」

「そのもしかして! 放課後、私の家に集合ね。そこで沙希の誕生日パーティーを開くから」

「そっか。ところで私、私服を持ってきてないんだけど」

「大丈夫、私の貸すから」

 私服が必要であることを確認。つまり、動画を撮るということが決定した。私は項垂れ、肩を落とす。動画の撮影は別に構わないが、プレゼントくらいは今貰っても良いのではないだろうか。横目で瑠琉るるがいる方を見ると、控えめな笑みが返ってきた。美波みなみを見ると無視され、玲奈には手をひらひら振られる。なるほど、口裏は合わせてあるらしい。

「あ、沙希もしかして予定あった?」

 李珠に問われ、私は首を横に振る。夜は家でケーキだが、他に何があるというわけではない。李珠はにっこり笑うと、「じゃあ放課後、楽しみにしててね」と言って去って行く。

 私がため息を吐くと同時に、一限開始のチャイムが鳴った。


 一限は二学期が始まるにあたっての全校集会が行われるため、体育館に移動。校長先生の長い話や学年主任から大学受験に向けての心構えなどを聞かされた後、教室に戻る。余った時間は総合だ。夏休みの課題を先生に提出してからようやく、碧天高校の大半の生徒が心待ちにしていたであろうメインイベントが幕を開けた。

「と、いうわけで! 文化祭に何をやるか、いろいろ決めていきたいと思いまーす!」

 委員長の八尾坂やおさかくんが拳を突き上げて叫ぶと、クラスの一部からおおーっと声が上がる。私は隅っこで小さな拍手をする役割に徹した。苦手なんだよなぁ、こういう雰囲気。

「よっし、じゃあ菜緒なおは黒板係で、佳依かいは書記な。てなわけで、みんな何やりたいかじゃんじゃん案出してくれ!」

 八尾坂くんが教卓をダンっと叩くと、すぐに四方八方から手が上がる。焼きそば、たこ焼き、かき氷、劇等々、鉄板の案が続々と出てくる。それらを黒板に書いていく佐伯さえきさんは大変そうで、途中から美井野みいのさんも手伝っていた。美井野さんは書記係だが、最終的に決まった案を用紙に書き写すだけのため、まだやることがないらしい。

 あるていど案が集まったところで、八尾坂くんが「一旦ストーップ」と手を叩いた。今ある案の中からついに出し物を決めていくのかと思ったが、違った。八尾坂くんはキラキラした笑みで、何故か私の方を見てくる。

「案出してるの同じ面子ばっかりだから、ここからは黙ってる人に聞いていくよ。俺達に流されて、本当はやりたくないものやらせることになったら、申し訳ないからね」

 なるほど、流石はクラスの委員長。クラスのことはクラスの皆で決めたいようだ。良かった、うちのクラスは独裁国家なんかじゃなく、公平で平和だった。こういうところ、八尾坂くんは委員長に向いているなぁと感じさせられる。顔も良いしたぶん運動部っぽいし、こういう男がモテるんだろうなぁ。ところで、八尾坂くんはなぜ私を見てくるのだろう。

「じゃあまず、一条いちじょうさんから。なんかある?」

 は? なんかある、とは? 問われた私は、黒板に目を向けた。そう、文化祭に何をやるか、案を出さなくてはいけない。にしてもどうして私を当てやがったのだろう。私以外にも黙ってる子なんて沢山いたはず……と思っていると、八尾坂くんが「次は宇原うはらだから。準備しといてなー」と私の後ろの席を指した。ので、普通に案を出した人を除いた座席順であることが解る。

 え、どうしよう。なんて言えば良いんだろう。なんとなく、黒板に書いてあるやつはもう言っちゃ駄目なような気がする。かき氷や焼きそばといった定番のお店は壊滅状態。射的やヨーヨー釣りといった遊び系のお店も出尽くしている。劇もあるしカフェもある。展示か? 展示なのか? いや、展示なんて言ってみろ。陽キャの集団に鼻で笑われ、陰で笑われ、SNSでも笑われることになるぞ。

 というか、けっこう案が出てるんだからこの中から決めれば良いじゃん。え、黙ってる人達がなんで黙ってるか解らないの? 普通に案が何もないから黙ってるだけだし、もし仮にやりたいことがあるけど陽キャに流されて言えないってなってたとしても、その責任を八尾坂くんが負う必要ないでしょ。言えない人の自己責任だし、その言えない人のために作られた空気の中に私も巻き込まないでほしい。

「あー、えっと……」

「何でも良いよ、遠慮しないで」

 本当に遠慮せず何でも言って良いのなら、何もないです、だ。だが、そんなことを言える空気ではない。クラスメイトがちらほら私に視線を向けてくる。耐えられなくなって、私は何とか絞り出した。

「い、イカ焼き、とか?」

 辛うじて黒板に書かれていない案を出す。黒板に白いチョークでイカ焼きが追加される。良いとも悪いとも言わない、扱いずらさをひしひしと感じるクラスメイトの無の反応に、私の心は折れた。もうこの話し合いで何も言うまいと決意した。

「イカ焼きかー。一条さん、イカ焼き好きなの?」

 気遣いか、八尾坂くんがそう訊いてくる。そんなわけあるか、必死に絞り出したんだぞとは言えず、私は口ごもって黙った。

 八尾坂くんは何も言わない私を特に気に留めず、次の人を当てる。

「宇原は? 何が良い?」

「劇やるなら、スーパーマカオブラザーズにしようぜ。映画、ヒットしたし」

 え、なにその技術。劇という既存の案でありながらも独自の工夫を付け加えることで、新たな案のように見せかけるその方法……え、私もそう言えば良かった。何だよイカ焼きって。

 私が感じた衝撃は他の人も同様に感じていたらしく、そこからは劇+作品名を答える流れになった。ある人は白雪姫と言い、ある人はシンデレラと言い、ある人は三匹の子豚と言う。みんな完全に、やりたいことなんか特にないから宇原くんのやり方を真似しとこうみたいなノリだ。八尾坂くんは次々と挙がる劇の中身について、「みんな劇好きだねー」と呑気なことを言っていた。もし本当に心からそう思っているのだとしたら、実に間抜けな奴である。

「じゃあ次清瀬(きよせ)さん、何かある?」

 八尾坂くんが美波を当てた。美波は気怠さを隠そうともしない眠そうな目で黒板を一睨みした後、

「ない」

 と言い切った。言い切りやがった。クラスの空気が凍る。が、八尾坂くんは特に困らず、

「おっけー。じゃあ次、来栖くるす

 次の人、玲奈を当てる。案がないならないで構わないのなら、最初からそう言ってほしかった。あーあ、玲奈からはないの連呼が続くんだろうなぁ。

「んー、わたあめとか?」

 だが、私の想像とは裏腹に玲奈はそんなことを言った。神か仏か、イカ焼きの隣にわたあめと追加されることで、私一人だけが浮かずに済む。が、どうして玲奈はわたあめと言ったのだろう。今この状況でわたあめと言うメリットなんてない。それか本当にわたあめをしたかったのだろうか。玲奈がわたあめ好きというのは初耳だが、もし本当にそうなら私も全力でわたあめを推したいと思う。

 そこからはなしの連続。なし、なし、なし。もはや梨屋でもやりたいのかと思うほどのなしが続いた後、李珠の番となった。李珠もなし、もしくは瑠琉と同じく劇の内容に触れるのだろう。李珠は明るいけど陽キャというわけではないし、自己主張が強いタイプでもない。故に、李珠が挙げた案に思わず口を半開きにして固まってしまったのは、私だけではなかった。

「展示、とか」

 周囲の顔色を窺いながらも、全く窺っていない案を李珠は言う。八尾坂くんは「展示ねー」と軽く流そうとしたが、周囲はそれを許さない。

「え、展示ってマジ?」

 先陣を切ったのは、高橋たかはしさんだった。クラスの一軍に属する高橋さんは、友達の間宮まみやさん、風浦ふうらさんと顔を見合わせながら「ありえないよねー?」と言い合う。この三人に賛同するわけではないが、私も正直マジかとは思ってしまう。だって展示って、陽キャのテンションが一番下がる出し物だ。ドラマでも漫画でも、主人公のクラスは文化祭でカフェをしていたり、劇をしていたりというのが大半。物語のような青春を求む高校生にとって、展示は地味以外の何物でもない。

 李珠だって、展示が不評であることは解っていたはずだ。だって私が解っているくらいなのだから、李珠に解らないはずがない。どうした李珠、血迷ったか。

穂條ほじょうさーん、展示はないでしょ展示はー」

 高橋さんが面白がって、李珠に直接そう言う。冗談でしょ、と言う高橋さんに、李珠は「そうかな?」と澄ました顔で答えた。

「だって、みんな文化祭まわりたいでしょ? 展示なら準備だけして、当日受付だけ交代すれば良いし。賢くない?」

 確かに、私も文化祭まわりたい、それもアリ。そんな声が各所から上がる。私も李珠の意見を聞いて、展示に流されそうになっていた。だって私は別に最初から展示嫌じゃなかったし。皆の反感を買いたくないから展示って言わなかっただけで、もしこれで展示になるのなら大歓迎だ。当日何もしなくて良いのなら、楽なことこの上ない。

「ちょっと待ってよ。でも、それじゃあ優勝できないじゃん」

 李珠の流れになりかけた空気を、高橋さんが立ち切る。優勝、とは勿論、文化祭で一番輝いたクラスに与えられる賞である。賞は学年ごとの一位を決める学年賞と、学年問わず全クラスを一緒くたにして一位を決める総合賞の二種類あり、多くのクラスが狙うは勿論総合賞。そして、総合賞に輝くためには学年賞を取る必要があるわけだが。

「展示なんて絶対学年賞も無理じゃん。私は反対。絶対いや」

「まあまああおい、まだ展示って決まったわけじゃないから。それに、もし文化祭で学年賞が取れなくても、体育祭で取れば良いだろ?」

 八尾坂くんが高橋さんを嗜めると、高橋さんはぶすっとした顔で座り直す。私は頭の中で、八尾坂くんの説明を整理していた。ええと、ああ、そうか。碧天高校の文化祭は十月十日と十一日、そして翌日十二日には体育祭がある。つまり、文化祭と体育祭を合わせた碧天高校の学園祭が三デイズに渡ってお送りされるのだ。で、学年賞は文化祭で一番盛り上がった各学年のクラスと、体育祭で好成績を収めた各学年のクラスに贈られる。この二つの学年賞の結果を反映させた総合賞が、後日発表されるというわけだ。なんかややこしいな。

 えーとだから、文化祭で学年賞を逃しても体育祭で学年賞を取れば総合賞に輝ける可能性はあるけど、文化祭と体育祭両方で学年賞を取っておけば総合賞は手堅いってことで……。

「ねー、もうグラドリで良いじゃーん。グラドリなら絶対一位取れるってー」

 高橋さんが教室全体に同調圧力をかけ始めた。グラドリというのは高橋さんが出した案であり、グラデーションドリンクの略である。どういうものかというと、かき氷のシロップと炭酸を混ぜ、青とか赤とかを層にしてグラデーションにし、ついでにラムネなんかもかけちゃえば映え間違いなしのキラキラドリンクができるのではないかみたいなことである。まぁ綺麗だろうけど、たぶん美味しくはない。

 八尾坂くんが苦笑し始めた。流石の委員長も困ってしまったようだ。八尾坂くんは窓際の席の方に目をやると、「他なんか、案ある人いるー?」と訊ねる。当然手を上げる猛者はいない。一五HRの民主主義は終わりを告げ、ここからは高橋さんグループによる独裁体制が始まった。

「なんかいろいろ案は出たけどさー、十以上はあるじゃん? この中からいちいち手を上げて何々が良い人―って決めていくのは、蓮も面倒でしょ?」

「いや、俺は別に……」

「遠慮しなくて良いって」

 高橋さんが八尾坂くんに圧をかける。屈した八尾坂くんは「まぁ、はは……」と笑って誤魔化そうとしているけど誤魔化せていない。当然、笑いを肯定と捉えた高橋さんはにんまり笑う。弱いな、八尾坂くん。

「なんか調理必要なやつは衛生管理がどうとかで、使える食材が限られてるんでしょ? だったら焼きそばとかたこ焼きとかイカ焼きはなしにして、ここはやっぱグラドリっしょ!」

 さらっと私のイカ焼きが却下された。おい、イカ焼きはイカしか使わないから安全な方だろ。

「あと、かき氷とわたあめは専用の機械買わなきゃだからなしね。お化け屋敷は三組がやるって言ってたからなし。カフェも二組がやるって言ってたからなし」

 高橋さんが続々となしを決めていく。ねぇ、独壇場だけど良いのか委員長。私がちらを目を向けると、八尾坂くんは遠い目をして突っ立っていた。もう諦めたらしい。

「……ってなると、残りは劇かグラドリかー。んー、劇は別に駄目な理由ないし、ここは多数決で決めようよ。はい、グラドリが良い人―」

 早い早い展開が早い。因みに担任の小口おぐち先生は職員会議とかで席を外しているため、この独裁者を止められる人は誰もいない。え、え、どうしよう。劇かグラドリ? 私が悩んでいる間にも、ぽつぽつとグラドリに手を上げる人が出始める。三秒も経たない間に困った顔をした人たちが続々と手を上げ始めたので、流れに屈した私もグラドリの方に手を上げた。い、いやだって、八割がグラドリだし、上げないと裏で悪口言われるかもしれないし。

 私の他には、瑠琉と玲奈がグラドリだった。高橋さんが「じゃあ次、劇が良い人―」と言うと、李珠と美波が真っ先に手を上げる。この二人、配慮という言葉を知らないのか。二人の他には男子が数人手を上げている。女子は李珠と美波以外の全員、グラドリに流れたらしい。

 高橋さんは「えー劇―?」と不満そうな声を上げた。いや、劇が駄目な理由ないって自分で言ってたじゃん。それに多数決なんだから、もう結果は決まってるわけだし。高橋さんが不満を言う理由はないのだが、それでも高橋さんは不満をぶつけた。

「ねぇ、なんで劇が良いの? 白雪姫とかシンデレラとかやりたい感じ?」

 小馬鹿にしたような感じで、李珠に問う高橋さん。明らかに喧嘩を売っているが、李珠は「あー、いや」と珍しく歯切れが悪そうに口を開く。

「劇に出たいってわけじゃなくて、裏方やりたいんだよね。駄目?」

 駄目、と聞かれて駄目と即答するほど、高橋さんも堂々とはしていない。人間とは、自分が悪者になりたくない種族である。高橋さんは「駄目じゃないけど……」と駄目そうな瞳で呟きながら、顎に手を当てて何やら考え込む。そして、「ねぇ、穂條さんさ」と特段悪意のない、純粋な表情でこう言った。

「なんか、文化祭やる気なくない?」

 すると、李珠の目が小さく見開かれた。解りやすい反応に、高橋さんはますます首を傾げる。

「え、マジ? え、なんで? え、ごめん。これはマジで、なんで?」

 これはマジでの意味がよく解らなかったが、高橋さんの反応は理解できる。私も、李珠が文化祭に非協力的なのは正直意外だと感じていた。李珠は陽キャというわけではないが、文化祭みたいなイベントごとは結構楽しみにしているタイプだと思っていたから。

「い、いやいやいや、楽しみだって。やる気ないとか、そんなわけないじゃん」

 それにしては、展示とか裏方とか、地味目のものを選んでいる。いや、展示も裏方も、文化祭当日を全力で楽しみたいのならベストな選択、なのか? それなら確かに、李珠は文化祭を楽しみにしていると言える。

「ほら、劇って学園ドラマだと鉄板でしょ? 私王道が好きだからさ、憧れてたんだよねー。高校の文化祭で劇やるの。でも私、主役って柄じゃないから、裏方頑張りたいなー、みたいな?」

 取り繕ったような理由に、私は少し違和感を覚えてしまう。が、高橋さんは納得したのか、「ふーん」と簡素な相槌を打っていた。そして、高橋さんは美波にも目を向ける。

「清瀬さんは、なんで劇が良いの? グラドリは駄目?」

 美波はちらと高橋さんを見ると、

「駄目ってわけではないけれど、私も裏方をやりたいの。そうすれば、当日は楽だし」

 そう言って話は終わりだと言わんばかりに目を伏せた。美波の場合、当日に文化祭を楽しみたいとかいう欲望は一切なく、ただただ楽だからというシンプルな理由で劇を選んだと思われる。高橋さんは唇の端をひくつかせながら、美波に問いかける。

「清瀬さんは文化祭、やる気ない?」

「ない」

 きっぱり言いやがった、こいつ。教室の空気が再び凍る中、美波は「ないけれど」と付け足す。

「ここは集団生活を学ぶ場なのだから、あなた達がグラドリに決めたのなら私はそれに従うわ。勿論、サボったりもしない。全力も注がないけれど、それなりにはやらせてもらうわよ」

 おお、美波にしては正しいことを言う。これには高橋さんも不意をつかれたような表情で、パチパチと瞬きを繰り返していた。そして、「全力は注いでよ……」と珍しくデレた顔で言う。え、何その展開聞いてない。

 と、ここで一時間目終了のチャイムが鳴った。なかなかに濃い五十分だったが、二時間目も総合で、文化祭と体育祭に関する諸々を決める時間となっている。このハイカロリーがもう五十分も続くのか。早く家に帰りたい。

「じゃ、じゃあ文化祭は多数決の結果、グラドリに決定ね! それで良いよね、蓮?」

 高橋さんが黙りっぱなしだった八尾坂くんに訊ねると、八尾坂くんは力ない笑みで「そうだね」と頷いた。大丈夫か委員長、お前はもう休め。

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