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現在出ているSky′sの動画は、『ReVenge』のMVと自己紹介動画が五本、自己紹介クイズの前編と後編、全員ガチで勉強した期末試験は誰が一番好成績なのかバトル、の合計九本だ。七月に活動を始めてから一ヶ月、高校生活を頑張りながらにしては良い活動記録が残せているのではないだろうか。自己紹介動画は一本三十秒程度だから、カウントするのは卑怯な気もするが。
日常系の動画や、期末試験のような挑戦系の企画もどんどん増やしていきたいところではあるが、一ヶ月に一本のペースでMVも上げていきたいのが本音だ。それは私と他の皆も同じようで、いつもの如く穂條家の一室に集まった私達は動画の企画についてを書き記すノート、その白紙のページを見つめ、揃って腕を組んでいた。
「次のMV、何処が良いかなぁ……。『ReVenge』みたいに適当な場所っていうのもなぁ」
李珠が言う適当な場所とは、まぁまぁな田舎にある結構広い、綺麗な公園のことだ。家の近くで撮影するのはやめた方が良いという私の意見により選ばれた、誰の家からも遠くないし誰もあまり行ったことのない場所だったが、青空と新緑の丘のマッチングがアルプスのように美しいロケーションだった。適当な場所、というには気に入っているのでまた行きたい。
「せっかくなら、曲と衣装の雰囲気にあった場所が良いですよね。あと、空模様も大事です」
「とは言っても、『ReVenge』と新曲のコンセプト、あんまり変わらないわよね。前回が再出発で、今回は新世界。述語を付けるとしたら、飛び込むと言ったところかしら」
新世界に飛び込む、か。確かに、あんまり再出発と変わらないような気がする。せっかくの新曲なら恋愛だったりバラードだったり、ジャズを取り入れてみたりと新しい曲調をどんどん増やした方が良いのかもしれないけど……。と考えた矢先、美波の言葉を聞いた李珠が笑みを浮かべた。
「それってさ、私達の色が明確ってことなんじゃないかな。この五人で何を表現したいのか、五人の色がちゃんと作れてる証拠だよ。あれこれ試しながら自分達の色を模索していくグループって多くて、私はそういうのも好きだけど……。『ReVenge』の時から五人の想いが一致してるっていうのは、Sky′sが相性良いメンバーで構成されてるってことだと思う!」
『ReVenge』のメロディーを、歌詞を、衣装を、振り付けを初めて目にしたとき、好きだなと思った。それは私だけじゃなくて、沙希も李珠も美波も瑠琉も、皆が同じ方を向いて、同じ志を持っていて、各々の好きは違うものかもしれないけど、好きを追いかける熱量はあんまり変わらなくて。あぁ、そうか。ずっと疑問に思っていた。私は誰かに合わせたりとか、集団生活があまり得意じゃないけど、どうしてSky′sの居心地は良いと感じるのか。それはきっと、考え方や趣味嗜好が違っていても、気持ちは一つだからだろう。
「はぁ……。李珠はどうしてそうこっぱずかしいことを言えるのかしら。反応に困るのだけれど」
「あらあら美波ちゃん照れちゃって。偶には素直な想いを吐き出すことが仲良しの秘訣なんだよ」
「はいはい、鬱陶しい鬱陶しい」
「やーだー、美波ちゃんの顔が赤いー、ちょー可愛いー」
「そういうあなたも、今更恥ずかしくなってきたみたいね? 顔が赤いわよ。誤魔化すためにギャル語で話しているようだけれど、逆効果じゃないかしら」
「べっ、別にー? 恥ずかしくないしー? 私ふだんからこんな喋り方だしー?」
「ギャルは見た目だけにしておきなさい。私、明るすぎる人はあまり好きじゃないから」
「えっ、それってありのままの私を好きでいたいって、そういうこと?」
「どういうことかちょっと解らないのだけれど……ちょっと、手を握るのはやめてもらえるかしら。暑苦しいのよ、こら。離しなさい、離しなさいってば」
いつもの二人は放っておいて、私は話を進めるべく白紙のページに新世界と取り敢えず書き込む。そこから線を引き、“行ったことがない場所”とも書いた。
「行ったことのない場所かぁ……。私、九州の方にあんまり行ったことがなくて。温泉とか……」
「私は四国かな。愛媛とか、字面可愛いから行ってみたいなぁ」
瑠琉と沙希の意見に、私は苦笑しつつ首を振る。
「九州も愛媛も、そんなお金、私達にないでしょ? やっぱり前回みたく、ちょっと遠いくらいのところが良いだろうね。関東圏の範囲で」
「じゃあさ!」
美波の手をようやく離した李珠が、立ち上がって声を上げる。
「いろんなところ行こうよ! 関東の、いろんなところ!」
いろんなところ、とは? 目を瞬かせながらも私は取り敢えず、行ったことがない場所と書いた隣の空白に、関東のいろんなところと書き込んだ。




