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鱗雲。その隙間には薄く淡い水色が絵の具を塗りたくったように広がっており、ボールペンで書いたような電線には雀が数羽止まっている。特別綺麗なわけでもないなんてことない日常の切れ端だが、この空は、今日しか見ることができない。
昼間と変わらない明るさを放つ太陽の下を、私は走っていた。
「お、瑠琉! おはよー」
「おはようございます、李珠さん」
歩道橋の下でばったり李珠さんと会い、二人で青に変わった横断歩道を渡る。まだオープンしていないけれど良い香りが運ばれてくるパン屋さんを眺めながら、李珠さんが言う。
「お昼はここにしよっかな。瑠琉も今日の練習来るでしょ?」
「はい。皆さんでパンも良いかもしれません」
「だよねっ。瑠琉は何好き? 私はクロワッサンなんだけど」
「私はメロンパンですね。あ、そんなに派手じゃない普通の、王道って感じのやつです」
「解るー、なんだかんだ王道が一番美味しいよね」
「ですね。あ、そうだ李珠さん」
「ん、何?」
「練習も勿論ですが、衣装製作、手伝ってはもらえませんか? 仮縫いは全て終わったので」
「うん、勿論良いよ! 皆にもそう連絡しておくね!」
「はい! パパっと完成させちゃいましょう!」
歌もダンスも未熟で、動画の撮影も編集もまだまだ全然慣れないし、衣装も一人で全部作ることができないけれど。未熟なら成長していけば良いし、慣れないなら慣れれば良い。勉強不足は勉強で補って、一人で無理なら周りを頼って、任せても良い。
「なんか瑠琉、変わったね」
「え?」
「平気で頼ってくれるようになって、なんか嬉しい」
「……ふふっ」
「え、なんで笑ったの」
「いえ、何でも」
だって、合宿で皆さんが教えてくれたことだから。各々が自分の役割を果たして、でも皆さんで力を合わせた方が速いこともあって。
「李珠さん、また今度……来年は今年より長く、合宿しましょうね」
「そうだね。私も楽しみ!」
「私もです!」
陽の当たる道を並んで走る。一日の始まりを知らせるように、店のシャッターが次々と上がっていく。暑い、けど、私も李珠さんも心地良いほど屈託のない笑顔だった。




