表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sky’s  作者: 白咲実空
幕間
41/43

間奏

 ReVenge


 長い道のりだったね 美しい景色 宝物の思い出

 だけども最高にはまだ出会えない 僕らの旅は終わらない

 荷物は経験値のみ 色は真っ白に塗りつぶして

 さぁ 再びのスタートだ


 無我夢中に駆けまわった 真っ青な大空の下

 自分は正義で 真っ直ぐで 迷わず 純白な 才能の持ち主

 私のための太陽が足元を照らすの

 不安も 恐怖も 未曾有の世界も 飛び込めば生きてるって感じるの


 けどね でもね 嗤う人がいるから

 私を 好きじゃない 好きじゃない好きじゃない好きじゃない

 大嫌いって指さして 私を追い出すの

 真っ黒な モノクロな 霧に覆われた世界に追い出すの


 Ah 道を 私の道を照らして どうか 私を歩かせて

 光は消えて 視界はぼやけて

 伸ばしても届かない空 流星群が微かに煌めいた

 夜は明けて色は変わる 目まぐるしく巡る

 日々に置いて行かれたくないの 周りじゃなくて私に

 私の夢に 私だけの空に 置いて行かれたくないの

 誰にも邪魔されない アイデンティティを歩いていくの




 7月に入り、梅雨は明けた。真っ青な空に飛行機が走っていく。雲の道をぼんやり眺めていると、ふと、夏の風が吹いた。

李珠りず―」

 呼ばれ、「はぁい」と返事をして向かう。ベランダの扉を閉めようとして、少しだけ開けておいた。

私の部屋に集まった4人が、部屋の中央に置かれたミニテーブルの周りに座っている。私もそちらへ行くと、沙希さきが笑みを浮かべて言った。

「動画、完成したって」

「え、ほんと?」

「うん。見直したところ、異常なし。もう上げられるよ」

 玲奈れいなが頷きながらスマホを見せてくる。ポージングを決める私たちのサムネイルが映った動画に、私の鼓動が大きく高鳴る。

「よっしゃ。じゃ、今から上げよっか。データ、私のパソコンに移してもらって良い?」

「上げるのは構わないけれど、チャンネル名は結局どうするのよ。いろいろ候補はあるけど、まだ決まってないじゃない」

 美波みなみが呆れたように言うと、瑠琉るるも「そうですね」と口を開く。

「名前の頭文字をとったり、高校生だから青春っぽいワードを入れてみたり……。なんとなくお洒落なものは挙がりましたけど、どれも決め手にはなりませんねぇ」

「それなら、私さっき考えてたんだけどさ」

 私が言うと、皆は目を丸くして顔を見合わせた。

 私たちのチャンネル名。穂條李珠ほじょうりず一条沙希いちじょうさき清瀬美波きよせみなみ神北瑠琉かみきたるる来栖玲奈くるすれいな、この5人に相応しい……なんて言い方をしたら大袈裟かもしれないけど、ぴったりな名前を知っている。

 私はそこに置いてあった歌詞ノートの最後のページに、シャープペンシルを走らせた。

「すかい、ず?」

 沙希が読み上げて、首を傾げる。私は首を横に振った。

Sky′s(スカイ)。複数形だけど、読み方はスカイ。どう?」

 すると皆は一斉に、頭に疑問符を浮かべた。

「どうして複数形なの? それに、どうして読み方が単数なわけ?」

 美波の尤もな疑問に、私は頷きを返しつつ答える。

「私ね、いつかアリーナとかドームとか、キラキラした場所でライブをすることが夢なんだ。でも、今の私達はアリーナやドームなんてまだ無理で、こうやって空の下で動画を撮って、YouTubeに上げるしかできない。ライブも、地域のイベントとか路上ライブとか、空の下じゃないとできないでしょ?」

「それで、空ですか?」

「そう。空が、今の私たちの居場所だから」

「由来は解ったけど、複数形云々は何なのよ」

「それは……」

 「それは?」と私の言葉を、皆はおうむ返しで訊ねる。私はもう一度、焦らすように「それは」と言って、

「……スカイズよりスカイの方が、かっこいい響きだったから」

 途端、一斉にずっこける4人。じゃあなんだ、スカイズの方が良いのかと唇を尖らせると、「ま、まぁまぁ」と玲奈が苦笑して言う。

「確かに、スカイって言いきった方が爽快感がある、かも?」

「まぁ、読み方って大切ですよね。小説も、リズム感が大切と言いますし」

「何よ……もっと壮大な理由があるのかと思って身構えちゃったじゃない」

「でも、私は好きだよ」

 沙希の言葉に、全員が顔を上げ、ノートに書かれた“Sky′s”の文字を見る。

 私たちは頷きあって、チャンネル名──グループ名を、Sky′sに決めた。

 私は勉強机のパソコンに向かい、YouTubeの動画投稿画面を開く。私の背後には沙希と美波、瑠琉と玲奈がいる。私は生唾を飲み込んだ後、

「じゃ、行くよ」

 軽い調子ではありつつも、震え、強張った声音でそう言って──マウスをクリックした。

 ローディング中のぐるぐるが数秒回転した後、動画の投稿が、完了する。

 Sky′s初のMV『ReVenge(リベンジ)』が、YouTubeという夢の道に乗った。

 たったワンクリックの動作を行っただけなのに、私達は大きな息を吐く。達成感と希望、少しの不安と大きな喜びに満ちた脱力感が、夏の空気に飽和する。

 Sky′sの活動が、始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ