間奏
ReVenge
長い道のりだったね 美しい景色 宝物の思い出
だけども最高にはまだ出会えない 僕らの旅は終わらない
荷物は経験値のみ 色は真っ白に塗りつぶして
さぁ 再びのスタートだ
無我夢中に駆けまわった 真っ青な大空の下
自分は正義で 真っ直ぐで 迷わず 純白な 才能の持ち主
私のための太陽が足元を照らすの
不安も 恐怖も 未曾有の世界も 飛び込めば生きてるって感じるの
けどね でもね 嗤う人がいるから
私を 好きじゃない 好きじゃない好きじゃない好きじゃない
大嫌いって指さして 私を追い出すの
真っ黒な モノクロな 霧に覆われた世界に追い出すの
Ah 道を 私の道を照らして どうか 私を歩かせて
光は消えて 視界はぼやけて
伸ばしても届かない空 流星群が微かに煌めいた
夜は明けて色は変わる 目まぐるしく巡る
日々に置いて行かれたくないの 周りじゃなくて私に
私の夢に 私だけの空に 置いて行かれたくないの
誰にも邪魔されない アイデンティティを歩いていくの
7月に入り、梅雨は明けた。真っ青な空に飛行機が走っていく。雲の道をぼんやり眺めていると、ふと、夏の風が吹いた。
「李珠―」
呼ばれ、「はぁい」と返事をして向かう。ベランダの扉を閉めようとして、少しだけ開けておいた。
私の部屋に集まった4人が、部屋の中央に置かれたミニテーブルの周りに座っている。私もそちらへ行くと、沙希が笑みを浮かべて言った。
「動画、完成したって」
「え、ほんと?」
「うん。見直したところ、異常なし。もう上げられるよ」
玲奈が頷きながらスマホを見せてくる。ポージングを決める私たちのサムネイルが映った動画に、私の鼓動が大きく高鳴る。
「よっしゃ。じゃ、今から上げよっか。データ、私のパソコンに移してもらって良い?」
「上げるのは構わないけれど、チャンネル名は結局どうするのよ。いろいろ候補はあるけど、まだ決まってないじゃない」
美波が呆れたように言うと、瑠琉も「そうですね」と口を開く。
「名前の頭文字をとったり、高校生だから青春っぽいワードを入れてみたり……。なんとなくお洒落なものは挙がりましたけど、どれも決め手にはなりませんねぇ」
「それなら、私さっき考えてたんだけどさ」
私が言うと、皆は目を丸くして顔を見合わせた。
私たちのチャンネル名。穂條李珠、一条沙希、清瀬美波、神北瑠琉、来栖玲奈、この5人に相応しい……なんて言い方をしたら大袈裟かもしれないけど、ぴったりな名前を知っている。
私はそこに置いてあった歌詞ノートの最後のページに、シャープペンシルを走らせた。
「すかい、ず?」
沙希が読み上げて、首を傾げる。私は首を横に振った。
「Sky′s。複数形だけど、読み方はスカイ。どう?」
すると皆は一斉に、頭に疑問符を浮かべた。
「どうして複数形なの? それに、どうして読み方が単数なわけ?」
美波の尤もな疑問に、私は頷きを返しつつ答える。
「私ね、いつかアリーナとかドームとか、キラキラした場所でライブをすることが夢なんだ。でも、今の私達はアリーナやドームなんてまだ無理で、こうやって空の下で動画を撮って、YouTubeに上げるしかできない。ライブも、地域のイベントとか路上ライブとか、空の下じゃないとできないでしょ?」
「それで、空ですか?」
「そう。空が、今の私たちの居場所だから」
「由来は解ったけど、複数形云々は何なのよ」
「それは……」
「それは?」と私の言葉を、皆はおうむ返しで訊ねる。私はもう一度、焦らすように「それは」と言って、
「……スカイズよりスカイの方が、かっこいい響きだったから」
途端、一斉にずっこける4人。じゃあなんだ、スカイズの方が良いのかと唇を尖らせると、「ま、まぁまぁ」と玲奈が苦笑して言う。
「確かに、スカイって言いきった方が爽快感がある、かも?」
「まぁ、読み方って大切ですよね。小説も、リズム感が大切と言いますし」
「何よ……もっと壮大な理由があるのかと思って身構えちゃったじゃない」
「でも、私は好きだよ」
沙希の言葉に、全員が顔を上げ、ノートに書かれた“Sky′s”の文字を見る。
私たちは頷きあって、チャンネル名──グループ名を、Sky′sに決めた。
私は勉強机のパソコンに向かい、YouTubeの動画投稿画面を開く。私の背後には沙希と美波、瑠琉と玲奈がいる。私は生唾を飲み込んだ後、
「じゃ、行くよ」
軽い調子ではありつつも、震え、強張った声音でそう言って──マウスをクリックした。
ローディング中のぐるぐるが数秒回転した後、動画の投稿が、完了する。
Sky′s初のMV『ReVenge』が、YouTubeという夢の道に乗った。
たったワンクリックの動作を行っただけなのに、私達は大きな息を吐く。達成感と希望、少しの不安と大きな喜びに満ちた脱力感が、夏の空気に飽和する。
Sky′sの活動が、始まった。




