三百二十五話
「皆の者、下がれ。この部屋から出て行くのだ。この場には私だけでよい。魔王との話し合いをする。」
国王はもう人族に未来は無いモノと覚悟している。
しかし何故か、勇者も、聖女も居ない今、直ぐに魔王が国王である自分を殺さない事を不思議に思っていた。
だからこそ、縋れる所が有ればソレに手を伸ばしたいと心底に思っている。
しかしそこに自分以外の命を賭ける事には賛同しない。
だから、潜んでいて魔王に奇襲を仕掛けた魔法使いたちにこの部屋から出て行く様にと国王は命令を下す。
余計な被害が拡大しない様にと、殺されるのであれば先ずは真っ先に自分でなくてはならないと。
「それはなりません!この場で我らが命に換えましても魔王を!」
国王の言葉に逆らう意見が飛ぶ。部屋には魔王をここまで案内して来た国王の右腕がいつの間にか入って来てそう叫んでいた。
しかしそれに国王は静かな叱責を飛ばした。
「黙れ。一目見れば解っただろう。そこまで愚かでは無いハズだお前は。馬鹿な真似はもうよせ。時間の無駄にしかならん。しかも、魔王の慈悲で今、お前たちの、私の命が狩られていない事に感謝するべきだろうに。頭に昇っている血を好い加減に下げて冷静になれ。さて、魔王、話をするのであったな。それは長くなるか?ならば、ここでは無く私の部屋にてゆっくりと話そう。どうやら部下たちがここから出て行かぬと五月蠅いのでな。であれば場所を我らが変えるしかあるまいよ。ああ、酒も肴も用意しよう。そ奴等の邪魔が入らぬ様にもしよう。どんな用事よりもこちらを優先して幾らでも時間を取ろう。さて内容は一体どんな物かな?非常に興味がある。・・・ああ、それよりも先に感謝を。こやつらを殺さずにいてくれてすまぬな。本来であれば、即座に反撃に出て殺していたであろうに。その懐の深さに敬意を。」
そう言い切った国王は絶望に染まっていた心を奮い立たせて席を立つ。
そこには余裕など一切無い。あるのはせめて最後は矜持と威厳を持って死する覚悟。
一歩一歩を深く踏みしめながら国王は玉座の裏に在る扉へと向かい魔王を手招く。
「この先の通路を通って行けば直ぐに着く。さあ、こちらに。」
「国王陛下!」
魔法使いたちはここで魔法をもう一度、「ゴーレム」へと撃ち込む。
その指示を出したのは国王の右腕だ。
国王に手招きされて動き始めようとした「魔王」を行かせぬ為に。
だが結果など最初から分かっていた。先程の光景の繰り返し。
「あーもう、別に殺す気は無いけど、これ以上鬱陶しい事すると反撃するからね?話も出来ない奴らは要らないんだよ。言葉が通じないってこう言う事を言うんだな。剣聖の時もそうだったけど、同じ言語を使っているとは思えない、話が出来ないって本当に疲れるよ。会話が出来ないあんたらに用は無い。王様との話し合いを邪魔しないでくれない?そっちの気持ちを察するのであれば、諦めたらそこで終わりって感じなんだろうけどね。でも、それって僕の言ってる事を全く考慮に入れずにそっちの都合だけで固めたモノじゃん?あのさあ、こっちの事も、僕の事も考えて欲しいのよ、そこは。事情ってモノが僕にだってあるんだからさぁ、そこはお互い様なんだよ?想像力足りて無くない?話し合いをしたいってこっちが言ってるんだからソレに乗るのも一つの手だろうに、その選択肢を真っ先に殺すこんな行動を取って来るのは短慮、浅はか過ぎるってモノだよ。蛮族なの?確かに僕を殺せば全て万事解決なんだろうけどさぁ人族には。けど、さっきの最初の奇襲の魔法で倒せ無かった事実を何ら顧みずに同じ事して来るって、どう考えても何も考えて無いと同じじゃん。やるならやるで良いけど、次はどうせならもっと工夫をしなよ。そうじゃ無きゃ思考停止と一緒だからね?思考停止するくらいならこっちの話を聞けってのよ、最初っからさぁ。そんなの何の策も最初っから無いのと一緒、なら何もしてこないでくれ。本当に、迷惑。馬鹿馬鹿しいよ。それじゃ、もう邪魔してこないでね?」




