三百二十四話
開いた城門の先には頭を下げて左右に列を成して微動だにしない城に仕えている召使たちが並んでいた。
どうやらそれは別に僕の事を歓迎していると言った訳では無い様子だったが。
(礼を尽くすって事?でも、同じく列を成して騎士がこちらに敵意を向けて来ているのは何ともなぁ)
召使たちからは恐怖で固まっていると言った感じだったが、その背後にキッチリと完全武装で立って綺麗に並ぶ騎士たちは逆だ。
今にも僕を殺さんばかりの眼差しでこっちを睨んできている。
ここで気づいた。剣聖が斬り掛かって来てい無い。斬撃が止まっている事を。
「あー、流石に城の内部に一歩でも僕が入っちゃうと止めるかぁ。ソレにこの雰囲気、空気読むくらいの分別が付くとか、もっと早く止めて欲しかったよネ、剣聖。」
こっちの言葉は一切聞いてはくれなかったのに、こうした場の様子を汲んで攻撃を止めるとか。
「話を聞いてくれそうだね国王は。で、剣聖は一緒に来るの?」
「・・・」
沈黙して動かない剣聖。その行動だけでやっと諦めてくれたのだと分かった。
この国の頂点が僕、魔王との交渉に挑もうとしているのだ。僕の話がしたいと言う言葉を国王は信じた、と言う訳では無いが、呑み込んだ、と言った所なんだろう。
剣聖はそこに割り込める状況じゃないと分を弁えたと。
ここまでに剣聖がやれるだけの事をやって通用していない。
ならばこれ以上斬り掛かり続けるのは無駄以上に滑稽でしかない。
王が決めた事に対して剣聖だけが反対を表明するかの如くに城の中に入ってまで攻撃をし続けるとか無粋以上にソレは狂気だ。
もうできる事は無いと剣聖は現実を受け入れたんだろう。その表情に納得がいっていない様子だが。
そんな剣聖を無視して僕は道を進む。騎士たちからの剣呑な視線を受けながら。
「国王陛下の元にご案内します。付いて来て下さい。」
そうして城の中へと入って見ればそこで道案内をすると言って文官らしき男が僕を誘導する。
言葉の後に一礼したその男は僕に背を向けてこちらの事など気にする様子も無く廊下を歩いて行ってしまう。
その間一切こっちに振り向いてきたりなどしない。
別に僕はソレを無礼とも思わないし、文句も無い。そのまま案内人の後ろを素直に付いて行く。
ここで僕は口を開く事は無い。この案内人と交渉をする訳じゃ無いし、別に王の前に到着する前に知りたい情報などが有る訳で無し。
そうして案内されたのは大きな扉の前。謁見の間なんだろう。
そして音も、掛け声も出さずとその扉が開いた。見えるのは部屋内の一番奥手前、一段高い場所、玉座に座っている人族。
部屋の中は一人だけ。その「国王」ただ一人だった。
そのまま僕は何らの警戒も無く内部に入れば自動で扉は閉まって部屋には二人きり。
では無かった。
「覚悟!」
十人程の魔法使いだと思われる者たちが柱や窓際のカーテンの陰から出て来てこちらへと魔法を放って来た。
「あー、ゴーレムで動いてるから魔力での探知を出来てい無いんだよねぇ。コレは油断してた。でも、なぁ。」
その魔法は狙い外れずゴーレムに直撃、その後には派手な爆発が部屋の中に反響するけれども。
「うん、大丈夫だった。焦げ跡一つ付いてもない。自分で言うのも何だけど、過剰だなぁ。」
コレは仕方が無い。相手が勇者と言う事で神の加護を恐れてかなり魔力を込めてゴーレムを作ったから。
この程度の事で破壊される様な脆い作りにはこのゴーレムはなっていない。
「それじゃあ、どう見ても最初っから国王は諦めていた様子だったけど。この出迎えは誰が考えて実行したの?」
僕は軽い感じで質問を飛ばす。目の前の国王に。
扉が開いた時に真正面、僕の視界に入っていた国王の表情は憔悴しきっていた物だった。
そこに期待も希望も一切残っていなかった様に僕には見えた。
しかも魔法の爆発が終わって煙が消えた後もその表情に一切の変化が見受けられていなかった。
そんな人物が最後の賭けだと言わんばかりにこの様な騙し打ち、奇襲をして来る様には思えない。
その様な企みをしていたなら魔法が直撃後のその顔には「やったか!?」と言った期待が浮かんでいても良いはずなのだ。
ソレも一切無いと言うのであれば、この襲撃は国王が発案して実行した物では無いと言う事。
寧ろ最初から反対していて逆に何をしても無駄だと悟っていたと言う事。
「あー、まあ、もうこの際だから誰が犯人か何てどうでも良いか。さて、王様、話を聞いてくれないか?」
全くの無傷のゴーレム。これに魔法を撃って来た者たちは「馬鹿な」と口々に溢して唖然とこちらを見ていた。




