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三百二十六話

 僕は今、ゆったりたっぷりノンビリと、引き籠もり生活を続けている。


 勇者を倒したあの日から既にもう三年の月日が経過している。


「うん、このお茶、美味しいねぇ。この知能玩具も面白い。連作物だったよね?中々に良い暇潰しだなぁ。次の新作が楽しみだ。」


 僕は人族から命を狙われ無くなった、訳では無い。


 今も僕の元へは刺客が放たれている。とは言え、正確に言うと「そこ」には僕はいないのだが。


「迷路の最奥に設置したゴーレムの元に辿り着いた数は今日は何人?」


「はい、本日は五人一組です。相当にやるようですが、如何なさいますか?」


「じゃあいつも通りに演じてお帰り願おう。」


 国王とは色々と話し合いをして決めた事が幾つかあるのだ。


 ====   ====    ====


「ふむ、よく来たな、勇気ある者たちよ。しかし、貴様らにはまだまだ力が足りん。出直してこい。我に挑むにはそれ相応の資格と言うモノがある。貴様らにはソレが無い。」


「下らぬ事をほざくな!ここまで来た!皆!やるぞ!今こそ俺たちが英雄となる!覚悟!魔王!」


「器が小さいな。哀れである。慈悲に溢れる我がそんな貴様らにくれてやるものはこれしかない。」


 玉座に設置してあるゴーレムから響くその声の後には「勇者五人組」はその場から消えていた。


「うーん、質が上がって来てるなあ。迷路の攻略速度、上がってるねえ。転移魔法を覚えておいて良かったよ。んじゃ、もう送っちゃったけど、またのお越しを~、ってね。あー、迷路の改築をしなくちゃいけない時期かなあ。王国の「勇者制度」は上手く回っている様で何より何より。」


 五人は王国の城、玉座の間に送られていた。これまでに魔王が人族を殺した数は「0」である。


 あの日に魔王と国王が交わした話はザックリと言ってしまえば「不可侵」だった。


 魔王は王国を蹂躙しない、その代わりに、王国は魔王討伐を掲げない。


 だが今のこの光景はそれに矛盾している。


 しかしソレを提案したのは魔王だった。


 ===  ===  ===


「そうだよねぇ、ここで王様が「魔王に手出ししちゃダメ」って言っちゃうのは、王国崩壊に繋がりかねないもんねぇ。それじゃあさ、以前に僕が作った地下迷路があるから、そこの最奥にコレ置いておくから、ソレを討伐させるって言う目標?みたいな?そう言うのでどう?僕は僕で別の所でノンビリ過ごさせて貰う感じで。」


 僕からしてみれば最大の懸念であった勇者が始末できたので、王国に手をこれ以上出す気なんて無いのだ。


 別に人族をこの世界から滅ぼす、などと言った大仰な願いがあった訳でも無い。


 世界征服、などと言った馬鹿げた事をする気なんてそれこそ、全く無い。


 ここで王国が二分して内戦になる様な事態に持って行こう、などと言った気も一切無い。


「細かい所とかはそっちで何とかでっち上げて貰って。魔族は今や勇者にその数を減らされて絶滅しかけてるけど、僕はそこに興味も無いんだ。だから、魔族の残党狩りとかは勝手にやって、どうぞ。」


 今の僕は人族にも魔族にも、この世界の行く末にも興味が無い。はっきり言って。


 神にも、魔神にも興味が湧かない。


 穏やかに今後を過ごす、只それだけを僕は願い胸に秘めている。


 しかしそんな穏やかな日々にも、時には多少の外部からの刺激も必要、欲しいと願う時もあるだろう。


 だから、人族を利用する。魔王に対し敵意を抱く者たちを。


「諸々上手くやってよ王様が頑張ってさ。僕は一切そこら辺の所に口出ししないからさ。ああ、あの大森林の中に在るホラ、僕が言うのも何だけども、魔王城?って言えば良いの?あそこも勝手に使えば良いよ。」


 こうして好き勝手に言いたい事を言って僕は席を立つ。そこでふと思う。


「うーん、何かあればメーニャと相談かな?あ、メーニャって言うのは僕の、何だろう?相棒?かな?あー、もしかしてメーニャ、この場に居る?」


「はい、魔王様、御用があれば何なりとお申し付けください。」


「おおう・・・居たんだ。まあ、いっか。話は、最初っから聞いてた、あ、うん、みたいだね。それじゃあ王様と後の詰めはメーニャに一任するから、後は宜しく。」


 ===  ===  ===


 こうして出来た「勇者制度」は王国中に発布されてコレを聞いた腕自慢が魔王を狙い動き出す訳だが。


 魔王にとってそんな者たちは何らの脅威などでは無い。


「さて、明日はどれ位の人数が最奥までやって来るかなぁ。」


 今の所で勇者も聖女も現れる兆候は無い。ソレもそのはず。


 魔王がこれまでに攻略して来た、神と魔神が交わした「契約」は既にこの世界から消滅しているのだ。


 今後にこの世界に魔王を消滅させる事の出来る存在が現れる事は無い。


 魔王はずっとこの先、長い年月を引き籠もり続ける。


 魔王と言う人族の敵が存在し続けながら、世界は緩やかな変化をしながら、平和を保ち、文化を発展させ、改革を続け、繁栄をしていく。


 その年月、一万年。


 それは神も魔神も予想だにしなかった世界の結末だった。


 その事を知る者は、いない。


「そう言えば僕って寿命は有るんだろうか?魔王って、どうなの?まあ、いっか。引き籠り続けていればその内に何時か暇に殺される時が来るよネ、なーんてな?」


 ーーーーおわりーーーー

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