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三百二十二話

 城では大騒ぎになっていた。聖女が殺害された事、勇者が殺害された事、この二つの事実が早々に国王の元へと報告がされたから。


 魔王の操るゴーレムが勇者しか倒せ無いからと言って、その近くに王国兵が控えていなかった訳では無い。


 連絡員が即座に動き、勇者が討たれた事実を国王の元へと運んだ。


 そして、聖女の部屋に誰も近寄らせない様にとメーニャが魔法で工作を仕掛けていたからと言って、これまでの城での生活で聖女がずっと一日中そのまま放置されていた訳では無い。


 メーニャの仕掛けていた防音の魔法は長時間持続するモノでは無い。


 所用が無いかどうかを城で働くメイドが用事伺いに定時で部屋を訪れていたのだ。


 そこでそのメイドが見る物は、黒焦げになって床に転がる聖女の頭部、ソレと血の池に沈むその胴。


 次に、虫の息で床に倒れる魔族が一体。これはもちろんマードックだった。剣聖との戦闘で致命傷を負わされたのだ。まだ生きていると言うだけで、指先一つ動かせる様な状態では無い。


 この衝撃的な光景に静かにできるはずも無い。これに城中に響く程のメイドの悲鳴でこの状況は即座に国王の耳に入る事となった。


 メイドの悲鳴、丁度それはメーニャの仕掛けた防音の魔法が途切れた瞬間だった。


 そして国王にとっては最悪な事に、二つの報告をタイミング悪く同時に聞く事となり。


「・・・終わりだな。人族の希望は既に全て潰えた。この様な前代未聞、対処のしようもない。例え王国の武を全て投入しようとも魔王は討てぬだろうよ。」


「信じられませぬ!その様な弱気、国王陛下、考える事を止めてはなりません。魔族、魔王への対処を議会を開いて直ぐにでも決議を!」


 この国王の発言には側近が「諦めるな」と、「気を強く持て」と、言葉にするが。


 その意は国王には余り響かず。


「どうしようも無いのではないか?事を目撃した連絡兵の言葉を疑えと?聖女の部屋の凄惨さを目撃した者は多数。もはやコレに「信じない」などと言うのは寧ろ滑稽、陳腐だろうに。」


「まだ王国は終わってはおりませぬ。このまま座して滅びを待つなどと言った事は致しかねまする。国王陛下、方針を。王としての責任を果たしてください。」


 この側近は国王の右腕と言える。ズバズバと厳しい意見を口にしても国王からは何らの咎めは飛んでこない。


 遠慮無し、それだけの信頼関係を二人が築いてきたのだと分かる会話。


「このまま何らの抵抗もせずに滅びるのも、怯えつつも敵意を持って魔王へと立ち向かい返り討ちに遭って死すのも、同じ。同じ消滅だろう。ならばどうせなら心穏やかなままに消されたいモノだ。」


 国王は絶望に囚われて生きる気力が底辺にまで落ち込んでいる。その目は生気無く遠くを見つめている。


 こんな状態で心に希望を浮かび上がらせてヤル気を出させるのは至難だろう。


 言葉での説得は到底無理無茶な話であった。


 そこに続報、勇者殺害をした存在が城に接近中、などと。


 そこに追加される余計な絶望。


「剣聖殿が何度もその剣で斬り付けてその歩みを止めようとしておりますが、剣筋一つ付けられておりません!相手はゆっくりとした歩みで城に向かって来ております!」

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