三百二十話
虚しい、剣聖との対峙はコレに尽きた。
だって僕の操るゴーレムを一切傷付ける事が出来ない剣聖が必死にずっと斬り掛かって来てくるから。
このゴーレムを倒す事の出来る存在は勇者しかいなかった。
しかしもうソレも無理。僕が勇者をキッチリ止めを刺して殺害をしたから。
聖女もどうやらメーニャが始末を付けてくれた様なので僕にはもう今後の憂いが一切無い状態なのだ。気持が非常に軽い。
でも、僕はそう言った状況になったからと言ってこの地下から地上に出て行く気は一切無かったりする。
この世界には神が居て、そしてその力を、神の加護として人族に与えていたのだ。
勇者が居なくなったからと言って、その後釜がこの後に出てこないとも限らない。
神と魔神との間にどの様な約束事が結ばれていたのかなど、僕は知らない。
もしかしたら第二、第三の勇者、聖女が現れて「御都合主義」で僕を殺しに来る可能性だって否定できない。
僕はそう、最初から、今の今まで、根本的な所を一切知らないのだ。
いや、僕だけじゃ無く、この世界に生きとし生けるモノの全てが、この人族と魔族、勇者と魔王の闘争に神と魔神がどの様な契約を元に始めたのかを知らないと思われる。
こうしてゴーレムに斬り掛かって諦めていない剣聖も漏れ無くそう言った事は一切僕と同じで何も知らないんだろう。
「ねえ、好い加減にしない?僕は別にこのままでも構わないけど。でも、そっちは体力有限でしょ?疲れて来てない?ちょっと休もうよ。」
「その様な事を言うのであれば、その木偶の棒を通すのでは無く、その姿を現わして直接に口を開いたらどうだ?」
「・・・えぇ?嫌だよそんなの。僕は臆病者なんだよね。もうこの先、絶対に命を脅かされないって完全な保証が無ければ姿を現わす事なんてできやしないよ。そんなモノをそっちは用意なんて、でき無いでしょ?落ち着いて話を聞いて貰いたいんだけどなぁ僕は。結局のトコ、気は済んだの?」
「・・・勇者とは曲がりなりにも長く旅を共にして来た。この程度で気が済むなどと言う事は無かろうよ。しかも勇者は人族の希望、切り札だったのだ。ソレを殺されて素直に話が聞けると思うか?そうだろう?魔王よ。」
「ああ、うん、まあそうだよねェ。けど、そこを何とか我慢して貰って。僕としてはもう話し合いでこの場を収めたいんだけどもね。」
「それはそちらがこの私を脅威と見做していないから吐き出せる言葉だな。はぁ・・・馬鹿馬鹿しい。」
ここまでの会話をしながら剣聖はずっとゴーレムに斬り掛かり続けていたが、突然にソレを止めて来た。
その表情は物凄く疲れが滲んでいる様に僕には見えた。
お疲れ様、などと一言声を掛けたくなった。だがそんな事を口に出せば恐らく剣聖は再び斬り掛かって来るだろうなと思って言葉を呑み込んだ。
そこで直ぐに剣聖の気が変わる前に僕は自分の一番伝えたい事を口に出す。
「僕は人族を殲滅する気も無いし、家畜にする気も無いし、奴隷にする気も無いんだよ。ブッチャケ、一切関わりたく無い。正直、これから先に僕の命をもう二度と狙ってこないのならば勝手にしてって感じ。」




