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三百十九話

 僕がそんな風にして途方に暮れている時にその人物は現れた。


 剣聖だった。全身ズタボロの。


「・・・希望は潰えたか。ならば、最後まで足掻いて見せよう。」


「・・・もう止めにしない?ああ、メーニャ、下がっていて。向こうはどうやら聞く耳を持って無いみたいだ。」


 考えてみれば当たり前。人族である剣聖にこちらの言葉が届くとは思っていなかった。


 だって見たら即殺、人族の敵を前にして剣聖が動かない訳が無かったのだから。


 こうしてメーニャがその姿を即座に消す。剣聖の危険性が理解できている証拠だ。


 この場に残ったのは僕の操るゴーレムと剣聖のみ。


 ここで僕は即座に剣聖が斬り掛かって来ると思っていたのだが。


 向こうは少しだけこちらを観察する為に止まっていた。


「口を開けたのか。なら交渉と言う手もあったのだな。だが、何もかもが遅かったのか。何処で何を間違えた?何がいけなかった?」


「・・・あー、喋った事に多少なりともビックリしてる?それと、自問自答かな?まあ、勝手にこっちがソレに答えるのはどうかと思うけど、何も間違えてはいなかったんじゃ無い?イケない事も無かったんだと思うけどね僕は。知らんけど。いや、うん、神も魔神も、何も間違っちゃいなかったんだと思うよ。知らんけど。多分、何がとか、誰がとか、そう言った悪いモノって何も無かったんだと思うんだよね、僕は。」


 ここまで饒舌に僕が喋るのは勇者と言う最大の、最高の壁が、敵が居なくなったからだ。


 そうで無かったらこんなにも安心して、しかも剣聖相手に会話などしていない。


 こうして剣聖を目の前にして僕はこれっぽっちも恐怖を覚えない。


 もっと以前の僕だったら一目散に逃げ出していたと思うのだけれども。


 と言うか、コレを会話と言って良いのかどうかは分からない。


 相手と意思疎通出来ていなかったら、それは只の独り言の掛け合いみたいなモノだ。それは話をしている、対話しているとは言わない。


「・・・魔王よ、キサマ、何をした?」


「え?いきなりソレ?脈絡何にもなく無い?とは言え、まあ、ソレに答えるのも今らなやぶさかではないかなぁ。話長くなるよ?それに、ソレを聞いた所で現実は変わらないけど、良いのかなぁ。」


 茶番、そんな風に僕は思った。この剣聖の質問に。


 だって剣聖が何を知った所でどうにも、こうにも、もう何もかもが元には戻らないから。


「聖女の殺害も、キサマの策だな?」


「え?聖女もいなくなってくれたのか?ああ~、そうか、やってくれたんだ、メーニャ。」


「・・・あくまで惚けるのか。もう良い。」


「え?ちょ!?」


 突然にここで剣聖は斬り掛かって来る。だがこのゴーレムの身体がその剣撃で傷つく事は無かった。


 いきなり会話をぶった切られた事で僕は下らないと思っても「ああ、なるほど、剣聖ですね、こう言うとこも」とか思ってしまった。


「話が通じていないなぁ。そっちから色々と振って来たのにナニコレ?って言うか、倒せないって解ってるのに挑んで来るんだなぁ。」


 会話が成立している様で、していない。


 こうして僕の操るゴーレムと剣聖の戦闘は始まった。

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