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三百十七話

 剣聖は姿を隠し勇者の状態を観察し続けた。


(神の加護の力が有るからか、止めは刺されずにいる様だな。私が何時までもあの場に留まっていても出来る事は余りにも少なかった。ならばこうしてあの場を離れたならば、私がやれる事は何だ?・・・勇者を攻め続けるあの木偶の坊を私の代わりに止める事が出来る存在を此処へと呼ぶ事だろう)


 剣聖は直ぐに答えを出す。どう考えてもゴーレムを止める為には「神の加護」が必要だと。


 しかし勇者のソレはもう枯渇していて自身の命をスレスレで繋ぎ止めるくらいしか力が残っていない。


 ならば今、ここへと連れて来るべき存在は「聖女」だと、そう即座に答えを出したのだ。


 剣聖はこうして城へと走り出す。迷いは無い。聖女をこの場へと引っ張り出して勇者を守らせる為に。


(聖女の力では魔王は斃せん。生かすのならば、勇者でなくてはならん)


 剣聖は最悪の事態を考えて聖女と言う存在ですら捨て駒に、勇者の盾にしようと考えていた。


 それは一方では間違いでは無く、そして見方を変えれば間違いではあった。


 しかし今の現状ではソレは正解と言えたのだが。


 城に到着した剣聖は門番の制止を振り切って場内を走り続ける。聖女の居る部屋は既に把握していた。


 何かあった時の為にはすぐさま聖女を戦場へと引っ張り出す為だ。


 だが、ソレも、もう遅かった。


 その部屋に居たのは。


「剣聖・・・」


「貴様・・・やったな?」


 剣聖はその存在を目にし、そして床に転がる「聖女だったモノ」を視界に入れると即座に部屋に居た者へと斬り掛かった。


 しかしソレを紙一重で避けたその者は。


「どう言う事だ?何故キサマがここに居る?」


 その疑問に切り返す剣聖は警戒を怠らず相手の動きを見る為に動きを止める。それは躱されると思っていなかったその一撃を避けられたからだった。


「それは、こちらの言葉だ。まさか、まさかこの様な事になろうとは・・・」


 手遅れ、聖女は既にメーニャに殺害された後であり、剣聖の考えは既に遅い。余りにも決断が遅かった。


「既に聖女が殺されていた事はこちらも想定外だった。だが、別にコレは喜ばしい事だ。私にとってはな。だが、お前にはそうでは無い。一足どころか、二つも三つも遅かったようだな?剣聖。」


「・・・お前がやったのではないと?いや、もう過ぎてしまった事だ。今更、元には戻らん。何を問うた所で時間も戻るはずも無い。犯人がお前と言う訳で無くても、今この場で見逃すという選択肢は無い。死ね、魔族。」


 そう言い終えた剣聖が一瞬の内に相手の懐に移動して剣を振るう。しかし。


 その剣は弾かれる。魔法の障壁で。


「このマードック!簡単に殺されてやる訳にはいかん!今ここでキサマを仕留めれば脅威が一つ減る!ならばこの命!賭けるは今だ!魔王様万歳!」


 終わりはもう直ぐそこまで近づいていた。

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