二百九十三話
「ようやっと来てくれましたか。剣聖殿、同時に仕掛けます。宜しいですか?」
間も無くして剣聖が現場に到着、その後に事情、現場説明などをせずに勇者は剣聖へと言葉を掛ける。
「うむ、何時でも良い。・・・はッ!」
勇者がまだ暴れ続けている「ゴーレム」へと向けて走り出す。
ソレに合わせて剣聖もその後を即座に追った。
「たりゃあ!」
「せい!」
短く、そして気がしっかりと込められた声と同時に剣は振り下ろされたのだが。
「硬い!」
「ぬ!?」
その攻撃は効果を現す事無く弾かれた。
「次!魔力を込めます!・・・はッ!」
「ふむ・・・そりゃぁ!」
暴れ続ける対象のその動きの隙を突いて同時に剣が振り抜かれる。が、しかし。
「やはり!只単純に硬い!そして・・・魔力の桁が段違いです!」
「なかなかに斬りがいのある案山子だな。」
魔力斬撃も表皮に僅かに筋を彫るだけの、軽微とも言え無いダメージにしかならず。
「手応えがおかしい!剣聖殿!気づきましたか!?」
「ふむ、こやつは魔族では無いな。良くできておる。剣に返って来る衝撃は、金属に近い。そしてついでに言うと・・・生物には必ず付いて回るはずの「意」が無い。」
「それは・・・」
勇者と剣聖は意見を交わしながらも連続で剣を振り続けていた。
僅かでも傷が付くのならば倒せない相手では無いと。
だがここで勇者がその動きを止めて後方へと下がる。剣聖もソレを見て攻撃を止めた。
「おかしいと思っていました。剣聖殿、こいつ、もしかして・・・」
「そうであろうな。込められておる魔力の質も量も考えられん程の具合だ。ここで何百何千何万と、幾ら同じ場所に剣筋を当てて削って行ったとしても、コレを止められんだろうな。時間の無駄と言う奴だ。これは、中身の無い人形だ。魔族ですら無い。」
「ソレでも止めなくてはなりません。コレからは、恐らくですが、魔王と思われる魔力を、私の中の「力」が感知しています。なら、これを糸口にして本物を引っ張り出します。もしくは居場所を探り当てる。」
「・・・それは恐らくは無理だろう。こんな玩具を出して来る様な魔王だ。自身はその身を隠して何処かでこの今の状況を観察して我々を嘲笑っているのではないか?性格の最悪な魔王なのだろう。余り頭に血を登らせるな。焦っているのが見え見えだ。落ち着け。向こうの思う壺だぞ?」
「書庫では何らの情報を得られませんでした。なら、手掛かりになりそうなコレを頼りにするしかありません。ここで手をこまねいている場合でも無い。早急にこいつを止めて何処からこいつがやって来たのか、魔力の残滓を調べます。魔王を追い詰めるにはそれしか道は無さそうなんです。神の加護の異常は時間で解決しそうな問題なら良かった。だが、そうはならない様子。なら、やるしかない。」
そう言った後に勇者は剣を正眼に構えて静かになる。
この様子を見て剣聖は諦めた様子で小さい溜息を吐くと「ゴーレム」へと踏み込んで行った。




