二百九十一話
「どうなるだろうねぇ。」
「直ぐにバレるかと。しかし、最初の一体目はそこそこに時間は稼ぐと思われます。」
「そっか。まあ確かに勇者には通じ無さそう。けど、ソレでも構わないのは今回の計画の内に入ってるしね。」
反撃の狼煙、など言った大層な事を口にするつもりは僕には無い。
精々が強めの嫌がらせ、その上で勇者の「神の加護」を僅かでも削る事が出来れば良い、そんな緩い感じだ。
ソレと今回の件で王国が疑心暗鬼に陥れば良いな、そんな程度だったりする。
後は首都の復興に金を使う事になって勇者への支援が滞るとか、金額の規模が縮小されるなど、そう言った狙いも含んでいたりする。
「今回の事で勇者の神の加護がどれ程の威力を発揮するか、要注意だね。僕らの居る位置を察知される、何て事になったら腹を括るしかない。とは言っても、ハイソウデスカと真正面から勇者と対峙する気は無いしね。何処までも逃げ回ってやる覚悟さ。」
僕がこれまでにどれだけ魔法で地下を掘削して来たか。
穴を掘って、埋めて、その繰り返し。この身を人族の目に絶対に晒さぬ様にとそれこそ必死でやって来たのだ。
この首都の面積は相当にある。それは要するに、その地面の下の広さは考えるのが億劫になる程に膨大と言う事だ。
そこを僕の得意の穴掘りで逃げ回れば勇者などに易々と捕まえられるはずも無い。
もし捕まえ様とする事が有ったら、それは勇者の神の加護、その力を多量に使用する事となるだろう。
この度の「ゴーレム」はその神の加護、勇者の力を削ぐ事が出来るかどうかの実験でもある。
実験が上手く行けば畳み掛ける様にして「ゴーレム」を次々に投入して勇者を追い詰める作戦だ。
「キリの良い数で百体は作ったからね。コレが役に立って貰えないとなればこの苦労も水の泡だ。今日中に結果が得られると良いんだけど。さて、もうそろそろ二体目を動かす時かもね。勇者が来ちゃったし?」
首都の混乱をより大きな物とする狙いで「ゴーレム」は各所に配置してあっていつでも動かせる様にしてあった。
「それにしてもメーニャがゴーレム作成の知識を持っていたなんてねぇ。何でも知ってるよね、メーニャは。」
「王国の書庫を調べた際にその手の書物も中を確認しております。その時に作成方法を頭に一応は入れておいてありました。何かに使えないかどうかと思いまして。」
この「ゴーレム」の材料は身近で、そして簡単な材料だった。
それは土。只の土。しかし、魔力を含ませて圧縮したものだ。
ここでこれまでの僕の「暇潰し」で上がった腕前が光った。
地下の部屋を作った際にその内装が寂しいと思って壁やら柱やらにレリーフを彫ると言った事をしていた事がある。
その技術はやればやる程、凝れば凝る程、上がっていったのだ。
「ゴーレム作りも結構最初の方から僕も造形に拘り始めちゃって、そのせいで数を揃えるのに時間が掛かっちゃったよねえ。でも、楽しかったんだけどもその時間も。」
先ずは材料の土に魔力を浸透させて馴染ませる。その後にソレを魔法で「人型に」圧縮する。
ザックリと言えば、作成方法はコレだけ。簡単だ。けれども僕はそこで造形に拘ってしまった。
魔王らしく見せなければならないだろうと言う事で、様々な見た目、細部にまで拘った。
その種類も遊び心が過ぎて、角の形状やら角度やら、肉体のバランス、筋肉の盛り上がり具合、顔の造形なども色々弄った。
そのせいでかなりの数を作成し、時間も掛かった。
そんな完成後のゴーレムは僕の操り人形の様な物で。当然の事に僕の魔力から出来上がっているので自由自在。
「このゴーレムがもしも人族を事故であったとしても殺しちゃった場合は、僕がやった判定にされるのかな?その確率は高そうだなぁ。どうなんだろう?そうならない様には細かく操縦する気ではいるんだけどな。」
ゴーレムの視界を僕は共有していた。何せゴーレムを動かしているのは僕の魔力なので、当然にソレを利用してゴーレムの視界を共有する魔法も発動可能な訳だ。
そして今の所は人族への被害は建物以外には無い。だから、当然に僕への影響は無いと思いたい。
「さあ、どうでるの?と言うか、さっきから勇者が動かないんだけど。即効でバレたかなあ?」
ゴーレムと共有している視界には勇者が映っていたのだけれども、その勇者が訝し気な顔をしているだけで攻撃してこない事に僕は多大な不安を覚えさせられた。




