二百八十八話
「勇者も聖女も動きが無い、かぁ。ソレはソレで僕としてはホッとする所なんだけどもね。だけど、こちらが今後にどう動いて行けば良いかの対応もこれじゃ決められないし、どうしたものか。」
メーニャの報告を聞いて僕はぼやく。何時も同じ事の繰り返しをして来ている様に思う。
僕はずっとこうして引き籠っていて、メーニャが集めた情報を聞いて愚痴を溢すくらいしかして来てい無い。
ド派手に動き出せるなら動きたいのだが、そうも言えない。勇者がコワイ、神の加護が恐ろしい。
あと剣聖もついでに怖い。こいつは突然に何をして来るか分からない恐ろしさがある。
「聖女は別にもう怖いとは思わなくなったんだけど、コレは何がそうさせるんだろうか?僕は油断をして来ているって事、かな?でも、何だかそんな事では無い様な気がする。僕自身の事なのに、僕がソレを一番理解できていないって言うね。」
自分で自分の事が解からないのは最初っからだ。僕は未だに自身の存在が大元は一体何なのかを知らない。
この身体は「魔王」と言ったモノと言うのは散々に理解はした。
けれどもこの中身の「僕」がどうしてもわからないまま。
それでも殺されるのなんか真っ平御免だから今までやって来たのだけれども。
「そろそろ決着を付けないと、ダメなんだろうなぁ。だけど、真正面から堂々と対峙するのは絶対に無しだ。神の加護を削りに削って初期の頃の力の無い勇者にしなきゃ、僕は只単にサクッと殺されちゃう。それだけは解る。メーニャ、これまでに試した内容は聖女への嫌がらせばかりだったよね?なら、今度は勇者へ切り替えだ。とは言え、神の加護を削るって言うのに具体的な方法とかは全く分からないんだけどもね。どうしよう?」
勇者の何が恐いか?それは只単純「神の加護」が問題なだけだ。
それさえ何とか出来てしまえば僕は完全無敵、絶対無双、究極存在として、人族から命を狙われても何らの心配もなくなる。
「魔王様、一つ案が御座います。ですが、これをされると魔王様の御気分も悪くなる事もあるかと。」
「え?何々メーニャ?それちょっと聞かせて貰える?」
確証は無いと事前に前置きされてメーニャから驚きの案が齎された。
ソレを聞いた僕の感想は。
「あぁ、そう言う感じね。それは妙案だなぁ。けど、それって一回しか通用しなくない?・・・いや、二回、三回くらいはイケちゃうかも?それで神の加護を消費して「元に戻らない」なら、大成功かぁ。試してみる価値はあるね。勇者弱体化大作戦だね。うん、僕は名付けの才能は無いみたいだ。」
こうして動きの無い勇者へとこちらから仕掛ける作戦をメーニャと練る事になった。
「これに食いついて来ない、って事は無いだろうからその時には聖女と剣聖の動きも良く見ておかないとね。それと、僕の安全もしっかりと確保した状態でやらないと。万が一にも勇者にコッチの居る位置を悟られない様にしないと。うーん、結構難しいなぁ。」
不安は有れども覚悟はせねばならない。時間経過と言う老衰での勇者撃退は望みが薄いのだから。
引き籠り続けるのは変わらないが、ソレでもこちらから仕掛ける方法は無い事も無いのだ。
今はこちらが動く番である。でも、絶対に僕自身の姿は勇者の前に曝け出さない。
「やるだけやって様子見、じゃ無く、ここで一気に形勢を逆転させたいね。」
こうしてメーニャからの提案から三日を掛けて準備を整えて作戦を開始した。




