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二百八十六話

 城の中は真っ二つに割れる。勇者派と聖女派である。派閥が出来てしまったのは仕方が無い事だった。


 聖女には魔王を討伐できる力は、無い。しかし、魔族の襲撃から首都を守った功績がある。


 だからこそ自分の事だけしか考えない「貴族」たちが聖女派となって数が膨れ上がっていた。


 魔族の襲撃など聖女の結界に阻まれて届かない、安全だ、このまま閉じ籠って居れば自身の命を脅かしてくる脅威は無い。


 そんな安易で愚かな思考の持ち主が多いのだ貴族の中には。保身、只それだけに尽きる、貴族たちのその動きは。


 首都にまで攻め入られた事実、そして恐怖からか、現実を分かっていない。


 魔族など恐るるに足りず、馬鹿な貴族たちはそんな空気感で「魔王」と言う根本を見ていない。


 逆に勇者派には王を筆頭としてマトモな思考を持つ者が中心になっている。


 しかしその数を比べると聖女派よりも圧倒的と言える位に数が少なかった。


 それだけ程良く王国は「腐っている」と言う事実がここでハッキリと表面化した。


 コレには流石に国王も頭を悩ませる。どうしたものかと。


「勇者と聖女殿が力を合わせて魔王討伐へと協力体勢を取ってくれれば問題は全て片付いたも同然であろに・・・何故聖女殿は頑なに勇者との話し合いの場に出る事を拒絶するのだろうか?」


 この悩みに答えるのは国王の右腕として国を支えて来た宰相だ。


「恐らくは他の貴族たちの入れ知恵かと。聖女が盾となりて国を守り、勇者が矛として魔王を刺す、その様な事を吹き込んでいるに違いないでしょう。話し合いの場への参加をここまで頑固に拒絶する理由までは計りかねますが。」


 話し合いをするくらいだったら別段これ程に拒絶を示す必要は無いはずが、聖女は断固として会議の場には出席しないと言い続けている。


 これには流石に国王は教会へと要請を出して「教皇を引っ張り出して聖女を説得させるべきか?」と悩む。


 幾ら何でも教皇の命令であれば聖女であろうとも動かざるを得ないのではないか?そう言った安直な考えである。


 聖女を城に招き賓客として自由に過ごさせている状況は、余りにも今の危機的状況からして解消したい、国王はそう思っていた。


 首都を守ったその働きに報いる為に国として聖女を城に招いて日々せっせとその世話をしていたのだが。


 今はそんな事をしている場合では無い、余裕など無い、一刻の猶予も無い、そう感じている。


 勇者が口に出した「神の加護で魔王を捕捉できない」と言う発言は今後の人族の未来に対して余りにも重い。


 魔王の排除が出来なければ人族の将来に暗雲を残し続けたままになる、そんな子供でも分かり切っている事を聖女派の貴族たちは一切理解していない。


 今回の事で国王はハッキリと認識する。愚物、聖女派の貴族たちへの印象はこの度の件で大幅に下落、底値を更新した。


「勇者の方はどうなっておる?」


「はい、国王様、どうやら勇者の権限で書庫に関連する職員全員を招集してこれまでの歴史を洗い浚い調べている様です。」


「その成果は?」


「未だ。」


「・・・はぁ~、人員を増やせ。早急に調査を進める方針で行く。」


 コチラから積極的に聖女に歩み寄る事はできない。聖女を頼れば聖女派の貴族たちが今よりもっと調子に乗る。


 そう考えた国王は緊急で命令書を発行して調査委員会を発足させるのだった。

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