二百八十四話
話し合いは結局の所、首都から出られなければ安全とは言えない、と言った分かり切った結果しか齎さなかった。
メーニャが「駒」として育てた人族を使って聖女、或いは魔道具の排除などは既にもう何度も試していた。
けれどもそれは全て失敗に終わっている。
首都全体が「聖女万歳」「流石聖女様」で浮かれ上がっているのだが、しかし当の聖女本人は自身の周囲に信用ならない人物を寄せ付けさせず、「駒」を近付けさせる隙すら無い。
魔道具の方も同様で城内部に「駒」を潜入させての捜索もさせたけれども、ソレも上手く行く事は無かった。
お手上げだ。メーニャ自身で動いても、「駒」を使って策謀を巡らせても、どうやら聖女の持つ神の加護はこれらを弾いてしまうらしいのだ。
「・・・ねえメーニャ?これ、詰んでる?」
「いえ、諦めてはいけません魔王様。何かしらの突破口が在るはずです。」
「でも、神の加護に僕らはこうしてまんまと閉じ込められて突破できていないんだから、もうコレは「動くな」って事なんじゃ無いかと思うんだ。」
「・・・そうですね、確かに無駄にこちらから仕掛ける理由が無いのは確かですが。」
「そうなんだよ、多分、このまま居ても絶対に僕らの事はバレないんじゃない?このまま閉じ籠っていても良い様な気がするんだよね。」
そうなのだ。所詮相手は人族であり、寿命と言った制限がある。
ならば神の加護持ちの勇者も聖女も、その寿命で死ぬまでここで僕は待って居れば良いだけ。
「いや、待てよ?そもそもに勇者も聖女も、寿命で死ぬの?曲がりなりにもこの二人は神の加護を持ってる訳で、その使命が果たされるまでは不老とか、そう言った事は有り得ないよね?・・・不安になって来た。」
自分で思う。ヤバイ事を思いついたものだと。
神の力の理不尽さは充分以上に理解した。していたつもりだが、ソレを超える「御都合主義問題」だ、この寿命の件は。
「・・・確かにその可能性は無きにしも非ずかもしれません。これまでの歴史で記録に残っている一番長い人魔戦争と人族が定義していたものは確か、十五年だったかと。」
「えぇ・・・?微妙・・・」
どうやら過去の勇者の中には、力を付けた後に魔族を先に多く片づけてから魔王に挑んだ奴が居たらしい。それは邪魔者を先に排除する事を目的としたモノらしいが。
これまでにメーニャには色々と調べ物などを頼んでいたのでその際にこの話を知ったのだそうだ。
そしてその時の戦争は十五年と言う期間を費やしていたと。
そして追加情報でメーニャは知りたく無かった事実を伝えて来る。
「その際の勇者は見た目が一切変わらなかった、と言った記述があったはずです。・・・魔王様、これは・・・」
「うん、ヤバイね。だって今の勇者ってもう相当に力を付けたって事だったよね?それこそ、僕を斃すまでは不老不死なんじゃね?とか思う。聖女の方も、もしかしたら相当に長生きするかも。」
いよいよ以って首が真綿で絞められているかの様な気分になる。
放置していれば僕の勝ち、時間が解決、と思っていたのに軽くひっくり返された。
どうやら僕と勇者のケリを付けるには「なあなあ」では済ませては貰えないらしい。時間で解決とはさせて貰えないらしい。
そこでふと思い出す。勇者と聖女がダンジョンの攻略を巡ってケンカしていた事を。
「あーあ、聖女と勇者が争って共倒れになってくれないだろうか?そんでもって勇者の力、或いは聖女の力を互いに大幅に落とすなんて事になってくれたらこっちに都合が良いんだけどなぁ。」




